すいんぐばい⑧
「うぅ…なによぉ、みんな上手すぎない!? 私だけストライク取れてないじゃん!誘った私がドベってどゆこと!? え? なに? もしかしてみんなプロで私だけアマチュアなの?!」
…いきなり何を言い出すんだこの娘は。
そんな訳ないでしょうが、全員アマチュアだよ!
ていうかストライク取ったくらいでプロになれるんだったら、このボウリング場の中の人全員プロ資格もっててもおかしくないんだけれど?!
いや、そもそも小梅さんは“得意だ”って言ってたよね?!
「いや、それは聞いたけどさ、まさか なづな達並みに上手いなんて思わないじゃん!? だって今の見たでしょ?!せり みたいな投球で なづなみたいな曲がり方したよ?!あんなんプロじゃん!」
飛躍してる!
ボクたち程度なら練習すれば如何にでもなるんだって!
あ、いや小梅さんはホントに上手いんだけれどね。あれは相当にやっている人の動きだもん。体幹もしっかりしていそうだし、いやぁお手本みたいなフォームだったなぁ。
「あ~よかった。ストライク取れて。」
席に戻ってきた小梅さんの一言目がそれだったのだけれど…ん? ストライク取れてよかった? 自信あったんじゃないの?
「やっぱり投げるの久しぶりだったんだね。」
え?!そうなの?!
その割には堂々と投げていた様だけれど…
「うん、最後にボウリング場に行ったのお正月だったから…4ヶ月ぶりかな。なまってたらどうしようかと思っちゃった。」
お正月? 国道沿いのボウリング場は去年の8月いっぱいで閉店しちゃってるから、どこか別の所に行ったのか? わざわざ遠出するなんて余程好きなんだなぁ…いや、そんなに好きなら4ヶ月も空けないか? ん? あれ? あ、遠出の交通費とお小遣いの兼ね合いで行けなかったとか?
「前は、お正月に親戚の家に遊びに行った時にね、家族で。」
なるほど。
そっか、そういえばこの辺りにはもうボウリング場ってないんだっけ…。
最寄りは…どこだっけ? 隣の市にはあったっけ? 二つ隣の市にはここと同じ様なショッピングモールの中に、あった、ような…?
いずれにせよ、車でもなければ行くのは困難だ。
電車やバスを乗り継げば行けなくもないけれど、交通費がなぁ…二つ隣の市を往復すると1play分をゆうに超えちゃう…いや2play分近い金額になっちゃいそうだもんなぁ…。
そうそう頻繁には行けないか…。
「よっし!2フレーム目!いこうか!」
お、そうだね。ありがと桂ちゃん。
声をかけてくれなかったら、また話し込んじゃうところだったよ。
まぁお話するのは変わらないんだけれど、話に夢中になってしまったら時間がね。playの合間合間に話す方向で、ね。
「あーーーーー!あと一本が倒せないぃ!」
桂ちゃんが1投目を投げ終えて、頭を抱えながらボールラックまで戻って来る。
あぁ…、また一本だけ残っちゃったねぇ。
今度はど真ん中の5番ピンだけが残ってらっしゃる。
「ここはオイルが強いレーンだからねぇ。威力が足りなくて当たり方が悪いとボールがピンに弾かれちゃうんだよ。今のは真っ直ぐに当たらなかったから滑っちゃったんだね。」
「桂さんは真っ直ぐ投げられるんだから、真っ直ぐ真ん中に転がせばスペア取れるわよ。」
なんて的確な指摘アンド、アドバイス。
ボクの出る幕なしですね。
あとひとつ補足するのならばパワー不足かな。
まぁ…パワーが勝ると、今度はボクみたいに曲がらないって事になるのだけれど、ストレートボールオンリーの桂ちゃんなら真っ直ぐに力を乗せれば良いのだから問題ないはず。




