あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑪
前話、加筆修正済み
「あの、蓬お姉さま。」
「なぁに?せりちゃん。あ、せりちゃんって呼んで良いかしら?」
「それは勿論です。それで…え、と、少々お尋ねしたいのですが… 」
「あ、ごめんなさい。どうぞ。」
「今日は、他の皆様はお越しにならないのでしょうか?」
今回は なづなの紹介という目的で来ているのだから、どなたか一人にでも紹介出来ていれば一応の目標は達成した事にはなるのだろうけれど…いやいやいやいや。折角なづなが あれだけの緊張を抑え込んで此処まで足を運んだというのに、紹介出来たのが蓬お姉さまお一人というのは少々どころか、かなり勿体ない。なづな自身も納得すまい。
「あ〜…どうかしら…セっちゃん…セリナは来るはずだけど、他の子達はちょっとわからないわね。」
高等部のお姉さま方は来ないかもしかれないのか…ふむ、考え様によっては好都合かもしれない。顔を合わせる人数が少なければ精神的負荷が少ないはずだから、なづなにとっては良い状況なのではなかろうか?
「なぁに?セっちゃんに会いに来たの?」
「いえ…来週から妹共々、生徒会執行部にお世話になりますのでご挨拶にと。」
「あ、正所属になったのね?」
「はい。書類も提出しましたので、週明けから正式に所属となるとの事でした。」
「まあそうなの?それはみんな喜ぶわね。」
ぽわぽわ〜って蓬お姉さまが笑うと、やっぱり周囲が明るくなった様に感じるんだよね。これ、何度経験しても不思議だ。
そんな事を考えていると、蓬お姉さまがポンと手を打って
「ねぇ、それほどかからずにセっちゃんも来ると思うけど…それ迄お茶でも飲みながらお話しましょう?お茶受けはクッキーくらいしかないのだけど…どう?」
と、プチお茶会を提案した。
それはもちろんお受けしますとも。
寧ろ願ったり叶ったりというモノだ。
『よろこんで』とボク達が答えると、蓬お姉さまはパタパタと流し向かい、ティーセットの準備を始める。
ここでボクは『お手伝いします』と言いかけて、ちょっと迷ってしまった。それというのも、前回お邪魔した時に何も考えずに手を出した所為で、結果、セリナ様が叱られるという状況を創り出してしまったから。
あの時の理由が『お客様に手伝わせた』だったので、もしかしたら現時点で正所属ではないボクが手を出すのは間違いなのではなかろうか…などという考えが頭を過ぎったわけ。
それで一瞬躊躇してしまったんだけど…
「お手伝いします。」
ボクが躊躇してしまったその一瞬に、なづなが手伝いを申し出たわけさ。
「あら、ありがとう。じゃあ、そちらの棚に紅茶の缶があるから取ってくださる?」
「はい。」
うああ…!出遅れた…!
少し遅れたけれどボクも なづなに付いてスプーンやソーサーなんかの準備を手伝う。
まぁね、よくよく考えると…いや、考えなくたって今は蓬お姉さまお一人なわけで、お手伝いせずに只々眺めているだけの方が余程失礼だよね。うぅ、ボクとした事が…反省。
お茶の準備もあっという間に済んでしまい、蓬お姉さまは既にお寛ぎモードだ。
今回は蓬お姉さまの薦めで、奥の部屋からではなく手前の応接間でお茶をする事になったんだ。ボクも なづなも好みの調度品が満載の部屋なので、有り難くお受けしました。しましたが…。
応接間に移動してソファーに掛かっていた白布を除いたらですね、現れたのが、本革の、かなりの年代物の、ヴィンテージどころかアンティークの域に達していそうな、それはそれはお高そうなソファーが出てきたんですよ。
1人掛けが二脚、3人掛けが二脚、2人掛けが一脚。
見た目も少し珍しい形で、肘掛けの先、手のひらが当たる部分だけが滑らかな木製の握り、と言うのだろうか?が、付いているんだ。あまり見た事のない造りだね。
おそらく揃いで造られた一点物だと思うけれど、こんな物まで有るとは…
いやもう、正直なところ『これ、普段使いして良いのだろうか』って思う程でさ…下手したら博物館レベルの家具なんだけれど、お姉さま方は普段から使っていらっしゃる様で、あまり気にしている様子ではなかったかな。
まぁ…勧められたので腰掛けはしたものの、なんというか…ちょっと緊張したというか、完全に寛ぐには至らなかったねぇ…。
それはそれとして。
折角こうしてお話出来るのだからと、この先ボク達が関わる事になる執行部の仕事がどの様なモノなのか聞いてみたんだけれど…
返って来た答えが…『各委員会やクラス等から上がって来た書類に目を通して、良ければ承認、駄目なら却下の判子を押すだけよ。簡単でしょう?』…だからね…。
どこが簡単なのか小一時間問い詰めたいです。
…ンな事しないけれど。
で、ボク達からの質問もひと段落した頃にね、なんか蓬お姉さまが時折ボク達をじィ〜っと見ては『ふぅ…』とか『はぁ…』とか息を吐いているのに気付いたんだ。
相変わらず微笑んではいるのだけれど、頬に手を当てて少し熱そうな感じでさ。
暖房が入っている訳でも無いし、別段室温が高いとも思わないのだけれど…ボクには適温だというだけで、蓬お姉さまには暑く感じられるのかもしれない。
「あの、蓬お姉さま?少し換気致しましょうか?」
どうやら、なづなも同じ事を考えていたみたいだね。
先んじて提案を投げかけている。
「え?」
「え?あの、少し暑そうにしてらっしゃったので… 」
…あら?
暑いとか熱っぽいとかではない…のか?
「そんな風に見えたかしら…?」
確かに調子が悪いという訳ではなさそうではあるが…
気の回しすぎだっただろうか?
「あついのは本当だけど、特に体調が悪いとかではないから大丈夫よ。心配してくれてありがとう。」
ほぅ…と息を吐いて、蓬お姉さまは言葉を続けてる。
「あついのは、貴女たちが原因…貴女たちの所為と言った方が的確かしらね?」
…はい?




