あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑮
キョロキョロと周囲を伺って、改めてなづなに目をやる。もう顔が『早く早く』って言ってるよ。わかってるってば。
でも、ちょっとだけだよ?
蓬お姉さまが奥に行ってからそこそこ経ってるんだからね?!新たにお湯を沸かしてるにしても、それ程かかるものじゃない。タイムリミットは直ぐだ。
再び奥の扉を見て、蓬お姉さまが見えない場所に居る事を確認し、もう一度部屋の中を見回してみる。うん誰もいない。
…誰も居ない事は理解っていても、つい周りを見渡してしまうのは…誰かに見られるのが恥ずかしいから?…今まで散々やらかしてるのに?いや、やらかしてるから、か?
他の理由だとすれば、場所…場所かな?
生徒会室という場所で膝枕とか、そういうのが秘め事っぽくて…何かイケナイ事をしてる様な感覚になっているとか…?
…うん、まぁ、理由はどうでもいいや…
取り敢えず、蓬お姉さまの目に触れる前に なづなが満足すれば良いんだから。
「少しの間だけね?」
「わかってるよぅ。」
ホントかなぁ…。
ほんの少し座る位置を離してソファーに寝そべる様に体を横たえ、なづなの太腿に頭を乗せる。うん、相変わらずの弾力と反発。素晴らしい。
なづなは といえば、早速髪を指に通し上から毛先まで、スゥ〜っと梳いてゆく。で、毛先をくるくると巻いては、ビヨンって戻るのを楽しんでいる。
いや確かにね?ボクの髪は、毛先にほんの少しだけ緩いウェーブがかかっているけれども、そんなくるくるしたら縦ロールになっちゃわない?ならない?あ、そう?え?なったらなったで楽しいから大丈夫?ふ〜ん。
うん、まぁ楽しいんなら良いんだけど。
いや、よくないよ?!
縦ロールはダメです!
似合わないから、絶対似合わないから!
「そうかなぁ、良いと思うけどなぁ。」
そんな事言って、自分では絶対やらないじゃん。
今の髪の長さだと難しいだろうけれど、ウィッグとかエクステとかって手もあるんだし…いや駄目だ。万が一似合ってしまったらボクもやる流れになっちゃう。それは困る。
縦ロールだけは避けたい。
「むぅ…なんでそんなに嫌がるかな。」
「…こだわりというヤツなので。譲れないのです。」
「こだわりかぁ。それじゃあ仕方ないなぁ。」
自身にも幾つかの“こだわり”があるからか、すんなりと受け入れてくれた。
よかった…。
それはそうと。
ええと、そろそろ終わりにしませんか?撫でるの。
蓬お姉さま方だって、もうそろそろ終わっちゃうと思うんだよね?今のこの態勢で出迎えるのって、どうなの?まずくない?無作法だよね?不躾極まりないよね?
「…そうなんだけど…もうちょっとだけ。」
もうちょっと、って。
ホントもう、すぐに蓬お姉さま来ちゃうと思うよ?
「…ん、名残惜しいけど、続きは帰ってか… 」
言いかけて、ボクの髪を撫でていた なづなの手が一瞬止まった。
ん?どうした?なんで止ま……
…撫でる手が、止まった…?
手触りを堪能している最中に、その行動が中断される…
あれ…?なんかこういうの覚えがあるぞ…?
つい最近も……あった気が、する?
え、いつだっけ?
ホントについ最近こんな事が…!
え~と、えぇ~とぉ…
…光さんが転びかけた時…は違うな。椿さんを抱き留めたとき…じゃないし、椿さんが失神した時…は、そもそも動きが止まったなんて事はなかったはず。
前の二回はもともと衆人環視の中だったのだから、二人きりではないのでシチュエーションそのものが違う。
……あ!
あれだ!
進級式前の! お手伝いに来た日だ!
なづなと廊下で踊ってて、なづなの肩越しにこちらを見ている子達に気づいた時! 気付いた瞬間、身体が硬直したような感覚!
あれと同じ現象が、今まさに、なづなに起こったのだとしたら!
それはつまり、
見られていた、
いや正確に言えば見られていた事に なづなが気付いた、という事では…っ!?
誰に!?
決まってる
ボク達以外に部屋にいるのは蓬お姉さまだけだ。
そりゃそうだ。さっきからボク自身が言っていたじゃないか『すぐに戻って来ちゃう』って。あああ…、だからやめよう…とは言わなかったな?ボクも撫でて貰うのには反対しなかったんだから、ボクの所為でもあるのか?!
いや、そんな事じゃなくって!
廊下の時と決定的に違うのは目撃者が知っている人物だという事!
あの時みたいに、その場を離れてしまえば良いという訳にはいかない状況なんだ。
どどどどうしよう?そうだ、なづな…なづなは?動きが止まってからまだ数秒しか経っていないけれども、あまりに反応が薄過ぎやしませんかね? いつも通りであればボクを撥ね起こして自身も座っている位置をずらす…くらいの事はしそうなものだけれど。
あ、ボクが自分で起きればいいんじゃないか?
…っていうか、なんで悠長に寝っ転がってるんだボクは?!
と、取り敢えず起きなきゃ。この態勢だと周囲の状況も確認出来ないもん。
けれど、今さら慌てて起き上がってもみっともないだけだからね。ゆっくりと優雅に、淑女らしく。
…ソファーに寝転がってる時点で淑女としてどうなのって思わなくもないけれど、それはまぁ、置いといて。
自分で言うのもなんだけれど、今の起き上がり方は優雅だったと思う。
ふわりと、緩やかに。どうかな?お嬢様っぽかったんじゃないかな。
惜しむらくは“誰も見ていなかった”事だ。
悲しい。
なづなは見てたんじゃないかって?
いやぁ…それが起き上がって顔をみたらさぁ、固まってんの。笑顔で。
そういえば、こういう…なんというか、その、いちゃいちゃ? してるところを誰かに見られるのって…まぁその、割とよくあるのだけれど…大体にして見られている事に気付くのはボクなんだよね。
なづなが気付くことは稀だ。
ボクが先に気付いて、恥ずかしいから『この場から退散しよう』と促し、さっさと移動しちゃう。多くの場合目撃されていた事は言わないので怪訝な顔をされるんだけれど。
それなのに今回に限って気づいちゃった、と。
っていうか、この固まり方だとバッチリ目が会っちゃったとかかなぁ?
う~ん…それだとボクでもフリーズしそうだもんなぁ。
仕方ないといえば仕方ない気がする。なにせ相手はこれからお世話になろうっていうお姉さまだ。
固まったままの なづなをひと撫でして、蓬お姉さまが居るであろう奥の扉に目を向けると…あれ? いない、な? もしかして気を使って…いや気不味くて扉の陰に引っ込んじゃったのではなかろうか? うう、だとしたらごめんなさい蓬お姉さま、変な気を使わせてしまいました。
…さて、それはそれとして。どうしたものか…取り敢えず なづなを再起動させるのが先かな? …む。そのあとの宥め方も考えないといけないか? まぁいいか。なんとかなるなる。
「なづな。なづな、大丈夫?」
両手で頬を包む様にしてこちらを向かせ、ムニムニと頬をマッサージする。マッサージというより揉みしだいていると言った方がいいかもしれない。
「ね、もう誰も見てないから。戻って来て大丈夫だよ?」
ムニムニムニムニムニムニ……
おお…柔らかい。お餅みたいだ。
う〜ん良い手触りと感触。
ムニムニムニムニムニムニ……
「……ひゃ、ひゃにふうの、ひゃ、ひゃめへ… !」
お、戻って来た。
加筆予定です。
P.M19:30
加筆しましたが、本日もう一度加筆する予定です。




