えぴそーどおぶおーでぃなりー⑩
「…それでね、せりさん。」
はい?
「これ、どう思う?」
セリナ様の隣に座っているお姉さまが、頬杖をつきながらという砕けた態度で親指でセリナ様を示してボクに問うた。
どう、と言われても…。
真っ正直に答えたら微妙に悪口っぽくなっちゃうし、お世辞で固めても嘘吐いてるみたいで気持ち悪いし…むゥ。ちょっとオブラートに包んだ方が良いかな?いやでも、それを求められてはいないってのは理解るしなぁ。
「遠慮しないで。忌憚のない意見が欲しいのよ。」
忌憚のない意見ですか…やっぱりそうですよね。
…セリナ様はすまし顔でお茶飲んでるし…
ええい、ぶっちゃけちゃうか。
「そう、ですね。先日お話しした時は『綺麗な人だなぁ』というのが最初の印象でしたね。」
ふふん、と得意げなセリナ様。
なんでドヤ顔なんですか…。
「その後は『押しの強い人』でしょうか。」
ボクは一方的に知っていたわけですが…セリナ様はボク達姉妹の事は直接ご存知ないはずなのに、いきなり『お姉さま』呼びはダメだと。出来れば『様』も外せと。なかなか無茶を仰る方ですよねぇ、有無を言わせない勢いでしたから。
ふむふむ、と皆様相槌を打っておられる。
この辺は共通認識なんだな。なるほど?
セリナ様はまだドヤ顔。
いや、ドヤるところじゃないと思うんですけれど…
「ですが今日、少し変わりました。」
「へぇ…どんな風に?」
「そう、ですね…上手く表現出来ないのですけれど…強いて言えば『可愛い人』かな、と。」
「可愛い?!これが?!」
また“これ“って言った。なんかセリナ様の扱いが微妙にぞんざいな気がするのは気のせいだろうか?
「…ええ。可愛いと思いますよ?だってセリナ様、お姉さま方にあまえてらっしゃるんですもの。」
「あまえてる?」
たぶん、ですが。
セリナ様って ON OFF がはっきりしているんじゃないんですかね?どこで切り替わるのかは判りませんが、自分が身内と認識した人の前ではスイッチがOFFになっちゃってポンコツ化するんじゃないですか?
まぁ、ボクと彩葵子さんが居るのにOFFになっちゃってるのは謎ですけれど。あ、生徒会室の中はOFFになる場所…なのかな?
「ふ〜ん…なるほど面白いわね。」
こちらのお姉さま、少し感心した様にボクを見た後、花乃お姉さまと頷き合っている。…あれ?何か別のところで納得されている気がするんだけど?
「せりヒドイ!」
え?あ、セリナ様聞いてらっしゃったんですか?
って、ヒドイって何ですか。『可愛い人』のどこがヒドイんです?
寧ろ褒めていると思うのですが?
「ポンコツって言った!」
……言いましたっけ…?
まぁ良いじゃないですか、それも個性ですよ個性。
自慢じゃありませんがボクも相当ですからね?
ちょっと上手くいくと調子に乗って暴走気味になるし、何をするにも なづな…姉と一緒が良いって駄々こねるし、距離感が変って言われるし決断は遅いし甘えん坊だし…あれ?碌でもないな?言っててちょっと悲しくなってきたぞ?
「『それも個性』よ双子ちゃん。」
くっくと笑いながらも、花乃お姉さまがフォローしてくれたのだが…なんか自分で掘った落とし穴に落ちた気分だ。
ま…まぁそれはともかく。
先程お姉さま方も言ってらっしゃいましたが、セリナ様は実務はピカイチの様ですし、同級生の皆さんとの関係も良好に思えました。ボク…私が見る限り、尊敬出来るお姉さまだと思いますよ?
「あら、随分と持ち上げるわね?」
よいしょしているつもりはないのですけれど…正直、セリナ様の事を深くは存じ上げないので知っている範囲での感想で恐縮ですが、素敵なお姉さまには見えていますね。
「ほら、ほら!ね?!だから言ったじゃないですかお姉さま方!せりは!ちゃんとわかってるんですって!」
私がお姉さまとして足る存在だと!ふふん!
…とか言ってグッと胸を張るセリナ様。…思ったよりずっとポンコツかもしれない。同時に可愛いさも増してるけれど。
「外面が良いっていうのよ、そういうのは。まぁ貴女がハリボテではないのは私達にだってわかっているわよ?けど、もうちょっと、ねぇ…?」
「そうよね。花乃や蓮は仕方ないにしても、せりさんと彩葵子さんがいらっしゃるのに…これでは、ね。」
お姉さま方はボク達がいるという状況で、セリナ様の気が抜けているのは問題だけれど、普段の仕事ぶりや能力そのものは高く評価しているという事ですね。
「あの…… 」
おずおず、といった感じで彩葵子さんが挙手をする。
皆が一斉に注目しても彩葵子さんは動じていない様だ。むう…さすが委員長、慣れを感じるね。
「その、新人教育というのは他の方に任せる訳にはいかないのですか?」
その問いに対してお姉さま方は、溜息混じりの苦笑を返してきた。
「前はね、せっちゃん…セリナの上の代、つまり今、高一の子達が3人居たのだけど…誰も残ってないのよ。」
誰も残っていない…?
「外部へ進学したり引越しで転校したり、ね。」
ははぁ、なるほど。
「あの子達がいれば問題なかったのだけれど…。」
…いやいや、セリナ様の代に人がいるでしょう!?
いますよね?一人って事はありませんよね?!まてよ、えぇと…始業式の時、前に整列してた執行部のお姉さま方って何人いた?
5…いや7人くらい居た気が、する。
って事は、ここにいない方が3人くらいは居るはず。その方々が全員高等部って事はありませんよね?!
「セリナの代にもう一人いるのだけど…あの子に指導とか出来るのかしら?」
揃って、う〜んと首を捻るお姉さま方。花乃お姉さまも蓬お姉さまも腕組みして首を捻っている。唯一、蓮お姉さまだけが苦笑しいてるところを見ると、もしかして友人なのだろうか?
…どんな人なのか気になるね。
「ほら!やっぱり私しかいないじゃないですか!」
だからなんでドヤ顔なんですかセリナ様…。
「だからぁ、それで悪影響が出たら困ると言ってるのよ… 」
…堂々巡りというのを目の当たりにしている訳ですが、正直これでは収拾がつかない。いつ迄たっても締まらない。
「お姉さま。よろしいですか?」
「ええ、どうぞ。」
セリナ様は実務は優秀だけれど、その他の部分…例えば礼儀礼節気配りなどの部分が時折りすっぽりと抜ける、それを新しく入ってくる子が真似したら困る、と。そう懸念してらっしゃるのですよね?
ならば、あまり心配しなくても良いと思いますよ?ウチのなづな…私の姉ですが、その辺りはかなり厳しいので。ボク…じゃなかった、私がだらしない態度を取ったら容赦なく叩かれますもの。反面教師として見るようにと言い含めて置くだけで随分違うと思います。
「双子ちゃん達は大丈夫って事ね?」
花乃お姉さまが真剣な顔で聞いてくるので、思わず『そうですね』と答えた。答えてしまった。
「聞いた?蓬?」
「ええ、しっかりと。では、鈴代姉妹にお願いしましょう。」
蓬お姉さまは、相変わらずふわふわと微笑んだままボクを見て、それはそれは恐ろしい事を言い放った。
「次期生徒会役員、及び、百合沢セリナの教育係を。」
最近深刻な「会話が転がらない病」に罹患しています。
意図しない方へ、そっちに行っちゃダメ、という方へと会話が進もうとする…脳内のキャラが勝手に喋るのを文字起こしするとエライ事になってしまう…勝手に喋り出すのも善し悪しです…。
AM11:50
数回に分けて全体的な加筆及び、表現等の修正を行いました。
PM14:45
加筆修正を行いました。
本日の投稿は以上で終了します。
次話投稿は12/3AM01:00を予定しております。
よろしくお願いします。




