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あふたーすくーるあくてぃびてぃ㉝

疾る。

まるで疾風(はやて)の様に。


スカートのプリーツは乱さない様に、白いラインの入ったセーラーカラーは翻えらせない様に…なんて悠長な事を言っている余裕はありません。悪しからず。

いやもちろん普段はしませんよ?

今だけです。今だけ。

なので。

もしご覧になってもお小言は堪忍して下さいませお姉さま方!

そして下級生の皆さん!今のボクをお手本にしてはなりませんよ?!真似しちゃダメですよ? ダメですからね?


眼の端にチラチラと人が映る度に、そんな事を思いながら昇降口へ飛び込み廊下を走り抜け階段を駆け上がる。


もちろんバッタリと行き会う形になったらちゃんと歩きますよ? それはそうでしょう、淑女たる者がスカートをバッサバッサさせて走ってる姿を人前に晒すなど、あってはなりませんからね。


はい、すいません。建前です。

正直、見咎められてお小言をいただく時間が惜しいからですね。注意を受けていたら、結局ずっと歩いていた方が早かったってオチになりかねないもの。けれど気は急いているので、ゆったりと歩いて行く気には…とてもじゃないけれどなれない。早足で歩けばって? そういう時に限って何故か声をかけられる頻度が高いんだよぅ…。

結果、ストップ&ゴー、スロウ&ファースト、ランニング&ウォーキングになるんだよね。


そうして2階から3階へと駆け昇っている最中、上から降りて来る足音と話し声が聞こえた。

3階は2年生、4階は1年生の教室があって、普通に考えれば降りてくるのは同級生か下級生。同級生であれば走っているところを見られても『ちょっと急いでるんだ』で済むけれど、下級生にはね…お手本にならないといけないからなぁ…流石にこのまま走り抜けるのは、お姉さま的にNGだよねぇ。

踊り場の手前でスピードダウンして、はやる気持ちを落ち着けながら

スカートの裾やセーラーカラーが乱れていないかをチェックする。ついでに髪の毛も手櫛でひと撫で。

…うん、大丈夫そう。


踊り場を回ると、上から降りて来る子達が目に入る。

上履きの色は…やっぱり1年生だった!

セーフ!よく足音に気付いたボク!


カチリ、と自分の中の“お姉さまスイッチ”を入れ、憧れのお姉様の様に、お手本となるべき上級生の様に、ゆっくりと優雅に振る舞う。そう。ボクが美しいと思ったお姉様方の様に。

え? 中身が伴ってない、って?

そんな事は最初(はな)から理解(わか)ってますぅ。

形から入って中身を磨くんですぅ。

模倣は成長の一歩目なんですぅ。

ふーんだ。


ボクが上ってくるのに気づいた1年生の子達が、スッと壁際に避けてお辞儀をする。


「お姉さま、ごきげんよう。」


…あら凄い!

1年生の()()()()だと礼儀作法の授業とか無かったはずなのだけれど、ちゃんと出来てるじゃないですか!? ついこのあいだ、ほんの数週間前まで初等部だった子達なのに随分としっかりした挨拶だこと。

これは…ボクもちゃんとお姉様らしく返さねばいけないな。


「ごきげんよう。二人とも挨拶がしっかりしていて素晴らしいね。」


にこりと微笑んで少し褒めてあげると、二人はお祈りをする様に両手を組んで、ふわりと頬を赤らめた。

ふふふ、下級生は可愛いなぁ。

…といっても()()()しか違わないのだけれど。


とはいえ一学年違うと雲泥の差ではある。

三年生のお姉さま方はボク達と比べるとグッと大人っぽいもの。やはり中身の成長というのは外側にも滲み出るのだと思う。まぁ、ボクはまだ滲み出る程の成長を成しているとは言い難いので、()()()()()振舞う事しか出来ないのだけれど、ね。

それでも下級生を“可愛い”と思える程度には…成長、してるのかなぁ…

してたらいいなぁ…。

でも…うん、今のは我ながら少しお姉さまっぽかったと思うよ?


「あ、あの…!」


「はい、なぁに? 」


…話かかけられちゃった!

『ごきげんよう』の後の一言が余分だったか?!微妙に急いでいる時に限って、こんな風に足止めを喰らうのは…()()()()だけれど、まさか振り切って立ち去る訳にもいかないし…。


「ええと、あの… 」


む。これはあれか? 思わず声をかけちゃったけれど何を話すか決めていなかった、って感じの。

…って事は特に用事ってわけじゃないんだから立ち去ってしまっても問題は…いや!駄目だよね?!それはダメだ。たぶんこの子達は、なけなしの勇気を振り絞ってボクに話しかけたはず。中等部になると、それまでと違って明確な先輩後輩という関係性が存在する事になるわけで、言い方は良くないかもだけれど上下関係ができるんだよね。上級生…つまり“お姉さま”は、下級生にとって優しく指導してくれる存在であると同時に、雷を落とすこわ~い存在でもある訳だ。

そんな相手がどんなお姉さまであるか知りもしない状態で、面識のない上級生に話しかけるのがどれほど恐ろしいか…。

ボクにも覚えがあるもの。

なので、ここは彼女が振り絞った勇気に報いてあげようじゃありませんか。


「質問かな? いいよ何でも聞いて? 」


「は、はい!あ、ありがとうございます…!」


…『ありがとうございます』の後が続かない…!?

なんかモジモジしてる!

え、なになに?! どうしたの?!

いやいや急かすな急かすな。

お姉さまたる者、可愛い後輩にプレッシャーを与える様な事をしてはイカンだろう。うむ。


「大丈夫。落ち着いて、ゆっくりでいいからね。」


…あれ? つい最近同じセリフを言ったような…?

デジャヴュ?


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