あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑱
…
……
………
あれ?
反応が返って来ないな?
お辞儀の態勢から身体を起こし、扉の外に立っている人達を見れば高等部の制服を着用している。当然ながら高等部のお姉さま方だという事だね。で、上履きのカラーで三年生だとわかる。
っていうかこの人達、執行部のお姉さま方じゃないか?!
よくよく見れば…いや、よく見なくても先日生徒会室でお茶した時にいらっしゃったお二人だ。間違いない。
え、っと…あ!お名前うかがってなかった!
しまった…調べておけばよかった…!
抜かった…!
「ほら…オキクがぐずぐずしてるから気付かれちゃったじゃない。」
「私?!私じゃないでしょ、マユミがボソボソ喋ってるからよ。」
おぉ?!今、名前…!
えっと、前下がりボブカットの方が『マユミお姉さま』で、くせっ毛ショートの方が…オキクって言ってたね…『オキクお姉さま』?
菊子とか菊代とか…それとも、そのまま“菊”なのだろうか?マユミお姉さまは『真由美』か『麻由美』?はたまた『真弓』か。もしかしたら『檀』かも…うん、最後のはないだろうなぁ。
あ、いや、それは後にしよう。
「あの、お姉さま方、お入りになりませんか?」
廊下で立ち話というのもなんですし、せっかくですからお茶でもご一緒に如何でしょうか。と、扉を大きく開けて中に誘う。
なんかさ本来ならボクが誘うっていうのは、ちょっと違う気がするよねぇ。
だってお姉さま方はここの住人で、ボクはまだ外様なんだから。
まぁ来週からはボク達もここの住人になる訳なのだけれど。
今はまだ、って事ね。
お姉さま方はソファーに座った後も何やら言い合いをしている様だ。なんて言ってるのかは小声なので上手く聞き取れないけれど…なんかこう、気付かれちゃったとか見つかっちゃったとか?そんな事を言っている様な、いない様な…?
んん…?扉の外で中の様子を窺っていたのかな?
扉が開いた様子は無かったから、聞き耳を立てていた…と、そんな感じなのだろうか? だとしてもボク達の会話が漏れ聞こえていたなんて事は無いはずだ。聞こえていても問題ない会話しかしていないから全然平気。
…問題ない会話しかしてなかったよね?
あれ…? どうだったっけ…? ま、まあいいか。うん、大丈夫。たぶん。
それよりも、だ。蓬お姉さまにお二人が来ている事を伝えて、お茶の追加もしないと。それに、少々恥ずかしいけれど“オキク”お姉さまのお名前を確認しておかないといけない。流石に“オキク”という名前ではないだろうからねぇ。
「あら?話し声がすると思ったら、貴女達が来てたのね。」
うわ?!ビックリした!
声をかけてきたのは、いつのまにか奥の扉から顔を覗かせていた蓬お姉さまだ。確かに普通に会話していたのだから、気付かない方がおかしいのだけれど…
「…これよ…自分で早く来いって言っといて『来てたのね』も無いもんだわ。」
「まったく…送ったメールの内容も覚えてないんじゃないの、この人?」
やれやれといった感じで肩を竦め、大きく溜息を吐いてソファーに身を沈めている。お互いの言葉遣いや、こうした砕けた態度を見ると気の置けない仲って雰囲気でね、いいなぁ素敵だなぁって。ちょっと思った。
あ、いや、ボク達にそういう友人がいないって意味じゃなくってね?
「…失礼ね。そのくらい覚えてるわよ。」
「それは良かった。で? なにがあったの?」
「あ~…それは… 」
少し言い淀んだ後、蓬お姉さまがボク達を見て
「せりちゃん、お茶の準備…任せちゃっていいかしら? 二人分追加でお願いできる?」
「はい、すぐにお持ちします。」
「ゆっくりで良いわよ。」
勿論、問われる迄もなく当然やらせていただきます。
お任せくださいませ。
奥の扉をぬけて生徒会室の流し台に居る なづなに並ぶ。
「どなたがいらっしゃったの?」
「高等部生徒会役員のお姉さま方だよ。えっと、マユミお姉さまと…オキク…お姉さま…だって。」
「…オキク…?愛称だよね?」
「…たぶん。」
「聞かなかったんだ?」
「…蓬お姉さまに聞くつもりだったんだけれど…タイミングを逸しました。」
「あ、そうなんだ。じゃ、あとでこっそり…かな。」
そうだねぇ、当面は『お姉さま』で押し通そう。うん。そうしよう。
「なづなは、お姉さま方にご挨拶しないの?ちょうど良いタイミングだと思うんだけれど?」
「蓬お姉さまがね、もうちょっと待っててって。ちょっとしたら呼ぶからそれまで待機で、って言われてる。」
隠れてろって事?
ふむ?
なんか話し合う事でもあるのか?まだ外に漏らせない事で…?
まぁ…執行部のメンバーだもんね、そういう事もあるか。
じゃあ、お茶はどうしよう?
用意してボクが一人で持って行くのが正しい…かな?
幸いボク達が使っていたカップは下げてテーブルも拭いてあるし、お茶だけお出しして、すぐに引っ込んで来ればお邪魔にはならないかな?
それでいくか。
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