えまーじぇんしー④
番外編です。
「…ミア… 」
んん…
「…ミアってば。」
なぁに〜…?
起きてるよ〜…?
「…ならそろそろちゃんと起きよう? 」
おはようございます…
ミア・リリエンガーテです…
とても良い朝ですね…
頬にあたる柔らかな……感触と温度…
両掌に感じられる滑らかで温かな……温かな……あったかいなぁ…
そして鼻腔をくすぐる…甘い香り…
あ〜…良い匂い……
スゥ〜〜〜〜……
スゥ〜〜〜〜……
ふはぁ〜〜〜〜〜……
「ふっ!ひひっ!くっ…くすぐったい!ちょっ…!やめっ!…んんっ!」
…え〜…やだ…だってこれ…しっとりしてるのにスベスベで…肌触りが…
「まっ…!あ、頭、動かさないでっ…!」
…ん〜〜……
スベスベ…しっとり…良い匂い…
「だっ…だめだっ…て… んっ… 」
「言ってるのに!」
ガシィ!
メリメリメリメリメリメリ!!!
あ…!だだっだだだだ!いでででで!
あ、頭!わっ…われ、割れちゃう!
じょ!状況を説明しますとっ!頭を左右からっ…!鷲掴みにィ…!さ、れて…!万力みたいにっ…メリメリってっ、されっ、て、ますっ…!いだだだだ!
覚めた!目!覚めたから!
…あ…改めまして、おはようございます。
ミア・リリエンガーテです。
先日、以前の記憶が蘇りまして、自分が『鈴代せり』の生まれ変わりである事、双子の姉エマが『鈴代なづな』の生まれ変わりである事を知りました。三度双子の姉妹として現世に生を受ける事が出来たのは本当に嬉しく思います。
こうして朝からイチャコラ出来ますし。
すンごイ痛かったけれどね!
「…もぅ…ダメって言ってるのにやめないから… 」
お、おおぉ…ボ…ボクの頭…縦長になってたりしない…? 大丈夫…?
エマはボクの頭を鷲掴みにしていた手で、ぐしぐしと撫で回して、ついでにスルリと髪に指を通す。
「…大丈夫。まぁ延びてたら次は上下で押さえてあげるよ。」
それはやめて?!今度は縦に潰れちゃうから!
…あうぅ…まさか強制的に目覚めさせられるとは思わなかったよ…もう少し優しくしてくれても良いと思うんだけれど…。
「…あのねぇ…そういう台詞はさ、どのくらいの間声をかけ続けたか聞いてからにしてくれる? 」
…どのくらい…?
「かれこれ半刻。」
半刻…いちじかん?!
え?!そんなに?!
ボクは結構目が覚めるの早い方だと思うんだけれど?!
なんで?!
あれ?!
今何時?!
「んと…少し前にひとつ目の鐘が鳴った。」
え、って事は24時間表記にするとだいたい6時半くらいって事か?!いつも5時半に起きてるのに?!
じゃあ朝の鍛錬の時間は?!
あまりの数字に一気に意識が覚醒して、思わず頭を上げる。…で…今、自分がどんな格好で、どんな体勢だったのか…初めて理解しました。
裸でした。
いや、裸で寝るのはね? 今の世界でも珍しくはないので別に良いんですよ。
今泊まっている所がいくら大きくて警護もしっかりしているとはいえ、旅の宿でこの格好は少々油断が過ぎるとは思いますが。
問題なのはその位置…ですね。
何処で横になっているか、なのです。
いえ、ベッドですよ?
ベッドではあるんです。
えぇと…
その…
端的に言うと…
エマの、上、です。
仰向けに寝ているエマに覆い被さってというか、エマを敷布団みたいにしてというか…抱き枕みたいにしてというか…そんな感じです。
お胸に顔を埋め
右手は腰に
左手は胸の膨らみの上に
両の脚はエマの脚を絡め取る様に
早い話が、べったり抱きついていました。
うん、この状態で手を動かしたり顔を動かしたり、撫で回したりすれば…そりゃあねぇ…。
ホントごめんなさい。
手と頬に残る感触と香りは少々…いや、かなり名残惜しいが仕方ない。起きよう。
身体を起こしグッと伸びをする。
…む? 若干…若干だが疲れが抜け切っていない感じだ。はて?
「ミア? 」
軽く肩のストレッチをしていると、下の方からエマがボクを呼ぶ声がしたので視線を移せば、未だ大の字で横になったままのエマの裸身が目に入った。
う〜ん…綺麗だなぁ…じゃないや、はいはい、 なぁにエマ?
「…そろそろ降りてくれないと私が起きられないんだけど。」
え?
あ。
そうでした。
ボクは今、エマの脚、太腿の上に座っている状態でした。あまりに座り心地が良いので忘れてましたね。ごめんなさい。
まだ身体に血が周りっきっていない感じがして、如何にも動きが緩慢だ。
のそのそとエマの脚の上から移動する。
「せりの頃とは逆だねぇ。」
…言われてみれば…いや言われるまでもなく確かに。
ボクが せりだった頃は、朝絡みついていたのって大体 なづなの方だったもんね。
ベットの中のエマはボクの事を抱き寄せたりはするけれど、べったり絡みついて来るって感じじゃあない。ボクの方が絡み付きに行っているのだから、以前とは真逆な訳で…。
…まぁ、元々ミアは せりよりも甘えん坊サンのケがあってですね…以前より妹味が増しているというか、年下属性が加味されてるというか…少し精神年齢が幼い気がしてはいたんだよね。
実はこうして客観視出来るようになったのも せりの記憶が表面に出てきたからで…自分の事ながら、それより前…あの朝より前のボクを振り返ってみれば、明らかに幼かった。
いやもう、思い出すとちょっと恥ずかしくなるね。
アルベルタさんにも『今日は凛々しい』なんて言われたくらいだから、周りから見たら結構違って見えてたんじゃないかと思う。
実際あれって、『前日より大人びて見える』って意味だったんじゃないかなぁ?
ん? あれ? もしかして鮮明に思い出せるせりの記憶が中学生程度で止まってるのって、ミアの精神年齢がその程度だったから…? 現在の精神年齢と以前の実年齢が同調してるとか?…いやいや、いくらなんでもそれは有り得な……くは、ない…な。
一応、うすらぼんやりとした記憶ならもう少し上の年齢まで有るのだけれど、断片的な上に霞がかっててハッキリしないんだよねぇ。あまりにも思い出せないんで『まさかと思うけれど…ボク中等部の時に死んじゃったりしたの…? 』なんて質問をエマにしたのだけれど、これは笑って否定された。
なんでそんな事を考えたかって?
…あぁ、うん。
あの日エマが言った『また会えて嬉しいよ…』って言葉がさ、まるで死に別れた相手に言ったみたいだったから…なんとなくね、そう思ったのだけれど…違うらしい。
まぁ違うならそれで良いんだ。
ボクが なづなを、エマを悲しませていないのなら、それで。
一応さ、高等部時代の逸話も少しだけ話してくれたけれど、ほんのちょっとだけだったんだよね。それ以上は思い出した時のお楽しみだと言って詳しくは教えてくれなかったんだ。ふむ…確かに以前も徐々に思い出したというか、少しずつ思い出せる事が増えていった感じだったもんな。
まぁ少なくとも今ボクが持っている記憶よりも、もう少し先までは生きてたらしいから、放っておけばそのうち思い出すのだろう。
…っと、話が変な方向に行っちゃったね。
取り敢えず身支度を整えて…少しでも良いから身体をほぐしておきたい。普段より起きるのが遅かったせいで充分とは言えないないけれど、やっておかないと身体が目覚めない。
ラジオ体操みたいなものだね。
「ねぇエマ、まだ身体動かす時間…あるよね? 」
「たっぷり…とはいかないけど、ね。」
汗をかくから、朝食前に水浴びをする時間を考えると……さっさと起きて着替え…いや正確には、服を着ないと、なのですが。
…とかいいつつ、まだベッドの上で伸びをしてるんだけど。
なんか妙にだるいんですよ。
疲れが抜けてないっていうか…昨日寝る前…う〜んと、何してたっけ…。
なんとなく意識と身体にズレが有る気がして、いつもよりちょっとだけ激しめの稽古をしたのは覚えてる…あれ? その後どうしたんだったかな?
「覚えてないの?!」
え?!
なになに?!
なんかやった?!
「いや…うん、まぁ覚えてないよね。あんなだったもんねぇ…。」
あんなってどんな?!
エマは、はぁ…と溜め息を吐いてベッドを降り、綺麗に畳まれてソファーの上に置かれている下着を身につけ始める。
「ちょっとミアにしては珍しい状態だったから、面白かったと言えば面白かったんだけどさ。」




