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あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑨

「せりも、まだ不安定なんだろうねぇ。」


うん、そうなのかもしれない…。

っていうか、そうなんだろうね。

ついこの前にも以前の夢を見た所為で起きしなに なづなに縋り付いて…なんて事したばっかりだもん、お世辞にも安定しているとは言えないもん。思春期によくある『身体の急激な成長に起因する不安』だろうって、すずな姉ちゃんは言っていたけれど…夢見が悪かったのもその所為なのかなぁ?

あ、もしかして、ボクが一番色濃く記憶している以前(ぜんせ)の年齢に近づいたから…なんて可能性もあったりするんじゃ…いやぁ、これは流石に漫画やラノベに影響され過ぎか。満さんや椿さんあたりは面白がりそうな設定かもだけれど。


兎に角。こんな風に突発的なネガティブ思考に捉われるのは正直ごめん被りたいので、さっさと安定してほしいとは思うのだけれど…そうそう簡単にはいかないんだろうっていうのは充分に理解してる。

けれど、さっきまで元気が無かった なづなが、ボクを慰めようとしてくれてるんだから…ちょっと無理してでも立て直さないと。


「だからあれは…何度も言うけど、元気がなかったとかしょんぼりしてたんじゃなくホントに緊張してただけなんだって…と言っても納得出来ないんだもんねぇ。」


さて、なんと言えば良いのやら、とボクの髪を撫でながら苦笑混じりに呟く。


とてもありがたい気遣いではあるけれど、こればっかりはボク自身がどうにかするより他に解決法なんか無いと思う。

どちらかと言うとボクは一晩寝ればスッキリと気分が変わる方なので、明日の朝にはこのモヤッとした感じも薄れていると思うのだけれど…今すぐに出来る対処法ではないからなぁ…。

なづなが言ってるんだから信じよう…って思ってはいても…あぁまた思考がグルグルしちゃってる。


「よし。いったん全部忘れよう!」


…はぃ?

全部忘れるって何?

どういう事?


「私はアウェーだって意識を忘れる。せりは私をエスコートする事だけを考える。泣き言は帰ってから。」


…簡単に言うなぁ…。

エスコートする事だけ、かぁ。

それが出来たなら今こんなにグダグダな感じにはなっていないと思うのだけれど…具体的にはどうすれば良いのかな?


「そこは気合いで。」


気合いって。

全然具体的じゃないよね?

っていうか、なづな随分と落ち着いてない?

さっきまであんなにショボンとしてたのに。


「ああ、それならアレだよ。『自分より焦っている人が居ると、かえって冷静になるの法則』ってやつ。」


すずな姉ちゃんが言ってたでしょ、だって。

そういえば言ってたな。

なづな曰く、ボクが落ち込んだ事で少しだけ冷静になれたので、ちょっとした小技を使って無理矢理平常心を引っ張ってきたのだとか。あくまで一時的な対処法なので、後で反動があったりするらしいけれど。

で、その方法というのが


「う〜ん…私の場合は恥ずかしい〜緊張する〜って考えてるのを一旦横に置いといて、お姉さま方にお仕事を教わりに行く、どんな方がいらっしゃるのかな?っていう思考を走らせてる。あ、あと妹を心配する姉の思考?」


だそうだ。

頭を指でトントンと叩きながら、事も無げに言っているけれど…それ、普通に出来る方がおかしいと思うよ?いやわかってる。並列思考(パラレル・シンク)って技術だっていうんでしょ?ボクには出来なかったやつね。こんな風に()()()()()()()なんていったい何処で覚えたのやら…まだ『いったん全部忘れる』方が現実的で容易な気がするよ。


「せりは“いったん全部忘れる”方が楽なんじゃない?」


楽…か、どうかは分からないけれど、出来るとしたらそっちだろうね。

問題は()()()()()()()()かって事…つまりは方法だ。


「…他の事で頭をいっぱいにすれば…いいんじゃない、かな?」


ほ…他の事って言ったって…なづなの事を打ち消すくらい強く思える事なんて…あるかなぁ…?


「私の事だけ考えて。」


え?いやだから、それだとネガティブな考えが浮かんできちゃうから…


「さっき言ったでしょ。()()()()()()()()()、それだけ考えて。それ以外は一切考えない。」


エスコートする事だけ…。

エスコート。

『付き添い』『護衛』を意味する言葉。

今、生徒会室に向かっているのは、なづなを執行部のお姉様方に紹介するため。ボクはその付添人…のつもりだったのだけれど…そうか“護衛”か。そのつもりで気を張れば良いんだ…なるほど、これは考えが及んでいなかったな。

つまりロールプレイで成り切ってしまえば良いんだ。自己暗示みたいなものだね。うん、出来る気がする。


すぅ〜…はぁ〜……ふぅ〜…

大きく深呼吸をして、頭の中をひとつの考えで満たしていく。


ボクは、これから、なづなをエスコートする。

全ての危険から、悪意から、なづなを守って執行部のお姉様方の所まで連れてゆく。ボクなら出来る。いや、ボクにしか出来ない。


…まぁ、そんな危険も悪意もあるわきゃないんだけれど…


じゃない!

そういうロールプレイなんだから、成り切れ。

強い自分をイメージしろ。

例えば…ヤな奴だけれど、以前(ぜんせ)の自分。ヤな奴だけれど。

強さだけなら折り紙付きだったからね。

何があっても護れると思う。


「…どう?いけそう?」


…うん。大丈夫そうだ。

ロールプレイの自己暗示でも、きっちり嵌ればなんとかなりそう…な気がする。


「よし。じゃあ、行こうか。」


ひょいと身体を離して、上の階を指差す。

あ、いけない半分忘れてた。危ない危ない。そうだよ、そもそもの目的を忘れてどうする。






複数の思考を同時に走らせるのは、出来る人には容易に出来るのだそうです。将棋指しの人には結構多いと聞きます。

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