えぴそーどおぶおーでぃなりー③
「さて、今日はこのくらいで良いと思います。みんなご協力ありがとう。また必要になったら声を掛けるので、その時は宜しく。」
中庭で写真や動画を撮っていた椿さんが
彩葵子さんの宣言で本日は解散と相成った。
ボク達と演出チームを除いて。
ていうか彩葵子さん、いつの間に合流したんですか?最初居ませんでしたよね?
「ああ、合流したのはついさっきよ。職員室に行っていたものだから、遅れたの。」
職員室?
「校内の撮影許可をね。文化棟や生徒館、講堂なんかは許可とっておかないと開けてもらえないもの。」
あぁそうか。そう言えばそうだ。
図書室は図書委員会に話を通せばなんとかなるかも知れないけれど、講堂は使用許可が要るはずだ。そっか、それは考えてなかった。彩葵子さんありがとう!
「撮影出来なくて困るのは私達のクラスなんだもの、そのくらいするわよ。」
両手をとってブンブン振りながらお礼を述べると、眉を顰めながらもちょっと照れ臭そうに目を逸らす。
あら?ツンデレ?ツンデレですか?
まぁ可愛い…
「そ…!そんな事は良いから、ほら、椿さんが呼んでるわよ!」
あ、はい。行ってきます。
椿さん達の所へ行くと何やらカメラワークの打ち合わせ中だったらしい。本当ならこうしたいああしたい、でも機材なんかないから…と。あんまり凝った事すると収拾つかなくなって大変だと思うのだけれど…。実際最初の案はそれで破棄されているんだから。
「せりさん、なづなさん、ちょっとここに立っていてくれる?」
「立ってればいいの?」
「ええ、暫くそのままで。」
はて?立っていれば良い?
椿さん達に言われた通り、中庭に立っているのだけれど…なにこれ?ホントに立っているだけで何もしてないよ?
「あのー椿さん?ボク達このままでいいのー?」
「大丈夫でーす。そのままイチャイ…お話しでもしてて下さーい。こちらで段取りますからー。」
ちょっと心配になったので声を掛けてみたのだけれど、このまま立っていろ、と。っていうかイチャイチャしてろって言いかけたよね!?
「イチャイチャ、だって。」
クックックと、なづなは笑いボクの手を取る。
「…たぶん、こういう事じゃないかな?」
スッとお辞儀をしてウィンク。
…あぁ、なるほどね。
ボクもスカートの裾を摘んで軽く膝を曲げて返礼をする。
ステップはどれが良いかな?
「そうだねぇ…べニーズかな?」
早い三拍子ね。確かにリズムの違う曲を被せても、あまり違和感のないステップだね。了解。
なづなが受け入れの体勢を作り、ボクは彼女へと一歩近付く。手を取りしっかりとホールドすると、スルリとなづなの腕の中へと身体が収まった。
「…じゃ、いくよ。3、4。」
クルクルと回り、スイスイとステップを踏む。
ああ、なづなが笑っている。
偶にはリードされるのもいいものだね。
今日はいつもと違って、珍しく なづながリードを取っているのだけれど、なづなの声に合わせてステップを踏み始めるとパートナー側でも意外といける…?いや、でもちょっと…普段と逆なので違和感はあるなぁ…見ている景色が反転している訳だからね。ボクは以前からリーダー側で踊る事が多かったし…。
あ、”いつもと“と言ってもそんなに頻繁に踊っている訳じゃないよ?たま〜に近所のダンススクールにお邪魔してるだけだからね?それこそ月に1〜2回程度だよ?
ボクはダンスは好きだし踊るのも楽しいのだけれど、見られているというのが如何にも苦手で…。
今だって、なづながリードしてくれてるから周りを意識せずにステップ踏めてるけれど、椿さんや彩葵子さんが見てるって意識しちゃったら顔真っ赤になっちゃうんじゃないかな?
踊っていたのは1〜2分程度だと思う。
ボク達が離れると椿さんが何やら電話をしながら、小さな声で喚いていた…って、なんか変な言い回しだね、これ。
まぁいいや。で、喚きながら周囲を見回し、校舎の2階なんかにも視線を送っていたので、何があるのだろうとボクも2階へと目を向けると…演出チームの子と…野次馬さんが多数…。
これは…またやらかしたんじゃないですかね?!
いや、確実にやっちゃいました。
だって2階からきゃあきゃあと姦しい声が聞こえてきますもの…
「ななななづな…ちょっと、これ…。」
「あ〜…うん、上は気にしてなかったなぁ…。」
ぽりぽりと頬を指で掻いて苦笑いしている。
中庭と周辺の窓には椿さん達以外の人影がなかったから大丈夫だろうと思ったって…あぁうん…そうだよね。それは仕方がないね…。ボクも2階は気にしてなかったもの…。
またやっちゃったよぉ~…
……恥ずかしいぃぃぃぃーーーーー!
踊ってる時は余分な事を考えずに踊っているというか…只々楽しいって思ってるんで平気なんだけれど、こうして周囲に目が向くようになって初めて見られていた事に気付くと…うひぃぃ…。
「せりさん!なづなさん!」
ボクが羞恥に喘いでいると、先程まで電話をしていた椿さんが駆け寄って来た。
あぁ、電話はまだ通話中なのかな?耳に当てたままだ。
「ありがとう!とてもいい画が撮れたわ!大収穫です!」
お?おぉ…?大変興奮しておられる…。
そうですか、良い画が撮れたのならボクのこの羞恥も報われるというものデス…。
っていうか、何処から撮ってたんですか?椿さん電話してたんだから…カメラ使えないんじゃ?
「ああ、それなら… 」
そう言って周囲を見回す。
ボクもつられて周りを見ると、校舎の1階2階、渡り廊下のあちこちにクラスメイト達がスマホを持って手を振っていた。…彩葵子さんまで!
なるほど…あれ皆カメラマンだったのかぁ…
「せりさん達が何かしそうだったから慌てて皆を呼び戻したんです!それでいろんなアングルから撮ってもらって…。」
よくもまぁ、あんな短時間でそんな事を。
「流石に最初から全部とはいかなかったけれど、大部分は収められたはずですから…かなりの撮れ高ですよ!」
撮れ高ときましたかぁ…。
いや、そりゃあね、お役に立てた様で良かったとは思うけれど、ちょっと…今すぐダッシュでこの場から逃げ出したい気分です。う~…こんなに見られていると知っていたら踊ったりしなかった…かなぁ?う~ん…なづなに誘われたら、断るって選択肢はボクには無いもんなぁ…。
「後は皆さんにデータ送って貰えば…今日は充分すぎるくらいの収穫じゃないですか、彩葵子さん?」
「え?ええ、そうね。」
「…どうかしました?」
「何でもないわ。…じゃあ、今度こそ本当に解散って事で。みんなまた明日、宜しくね。」
彩葵子さんが、そう声を掛けると渡り廊下や2階の廊下から顔を出していたクラスメイト達は、手を振り、挨拶を返し、各々のタイミングで散ってゆく。
結構いろんな所で撮影したけれど、今日で許可なしでも撮れる場所は大体お仕舞いなのかな?
「さぁ…?どうなのかしら?今のところ、椿さん達の頭の中にしか設計図が無いんだもの。なんとも言えないわね。」
いや、これ、完全に椿さん主導になっちゃってるんだけど…良いのかなぁ?せめてプロットとか教えて欲しいなぁ。このままだとボク役立たずの案山子のままだよ…?
「撮影許可が個別に必要な所との交渉とか、その為の申請書類の作成とか、やるべき事はあるよ。彩葵子さんに任せっきりじゃ申し訳ないもの。」
「私は別に…いえ、そうね。手伝って貰えれば助かるわ。」
うう、気を遣ってくれてありがとう、出来るだけ頑張るよ。
「今日の戦果と明日以降の予定の確認も兼ねて、一度話して置いた方が良いかしらね。まだ時間ある?」
ボク達は大丈夫だけれど、椿さん達はどうだろうね?
まぁいずれにしろ鞄取りに教室に戻るんだから、道すがら
確認しよう。
「…結局、全員残ってるじゃない。」
いや、彩葵子さん?
それはボクに言われても困りますよ?
椿さんが『動画を送って欲しいので、送り方を説明します』っていうんだもん。そりゃ説明聞くためには残るでしょ。
それに明日の予定だったら、ここで伝えちゃっても良いんだし、みんなの撮った物も確認させて貰えばいいんじゃないかな?
「それはそうね…。」
さて、それでは椿さん。
撮った映像のお披露目と行きましょう。
どんなのが撮れているのか…
ボクも知らないんだけれど、さ。
一旦投稿いたします。
朝以降、加筆予定です。




