えまーじぇんしー
前話を投稿した後に気づきました…
100話!突破!
ありがとうございます!
これも偏に皆さまがお読み下さっていればこそ!
本当にありがとうございます!
「……」
…ん…。
「ミア。ミアってば。」
んん…?
あ、朝かぁ…なんだろう、ちょっと怠い。
のっそりと身体を起こして、声のした方を見と声の主の姿が目に入った。
ショートカットにした輝く様なプラチナブロンドの髪。端正な顔立ち。鍛え上げられた筋肉の上に、薄らと載った脂肪が柔らかな曲線を描く腕、スラリと伸びた長い脚。主張はしても大きすぎない双丘は絵画の様に美しい。問題は裸だって事くらいだろう。
ま、目の保養だと思えばいいか。眼福。
歳は…20歳前…18歳くらいだろうか。
綺麗な人だな…
…
……
………誰?
「まだ寝惚けてるのミア?そろそろ起きないとみんな来ちゃうよ?」
だから誰?!
状況からして、彼女はボクに話しかけている。
まずボクの名前?はミアというらしい。
あくまで彼女から見て、だが。
けれど、ボクは彼女の名前もわからない。今がいつで、此処が何処で…あれ?
そもそもボクは…と、自分の身体を見下ろして驚いた。
何故かって?
目の前に居る彼女と、同じ様な裸身があったからだ。自分の身体である事は間違いない、自在に動かせるし感触もしっかりある。
腕や足を触れば腕や足に触れる感触が。
顔に触れば顔に感触が。
腕も足も、指も、思い通りに動く。
ボクは慌ててベッドから飛び起きて壁に掛けられた鏡の前に走る。そして鏡…姿見より少し小さいが、充分に大きな鏡に映った自分と思しき人物を見て更に驚いた。
そこに映っていたのは、さっきまで眺めていた人物…と瓜二つの容姿をした女性。これ、ボクか?
違うのは髪の長さくらいだ。
鏡の中の女性の髪は背中の中ほど迄の長さがある。
“ボクの記憶しているボク”とは随分と違う。年齢も体型も…いや、ボクが育ったらこうなるのか?
待て待て待て!
なにこれ、なんだこれ!?
…えっと、ひとまず落ち着け、うん。落ち着いて整理しようか…そうだパニックになるな。
ひとつづつ。そう、ひとつづつ、だ。
ボクの事、そうだ自分の事から、一個づつ確認しよう。
名前は、鈴代せり
歳は13歳
日本生まれ日本育ち。
明之星女子学院、中等部2年生。
成績はまあまあ良い方
スポーツは得意な方
書道が好き
英語の発音が壊滅的…
特技は…パパに習った変な格闘技。
我流ちゃんぽん拳とか、ちゃらんぽらん拳とか言ってたような…まぁ格闘技と言うより健康体操的なアレだけれど。
それから、え〜っと…あ!そうだ!
双子の姉である『なづな』が好きで、告白して、受け入れてもらって…それから
…前世の記憶がある…。
せりになる前の記憶が。
そうだ。
ボクは、鈴代せり。
…
……
……あれ?
ボク、ミアって呼ばれなかったっけ?
それに、この身体はどう見ても中学生じゃないぞ!?
ふにふにと自分の膨らみを押してみるものの、やっぱり記憶にある感触とは明らかに違う。
「ちょっとミア?大丈夫?」
声をかけてくる女性に目を向ければ、今度はわかった。なづな、だ。
育っているだけじゃなく肌の色も少し違う。日に焼けているのだろうか?
しかし、なづなだ。間違いない。
「ホントにどうしたの?…私の事…お姉ちゃんの事、わかる?」
「え?ああ、大丈夫。なんでもないよエマ。」
するりと口を突いて出た名前。エマ。
なんの抵抗もなく、ごく当たり前に。
なんだ…コレ?夢?
夢にしてはイヤに生々しいぞ?
空気の匂いも、足の裏に伝わる木の床の感触も、なづな…エマの声も…リアルに過ぎる。
まさか…まさか…?
転生?!
2度目の!?
転生先で前世の記憶を取り戻したっていう?!
そんな何番煎じかわかんない様な事が!また起こったと?!
いやしかし、一度あった事が二度起こらないとは言えないし、本当にそうだったとしたら…!
…違うそうじゃない、今問題なのは“せり“の記憶が蘇ったせいかミアの記憶が…この世界でのボクの記憶が思い出し辛くなってるらしいって事の方だ。
夢なら良し。けれど現実だとしたら…記憶の欠落は致命的にヤバい。
どんな世界なのか、どんな生い立ちで、どんな生活をしているのか、家族構成は?文明のレベルは?
まずい…ホントに思い出せないぞ…。
正直に話したって下手をすれば狂人扱いだ。記憶喪失を装う?いやもう無理だろうなぁ、さっき『エマ』って言っちゃったもん…。
一旦流れに任せてみるしかないか…?
取り敢えず今わかる事は、ガラス製の鏡が普通にある文化レベルではある事。とするとボクの知る歴史なら18世紀くらいだろうか?
もう一つは部屋の中で靴を脱ぐ習慣があるらしい事。何故なら、今ボクは裸足だけれど床の汚れをまるで感じない。フローリングの様に清掃されているからだ。
「ミア、そろそろ服着なよ。みんな来ちゃうってば。」
「う、うん。そうだね。」
みんな…みんなって誰だ?
なづな…じゃなかった、エマのいるクローゼットに向き直ると、彼女は既に服を着ていた。
…シャツの上に革の…ビスチェ状の物を着け、厚い布のズボンの上にカウボーイが履いている…え~っと…あ、チャップス?だっけ?あんな感じのを重ね着している。裾を絞るための編み上げ紐が絞められていないところを見ると、靴はロングブーツの様な物なんだろうか?
ほほう。恰好良いじゃない。
いやいや見るべきはそこじゃない。紐止め、ベルト止め、ボタン止めでファスナーがない。って事は時代的に19世紀には至っていない文明レベルの可能性が高い…あくまでボクの知る歴史が当て嵌まるなら、だが。
そして、とんでもない事に気付いた。
言語が日本語じゃない。
理解できるし、話せもする。
でも、日本語でもなければ英語でもない。
語感からしてドイツ語が近い気がするけれど…あくまで、っぽいというだけで確証はないんだよね。
あ、でも待てよ?エマとミアってドイツ語圏の名前じゃなかったっけ?!
…いやぁ、だから何?って感じだなぁ…
それにしても“未知の言語”を自分が発しているという圧倒的違和感…!
超気持ち悪い!
なんて考えながらクローゼットから自分の…ミアの服を引き出す。
下着は…あ~…ふっるいタイプの紐パンに、膨らまないタイプのドロワーズ…え?下着が二重なの?アンダースコート的な?こ…これはボクの知識の中にはなかったな…。お、ブラもあるんだ。木綿製か、へぇ。まぁ史実でも500年前にはもうあったって言うし不思議ではないのか。でも史実なら個人個人のお手製ワンオフだったはず。これは…如何なんだろう?
いやまぁ…着け方、穿き方は理解るので別に良いんだけれど…
文化に齟齬が出た…って事は、やはり知っている歴史上の時間軸じゃない可能性が高い…異世界…無いとは言えなくなったぞ。
服は問題なく着ることが出来た。
ボクの知る服と構造が変わらない事もあるけれど、なにより身体が覚えているのが大きい。考え事をしていてもなんとなく着れてしまった。
服そのものはエマの物と大差ないが革のクローブとレガースが装備として付いている。ふむ、動きやすい。これは冒険者っぽいね。いよいよファンタジー世界風になってきたぞ…
「ミア、はいこれ。」
エマに手渡されたのは革製のウエストバックとマント…ローブかな?
剣とか弓とかが出て来なかったのは幸いだ。流石に右も左もわからない状態で戦えって言われても…困る以外何も出来ないもの。
渡されたウエストバックを付けている間に、エマは手拭いを水差しの水で濡らしボクの顔をごしごしと拭う。
わぷぷ!
…エマって過保護気味?それともミアの方がポンコツ気味なのだろうか?微妙に判断がつかない。
暫くするとドアがノックされた。
“みんな“が来たのかな?
「エマ・リリエンガーテ様、ミア・リリエンガーテ様。間もなく公女殿下がお見えです。ご用意宜しいでしょうか?」
「ええ、今行きます。」
“様”呼び!ボク達ってそれなりの地位に在るの?!
しかも公女殿下ときた。
ボク達は侍女って格好じゃないし…護衛?
いかん本格的にわからん。
取り敢えず流れに任せてみようか…さっきエマの名前が出てきたみたいに、するっと思い出せるかもしれない。
思い出せると良いんだけど。
「ミア、行くよ。」
「うん。」
ドアを開けると、ボク達と似た服装の女性が3人程立っていた。エマは何も言わず彼女たちの前を通り過ぎ、広い廊下を迷わず進んでゆく。翻るローブがカッコイイ。
柔らかな雰囲気のなづなも好きだけど、ちょっとワイルドなエマもなかなか…。
板張りの廊下は長く、何度か角を曲がると縁側の様な回廊が現れた。天井も高く格子に組まれた木枠に板が嵌め込まれたような形状…これは宮造り?いや少し違うか?何か古今東西のいいとこ取りした様な…妙な造りだ。悪く言えば一貫性が無い。趣味じゃないなぁ…。
回廊に囲まれた庭は…いかにも工事中って感で、どんな庭だったのか、どういう庭になるのか、さっぱり想像がつかない。
やがてロビーの様な場所にでると、メイド服に似たお仕着せの女性達がわらわらと寄って来た。
なんだなんだ?!
内心焦っていたんだけれど表面上は平静を保って、慣れてますけど何か?みたいな顔をしておく。
だってエマも後ろについて来ている人達も、全然動じてないんだもん。コレが普通だって事なんでしょ?
で、メイドさん達なんだけれど、ボク達の靴を持って来てくれたらしい。しかも履かせてくれるんだよ?
なんなの!?どっかの伯爵じゃないんだから!
靴、というかハーフブーツを履かせてもらい、チャップスの編み上げを締め込んでもらい、レガースのベルトを調整してもらう間、ずっとジーッとして前を睨んでいなきゃならなかったのがキツかった…。隣に立ってるエマの真似してただけなのに…これ日常なの?慣れられる気がしないんだけれど?
最後にブーツを軽く磨いてくれたメイドさん、まだかなり若そう…というか幼い。10歳くらいじゃない?
見習いさんかな?
なんとなく見ていたら目が合っちゃってさ。目を逸らすのもアレなんで、ちょっと微笑んでね、お礼を言ったんだ。ありがとうって。
そしたら、一瞬驚いたように目を見張った後ぱぁっと赤くなって。もの凄い勢いでお辞儀して小走りで去っていってしまった。あれ?
「…ミ〜ア〜… 」
「ん〜?」
「あんまり色目使わないの。」
色目!
使ってませんよ!?
ちょっと、誤解だよ?!
ボクはなづな一筋……あれ?
ボク…ミアは、エマが好きなんだ…。
この感じは『せり』が、『なづな』に持っていた気持ちと同じものだ…あ、すごい。ちゃんと心も継承されてるんだ。
「…知ってるでしょ。ボクはエマを愛しているって。」
エマは一瞬目を丸くした後、ぷぅと頬を膨らませた。
で、ビスチェとベルトの隙間を指でビスビスと突いてくる。イタイイタイ、なんか凄く痛い!ちょ!マジでイタイ!
玄関を出るまで、歩いている間中ずっと突かれ続けて、もうグッタリですよ…!痣になってんじゃないのコレ?
エマの方をチラと見ると、真面目な顔をしているけれど、耳が赤い。あら、照れてらっしゃる。
…あはっ…こんなところ迄“なづな”と同じなんだ。
広い玄関を出ると、更に広い…広場の様なグラウンドの様な
…だだっ広いスペースがあった。
そしてそこには40…いや、もう少し多いかも知れない、ボク達と似た恰好をした一団が整列している。
ごめん、ついていけてない。
…なにこれ?
一応ここまでは、エマの真似と身体が覚えている事に委ねる形できたけれど…こっから先、どういう行動したら良いんだ!?
うわぁ…どうしよう。
すると後ろに控えていた3人の内のひとりが、すっとボク達の前に歩み出て声を張り上げた。
「傾注!!」
号令一下、整列していた一団がこちらに注目する。
ひぃ…!こ、この注目される時の視線って、全然慣れないね!?“せり”の時もHRで教壇に立つだけで嫌だったもんなぁ。…ミアは平気なのかね?いやボクだけれど。
「間もなく公女殿下がお越しになる!各員失礼のない様に!」
号令をかけた女性は、ぐるりと全員を見渡し今度はボク達の方を振り返る。
「エマ様。何かございますか?」
「いいえ。公女殿下がお越しになり次第出立出来るよう、準備を。装備の点検等は抜かり無く。いい?」
「心得ました。」
女性は皆に向かい、エマの指示を伝え一団を一旦解散させた。団員?で良いのだろうか?皆は各自の荷物の点検や馬車の点検等を行なっている。ボクはなんとなくそれを眺めていた。馬車か…まだ産業革命前くらいなんだろうか?それともまだ一般化されてないだけで、蒸気機関は既に存在するとか?
まぁいずれにしろ馬車や徒歩での移動が一般的っぽいね。てか、あの馬車デカいな?!
バスみたいなサイズなんだけれど!?え?何頭立てなの!?
「ミア様。」
馬車の大きさに驚いていたら、先程号令をかけていた女性が声をかけてきた。
「はい、なんでしょう?」
「団の雰囲気には慣れましたか?」
…ははぁ、この言い方だとボク達…少なくともボクは外様だって事だな。察するに今回の公女護衛任務の為に組み込まれた助っ人…ってとこか。
それ、当たりがキツイんじゃない?
えぇ…だったらやだなぁ…。
「…いえ、まだちょっと緊張します、ね。」
「うちの連中は気のいい奴ばかりですから、直ぐに馴染めますよ。…それにしても… 」
ボクの顔をまじまじと眺めて、コテっと首を傾げる。
「何か…今日は堂々としておいでだ。とても凛々しい。」
…うぇ!?ミアっておどおど系の子だったの!?
しまった…!そんなこと考えてなかった…!今から…は流石に変に思われそうだ…。くぅ、仕方ない、ボクのままでいかせてもらう!ミアごめんね!ボクだけれど!
「…姉の真似をしているだけですよ。ああなりたいなって思っているので。」
「なるほど、然り。エマ様はうちの連中も一目も二目も置く御方ですからね。よくわかります。」
うんうんと頷いてニコニコと笑う。
おや?意外と好印象なのね。というかエマって凄い人なんだ?何だろう、強いって事?それとも指揮官として優秀なのかな?
「しかし、我らはミア様にも期待しているのですよ。」
ボク?!
確かにね?わざわざ招聘されるのだから、相応の実力者なのだろうとは思うよ!?でも…でもですよ?ボク本人がその実力を知らないのですよ!これって凄く問題のある状態だと思うのですが?!
「身の丈が人の四倍にも達する巨熊を単騎で屠ったという力!大いに期待しておりますよ。」
…熊殺し…だと?
人の四倍って、小さく見積もっても6mはあるって事でしょ!?
それを一人で?
“せり”になる前のボクだったら、熊だろうが戦車だろうが要塞だろうが物ともしなかっただろうけれど…え、魔法とか使えるのかな?それとも身一つで?
魔法…そういえば目覚めてからこっち、それらしい言葉も物も見聞きしていないのではないだろうか…?いや、まだ目にしていないだけって事もあるか…?
いや!それより熊殺しだよ、熊殺し!
凄いなミア!
「き…期待に沿える様に努力します。」
「まぁ、街道を進むだけですし、たいした危険もないでしょうが…なにぶん日数がかかりますからね。用心に越した事はない。」
「…そうですね。微力を尽くします。」
ボクがそう答えると、女性は柔らかく微笑んで団員さん達に指示を出すべく広場の方に歩いて行った。
…こりゃ参ったぞ…
熊殺しって、どうやったんだ?剣か?魔法か?
ボクは…ミアは剣も杖も持ってないけれど。
いずれにせよ桁外れの巨熊が存在していて、それを倒せる人間が居るという事。
そしてもうひとつ。この世界は、そんな力を必要とする世界だという事。
剣と魔法で戦う…ファンタジーだなぁ。けど装備を見る限りそのどちらでもない気がするんだよね…グローブとレガース。ミアは徒手空拳の戦闘スタイルなんじゃないだろうか?単なる身体能力なのか、特殊な技術があるのか、はたまた身体強化魔法みたいなモノがそ存在するのか…隙を見て検証したいところだけれど…そんな暇も時間もなさそうだよねぇ。
「ミアー。ちょっと手伝って。」
エマがボクを呼ぶ声がする。
いつの間にか離れて何かしていたみたいだ。
声の方向に振り向けば、馬を二頭引いてくるではないか。
おお!馬!白いのと黒いの!
…おお、馬…
馬?
でっっっか!?
え!?でか!
いや馬だよ!?確かに馬なんだけれど!
あれだよ!ほら、北海道でやってる『ばんえい競馬』!あの馬の更にでっかいヤツ!体高2mくらいある!うわぁ!初めて見た!普段よく目にする馬と違ってちょっと足が短いけれど、どっしりしていて強そう!
円らな御目目が可愛らしい!
鞍が付いてるって事は騎乗用なのか!
ひゃー視点高そう!
…どうやって乗るの、これ…。
「あ、ミアはこの子達とは初対面だっけ?道中、私達を乗せてくれるジルコンとジェット。この子達も姉妹だよ。」
「へぇ、よろしくね。ジルコン、ジェット。」
二頭とも懐っこいようで速攻で鼻先を擦り付けてきた。すりすりはむはむ。
うひひ、くすぐったい。
ジェットの手綱を受け取り馬車のある方まで引いてゆくと、馬車の更に奥の方から馬を引いてくる団員さん達が見えた。どうやら徒歩での移動ではないらしい。日数がかかるって言ってたしこれだけの騎馬がいるとなると…目的地はそこそこ遠いんだな。
「ねぇ、エマ。いまさらなんだけれど…さ。」
「ん?」
「何日くらいの距離だって言ってたっけ?」
「あ~…言ってなかったかな…?5日…7日くらいかな?」
1週間程度の距離…馬のギャロップなら時速で20km前後。馬車連れで平坦地でない可能性もあるのなら15kmくらいか?とすれば1日でせいぜい150km。仮に7日だとすれば1050km…。
「…東京ー福岡間…くらい?」
「…え?」
しまった!うっかり口に出しちゃった!?
いや、呟いただけだから聞こえてはいない。たぶん。
「あ、ううん。結構遠いんだなぁ、って。」
「だねぇ。うちまでなら1日で着くのにね。」
ほう?“うち”が自宅又は実家を指すのなら現在位置は既に出先だという事か。
なるほど?
「エマ様!ミア様!公女殿下がお見えです!」
ひとりの団員さんが走って来て告げる。
おお、とうとう御目見ですか。
「わかりました。出立準備は?」
「万事滞りなく。」
エマは、ひとつ頷いて団員さんに指示を出す。
「では、皆を集合させて下さい。殿下の馬車は玄関前に。」
「はっ!」
「ミア。いくよ。」
団員さんが踵を返し指示を伝えに走る。
ボク達はさっきの建物の玄関に向かうようだ。
歩いている間にも、そこかしこから団員さん達が集まって来てなんとなく整列し始め、ボク達が玄関前に到着する頃には完全に整列し終わっていた。
なんか体育大学の集団行動みたいにキビキビしていてカッコいいね。
ほとんど間を置かず、広場に豪華な…いかにも貴族用であろうという馬車が入って来た。馬車を引いている馬はジェットたちに比べると小さいが、それでも大きい。この世界の馬は総じてデカいんだろうか?
馬車はボク達の前で停まり、控えていた侍女らしき人達がドアを開けた。
さぁて、どんな子が出てくるのかな?
まず出てきたのは少し年嵩の女性。公女殿下…じゃないね。
そして、年嵩の女性の手を取って馬車から降りてきたのは…
10歳くらいの女の子。
ベルベットのような光沢を放つ濃い緑色のシンプルなドレスに身を包み、ゆっくりと馬車の階段を降りてくる。
短く揃えられた栗色の髪。
柔らかな目元。
艶やかに濡れる桜色の唇。
少し伏せられた眼は子供とは思えない程に艶かしい。
紛う方なき美少女だ。
ザっ!という音と共に団員さん達が跪く。
え、やば、ボクも…と跪きかけたら、エマに止められた。
あれ…いいの?無礼にあたったりしないの…?
「ようこそ、ルーチェ・トラスパレンテ様。」
エマが少し屈んで公女殿下に挨拶をする。
…と。公女殿下の頬が、ぷぅ~っと膨らんだ。
なんだなんだ?!
「そんな他人行儀はおやめくださいませ!」
あ…既知の間柄なのか。
「いや、でも公務だし…。」
「公務でも距離を取られるのは悲しゅうございます!」
…それは理解る。
「ミアお姉さまもそう思いませんか?!」
ボクに振るか!?
確かにたった今『理解る』とか思っちゃったよ?
思っちゃったけれど!どう答えりゃいいんだこんなの!
「そう…だねぇ…気持ちはわかる…よ?」
くぅ…!これでいいのか?ホントに?!
エマは…苦笑している。
だよね!
答え間違えたよね!
ここは窘めるのが正解だったよね!
ごめんね!
「ですよね!」
という声と同時に抱き着かれた。
ちょっと、公女殿下!?
「道中ご一緒出来て嬉しゅうございます!エマお姉さま、ミアお姉さま!」
100回突破記念!
超!番!外!編!
のりのりで書いていたら普段の倍のボリュームで、区切りの良い所まで進まなかったという…。続き…どうしようかな…。




