あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑦
差し出した手に、なづなの手が重なる。
「ちゃんとエスコートしてよね?」
もちろん。そこは任せてくれて大丈夫。
この先は なづなにとっては未知の世界なんだもん、しっかりと御案内致しますとも。
なづなの手を引いて職員室前の階段を登り、上階へと歩を進める。何時もみたいにただ手を繋ぐのではなく、文字通り淑女をエスコートする様に。
並んでではなく、ボクが先導する形で。
いつもとは少し違うこの立ち位置、新鮮だ。
何故こんな風にしてるかって?
いや、まぁ…ちょっとご機嫌とっておこうと思っただけなのだけれど…。さっきの『厳しい姉』発言、真意はどうあれ、言ったのは事実であるわけで、その言葉に なづなが引っ掛かっかりを覚えたのならば、それはボクの所為なんだから。別に怒った訳ではない様だし、その事でネチネチと絡んで来たりはしないだろうけれど、一応ね。うん、一応。
勿論、しっかりと話して蟠りのない様にするのが一番良いに決まってるので話はするつもりだけれど…それはお風呂とかベッドの中でゆっくり、かな。
…大半がボクの言い訳で、最後になづなが『わかったわかった、もう良いよぅ。』って苦笑いして終わる…って展開が容易に想像出来てしまうのだけれど…ね。
ボクが先導している所為かな、なづなも普段と違ってしおらしい…っていうか、口数が少ない。
あれ…もしかして思ってた以上に『厳しい姉』を気にしているのだろうか?あんまり他人の評価とか気にしない方なはずなのだけれど。それもこんな些細な事…で…
些細な、事…?…いや待てよ…些細な事じゃなかったら…他人じゃなくて“ボクが言った”のがショックなんだとしたら…?
なづなに悲しい思いをさせてしまったのだとしたら。
それは…ダメだ。
それはマズい。
ボクは二度と なづなを泣かす様な事はしない、あの時そう誓った。誓ったはずなのに。
ボクが放ったひと言で幼いなづなを傷つけてしまった、あの時のなづなの姿が…脳裏に浮かぶ。ワンピースの裾を握り締め、口を真一文字に結んで、大粒の涙をポロポロと零す なづなの姿が。
浮かんだ瞬間に胸の真ん中がキュッと痛くなる。正直、思い出すのも辛い。
「あの、なづな…?」
「うん?なに?」
「…ごめんなさい…。」
「え?なんで?どうしたの?」
…だよね。そうだよ突然謝られたって何の事かわかんないもん、反応に困るよね。
けれど、確信がある訳じゃなくても“もしかしたら”と思ってしまったから…。
ちゃんと言っておかないとボクの気が済まない。
自己満足なのは理解ってはいるけれど…それでも。
「ボク…なづなを傷つけちゃったかなって…思って… 」
「…せりが、私を?」
「うん…… 」
「なんで、そう思ったの?」
「…ボクが、なづなを悪く言った様に、聞こえた…かな、って… 」
そんなつもりで言ったわけじゃない。当然だ。けれど、聞く側が同じ調子で受け取ってくれるとは限らないじゃないか。アドバイスのつもりで言っても嫌味と取られてしまう事だって、ちょっとした軽口でも心を深く抉ってしまう事だってある。そんな事は百も承知…わかり過ぎる程、理解っていたはずなのに。
「そっか。」
なづなは短くそう言うと、立ち止まり視線を外してしまったボクからそっと手を離して、トントンと2段ほど階段を登って、背を向けたまま
「せりは優しいねぇ。」
…本当に優しかったら人を傷つけるかもしれない言葉なんて…言わないでしょ…
「どうしてその考えに至ったのか分からないけど…せりは、私が『せり自身に貶された』と思ったんじゃないかって…考えちゃった訳だ。」
微熱といえど、こうも続くと考えが纏まらないものですね…
後で読み返したら文章がとっ散らかっていたり、整合性が取れてなかったりしそうで恐ろしいです…




