ほわいどんちゅーだんす⑭
「は〜い、ストップ。」
予定していた通り、決めていたステップワークを2週ほどしたところで 、なづなから終了の声が掛かった。
ワルツのステップとテンポとはいえ、短いルーティンだと本当にあっという間だ。
「うん!今のは良かったと思う!凄く綺麗だったよ!」
おぉ、褒められた。
やったね!…って、褒められたのは嬉しいけれど、今のはなぁ…いつもの考え無しのダンスじゃなくって、午前中に指摘された部分と先程のなづなの動きを参考に、見られる事を意識して、且つ凛蘭さんが踊り易い様にと気を付けながらだったのだからねぇ。
言ってしまえば綺麗に見えて当然、これで下手に見えていたのなら完全にボクの技量不足という事になるだろう。
だが少なくとも、なづなから見てもちゃんと踊れていた様なので、今のボク程度の技術でも思考と理論の元に踊ればそれなりに良く見えるってのは確認出来た訳だ。
まぁ…考えながら踊るのってなかなか疲れるのだけれどね。特にボクは二つの事を同時にやるのが苦手なので『 どう見えるか 』とか『 相手の動き易い様に 』なんて考えながら理想の動きを構築するというのは…なかなかにね、難しいんですよ。
…なづな ならば苦もなくやってのけるんだろけれど。
それで、その難しい事をしないで済む様に、一度憶えた動きを漫然とやっていた訳さ。
でも回数を重ねる毎に少しずつ少しずつアレンジが入っていっちゃって、それがやがてあの妙に鋭いステップになっていったって事なんだと思う。
つまり。
いつもリードしていたボクに付いてしまった癖が、なづなに伝播したんじゃないか…と。そう思った次第です。
…そう言ったところで なづなは『合わせちゃったのは私なんだから、別に せりが悪い訳じゃない』とか反論するんだろうけれど。
…なので、まぁ、この自虐的思考は一旦飲み込んじゃってですね、ちゃんと思い通りに…教わった通りの動きで踊れている事で良しとしよう。
欲を言えばキリが無いし、上を見すぎても高すぎて果てが無いからね、先ずは今の動きがナチュラルに出来る様になるのが目標、かな。
「ん? せり、どうかした? 」
え? あぁ、なんでもない。
ちょっと気を付けてた事部分を思い出してただけ。やっぱり溜めを入れた動きになってたんだって実感しちゃってさ、流れを止めない様に動き続けるというのをずっと意識していたから結構疲れたよ。あ〜糖分が欲しい…。
「フルーツサンドまだあるよ。食べる? 」
食べる!ちょうだい!
あ、一個で良いです。
ってか、まだ誰も来ないみたいだし一旦座ろう?
「あぁ、それもそうだね。お茶もあるし食後のまったりタイムにしようか。」
食後…ではない気がするが…まぁよかろう。
ボク達は広げたままのお弁当を再び囲み、くつろぐ事にした。
んん〜…みかんのフルーツサンド美味しい…。
で、それはそれとして。
凛蘭さん、どうだったかな?
ステップしづらかったとか、なかった?
「い、いえ、全然、凄く楽でした。」
そっか、それはよかった。
「やっぱり一歩の幅を狭くするとさ、動きに余裕が出来るよね。ステップとステップの繋がりがスムーズにいくって言うか。」
「淀みがないというか、流れるみたいですよね。あ、私がじゃなくて!なづなさん と せりさんが、ですけど!」
いやいや、そこは『凛蘭さんも』で良いと思うよ?
ふむ、確かに…さっきのに比べたらいつもの動きは加速と停止の繰り返しみたいで…良く言えば、あくまで良く言えばだが、『メリハリがあってキレが良い 動き 』な訳だ。が、ボク達のはそんなに上等なモノではなかったんだよね。
自分で言うのもなんだけれど、ノリOnlyというか勢い任せというか…『楽しい』って気分のまま調子に乗って身体を動かしていただけで、見え方や見栄えとかってのは全然考えてなかったからなぁ。
まぁ…ボク自身は自分の『 楽しい 』を優先していた訳だし? あの動画を見なければ、そのままでもよかったのだが…『 見られる 』事を意識してしまったら、ねぇ…ほら、人様に見せるモノってさ、やっぱりそれなりのレベルじゃないとマズいというか、せめて恥ずかしくないというラインみたいな…そういうのあるじゃない?
急にその辺りを意識しちゃったんだよ。
…と言っても、あの動画は使用するって方向で決定しているらしいから今更ではあるのだけれど…ま、そこは自己満足というか心の安寧の為に? 『ホントはちゃんと出来るんだぞ 』っていう言い訳をね、用意したかったんですよ。
ん? もしかしてボクって…意外とええ格好しいなのかしらん…? 注目されるのは苦手なはずなんだが…。
…
…
…うん。わかんない。
わかんないから考えない事にする。
ちなみに なづな の方は、たぶん…たぶんね? 外聞とか全く関係なく、単に下手になってるのが悔しいだけ、なんじゃないかな。




