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えぴそーどおぶおーでぃなりー⑧

お姉さま、続々、デス。





「セ、セリナ様?!何故こちらに?!」


モガモガッ。


「何故って、ここが生徒会室で私が生徒会執行部所属だから?」


ですよね?!

そうです、そうでした。生徒会室に生徒会役員が詰めていて何の不思議があろうかって話ですもんね!ええ、ええ、全くもって当然の事でした、はい。


因みに今現在のボクの状態はですね、普通に立っています。至って普通に。

ただ、そのボクに寄り掛かる様に、それはそれはふくよかなお山が下顎部から前胸部を圧迫し、更には頸部及び頭部をしなやかな腕部によって拘束されている、というのが普段と少し違うところでしょうか。

つまりボクはハグされている訳で…。

あれ?

あれれ?


「…セっちゃん…双子ちゃんが困ってるわよ。可愛い後輩を愛でたいのはわかるけど、後になさい。それよりお茶。」


ピッと流し台を指差し指示を出す蓮お姉さま。

既に室内に居た方々の前には空のカップが並んでいる。

はぁ〜い、と生返事をしたセリナ様は、まさに渋々といった感じでボクを解放し空のカップを下げ、新たなティーセットの準備を始めた。


「セリナ様、お手伝い致します。」


一言ことわってセリナ様に並び、ティーカップに白湯を注ぐ。カップを温めるためだね。セリナ様はそれを見て『流石(さすが)。』と呟き、ボクの頭をポンと撫でた。

…褒められたらしい。大した事してないのに。

いや、嬉しいけれどね。

ボクは来客であって、執行部メンバーではない。したがって今ここでお茶の用意を手伝う必要はない。ないのだけれど、なんか、つい、手伝いを申し出てしまったが出過ぎた真似だっただろうか?……まぁ問題になる様な事ではない、はずだ。『それに触れるなぁ!』とか言われたりはしないと思う。たぶん。


突然の状況に呆然としていた彩葵子さんは、蓮お姉さまに促されて部屋の中央に鎮座した会議卓の一席に座っている。実に所在無げだ。

ご、ごめんね彩葵子さん!ボクが離れちゃったから…お茶用意したら直ぐに戻るから、ちょっとだけ待ってて。


人数分のお茶を用意しお姉さま方に配ってゆく。配膳はセリナ様が、ボクはお茶を載せたトレーを持って着いて周るだけだ。

実はこの段になって初めて気付いたのだけれど、一番手前、扉に背を向けて座っていたのって花乃お姉さまじゃないですか!花乃お姉さまも執行部所属じゃないですよね!?何してんですかこんな所で…えらく寛いでいらっしゃいますけれど…。

で、もう一人覚えのある方が。

一番奥の席、所謂(いわゆる)お誕生日席にいらっしゃるのは、あの不思議な雰囲気の持ち主。(よもぎ)お姉さま。今もふわふわと微笑んでいらっしゃるだけなのに、なんか暖かい風がそよいでいる気がする。

…相変わらず謎だ…。


他にも2人、高等部の制服を着たお姉さまがいらっしゃるけれど…残念ながらお名前は存じ上げない…。始業式の時に執行部メンバーの中にいた方なのは間違いないんだ。見覚えがあるもん。

…しまったなぁ、ちゃんと名前覚えておけば良かった…。

…そうだよなぁ、ここに来る間に執行部メンバーの名前くらい調べられたんだよなぁ…彩葵子さんだったら知ってたかもしれないし、スマホあるんだから学院のHPでも覗けばすぐにわかった事なのに…仮にも“執行部に入ろうか“なんて考えてる人間がだよ?現役メンバーの名前知らないとか、失礼過ぎない?

脇があまいなぁ…はぁ…。


なんて事を考えながら、ポットに水を足し、水回りを軽く拭って、トレーを抱えたままポットがお湯を沸かす様子をじっと見ていた。


「あの、鈴代せりさん?」


おっと、お呼びだ。

お代わりかな?


「はい、ただいま。」


と、振り返ると…みんながこっち見てるじゃないですか。

ひぃ?!え、なになに?!ボク何にもしてないよね?!

思わず後退(あとず)さっちゃったよ!いや、流し台があって後退は出来なかったのだけれど。


「せりさんは、何をなさっているのかしら?」


何を、と言われましても…


「ええと…お茶のお代わりが必要かと思いまして…お湯を足しておこうと…。」


ボクが答えた瞬間、お姉さま方の視線が一点に注がれた。

その視線の先には…悠々とお茶を楽しむセリナ様の姿。

注目されている事に気付いて、カップを置き、居住まいを正してコホンと咳払いをひとつ。


「…ほらぁ、これだもの、ね?わかるでしょ?!」


「確かにねぇ。これは任せていいものかどうか… 」


「任せたら悪影響の方が大きい…なんて事にならないとも限らないしねぇ…。」


「それは有り得る…。」


「ちょっとお姉さま方?!その言い様はあんまりじゃありませんか?!」


…なんだかよくわからないけれど、セリナ様になにかしらの仕事を任せて良いかどうか意見が紛糾している…という感じだろうか?いや、どっちかっていうと()()()()()()()()って意見で固まってる様に聞こえる。

蓬お姉さまは変わらずふわふわと微笑んでいるだけ。…これ生徒会室の日常なのだろうか…?


「せめてお客様がいない所で話すものじゃありませんこと?!」


「どの口が言ってるの!そもそも… 」


あわわ…!

なんか口論が始まってしまった!

これ、ボクが聞いていても問題ないのだろうか、っていうか

『お客様がいない所で話すもの』って言うならここでおっ(ぱじ)めないでもらえませんかセリナ様、ホントに『どの口が』なんですけれど!?

これじゃ彩葵子さんもさぞかし居心地が悪かろう、とチラリと目を向けると…あれ?蓮お姉さまと談笑してらっしゃいますね?…大丈夫そう?

んじゃ彩葵子さんは蓮お姉さまにお任せするとして、セリナ様とお姉さま方の口論の方を…いや、ここでしゃしゃり出るのもどうなんだろうか?元はと言えばボクが出しゃばって手を出したりせずにセリナ様に任せていれば…いやいや、だけど『執行部入り』を推薦して下さった花乃お姉さまと蓮お姉さまがいらっしゃる場で、ただ見ているだけというのは…いやいやいや、既にその考えが出過ぎているのではないかとも思えなくもなくもなくもない…おぉ、なんかもう何考えてるのかわかんなくなってきた?!


「はいはい、あんた達。そろそろやめなさい。ジェミニちゃんが困ってるわ。」


パンッと手を叩いて会話に割り込んだのは花乃お姉さまだ。

セリナ様はまだ言い足りないのか口をパクパクさせていたけれど、他のお姉さま方が着席したのを見て、仕方なさそうに自身も座った。


「はい。セリナ不正解。」


「はい?」


花乃お姉さまがセリナ様に向かってダメ出し。

不正解、とは、なんぞ?

あ、言葉が解らないんじゃないよ?

『何が不正解なのか』って事ね。

そんな事わかってるって?

そうだよね、うん、ボクが混乱してどうする。落ち着け。


「ここにいる執行部メンバーは何人?」


「4人です。」


「お客さんは?」


「…4人です。」


そうね、と頷く花乃お姉さま。

蓮お姉さま、彩葵子さん、自分、続けてボクを指差し


「そこに立っているのは?」


「…せり…お客様です… 」


「わかっているじゃない。」


ふむ…?つまりお姉さま方は『ボクが手伝った事』でも『ボクに手伝わせた事』でもなく、その後に“ボクだけが残った”のが問題だと言っているのか…?

え~…それじゃ、セリナ様が叱られてるのってやっぱりボクの所為じゃん…


「双子ちゃんが手伝いを申し出た時、拒まなかったのは良いわ。」


双子ちゃんの厚意を無下にしなかったのだからね。配膳もまぁ良いでしょう。けれどその後、自分だけ席に戻ったのは何故かしら?双子ちゃんを着席させなかったのはどうして?労いの言葉をかけなかったのは?お客様だけ立たせておいて何とも思わなかったのかしら?

…と、花乃お姉さまは続けた。

いえ、あの、お茶の用意は、ボクが勝手にやった事ですし、あの、その…あうあう…


「ええ、わかってるわ。双子ちゃんは『下の者の役目』と思ったのでしょう?それは褒められる事はあっても誰も咎めたりしないわよ。…け~ど!

セリナはダメ~。」


ニヤリと笑って足を組み、腕組みをして


「そんなんじゃ『下の子の面倒を見る』ってのを“はいそうですか”って認める訳にはいかないわねぇ。」


あ、花乃お姉さまちょっと楽しんでますね。

設営の時と同じお顔です。

これはアレですか、セリナ様がどんな反応をするのかが見たいって事なんでしょうか?少々意地が悪い様な気もしますけれど…。




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