あっとらいぶらりー㉗
皆のいる前で、更にはそのデート相手のいる前で、お薦めデートスポットを第三者に聞くとは、なかなかぶっとい神経をお持ちですね?!
こういうのって他の人が居ない所でこっそり…っていうのが定番だと思ってたんですけれど満さんには当て嵌まらないんでしょうか?
…ああ、ほらぁ、図書委員の方々ドン引きしてらっしゃいますよ?
ちょっと、この空気どうしてくれるの?!
これ、答えて良いモノなの?!
ねぇなづな、これどうすれば…
ああ?!なづなも引いてる!すんごい困った顔してる!
いや傍目には笑顔なのだけれど、これは困った時にする顔だ!ボクにはわかる!ていうかボクにしかわからない!
因みに御冠の時との違いは口角の角度と眉の位置、かな。張り付いた様な笑顔で恐いんだよ、ホント。
「え…え~と、満さん?それは遥お姉さまと相談するものでは…?」
「え?!」
図書委員のお姉さまにやんわりと突っ込まれて本気で驚いているのが、また…。
いや、あの、嬉しいのは理解るのだけれどちょっと落ち着こうか?
ボクもね、その感覚には覚えがあるのだけれど…っていうか満さん、その時…ボクがやらかした時目の前にいたじゃん!ライブで目撃してたよね?!なづなが照れて撃沈したの見てたでしょ!あれ、結構面倒くさかったでしょ?!
今、まさに同じことしようとしてるのだけれど?
なんか舞い上がっちゃって暴走してる感が否めないよ?
こ、これは助言しておいた方がいい気がする…。
果たしてどこまで納得を得られるか、とても心配ではあるけれど。
「満さん、ちょっと2人でお話、良いかな?」
「う、うん。いいけど…。」
なづなが『2人で大丈夫?変なアドバイスしちゃダメだよ?ホントに大丈夫なの?心配だなぁ… 』という視線を送ってくる。いやぁ…”目は口ほどに物を言う“とはいえ、ここまで長文を送ってこなくても…信用ないなぁ。
…うむ。ここはその長文を読み取れる程ボク達の絆は深いって事で。うん、ポジティブシンキングでいこう。
そんな訳で、ボクは満さんを伴って皆から少し離れた位置、書架などには隠れない、けれど声は聞こえない、くらいの場所に移動する。
たぶん、正面から見据えて話すと説教臭くて警戒されるだろうから…横に並んで雑談風味に…。
「満さん、遥お姉さまとの初デート?に向けてね、気が逸るのはわかるのだけれど…ちょ〜っと、先走り過ぎかなぁ…って気がする…。」
「そ…そうかな…そんなつもりは無かったんだけど… 」
それはそうでしょうとも。
自覚してやってるわきゃないもんね。ボクも昨日そうだったもの。何時も通り振る舞っていたつもりだったからね。
でもさ、相手にとってはそうじゃないないんだよ。
2人きりならまだしも、みんなが居る前だと、グッと近くなった距離感に…なんていうか…照れ、とか?気恥ずかしさが勝っちゃって、どうしたら良いのかわからなくなっちゃうんだ。たぶんね。
「…そういえば遥ちゃん、お姉さま方が来てから、ちょっと恥ずかしそうだった…かも。」
ならいつも以上に、いつも通りを心掛けた方が良いと思う。いやまぁ、昨日失敗したボクが偉そうに言えるこっちゃないけれど…失敗談から学ぶ事もあるっていうね、そんな感じで受け止めてくれると有難いかなって。
「そっか…そうだね。私ちょっと浮かれてたかもしれない。」
だからさ、帰り道とか2人だけの時に、ゆっくり決めれば良いんじゃないかな。何処に行きたいか、何をしたいかって。
夏の祭典の事は2人の時に決めたんでしょ?
「うん。わかった!そうする!流石せりさんだね!」
何が“流石“なのかはサッパリわかんないけれど、ありがとう。
あ、あとお薦めスポットなんだけれど。
「何処か良い所あるの?!」
…おい、2人で決めるんじゃなかったのかい…
っと、コレは言わないでおこう。
「ん〜、なづなとデートした事ないから…よく知らないんだよね。」
「え?した事ないの?!」
うん。ないよ。
だって、ボクがなづなに告白したの昨日の朝だもん。
その前は、ずっとただの姉妹だからね。
「…嘘でしょ!?!」
う、嘘じゃないよ?
え?なんでそんな驚くかな?
てか、ちょっと声が大きいです満さん。みんなこっち見てビックリしてますよ?!
「だ、だって噂になるくらいラブラブで、去年から数々の伝説を作り続けている百合姉妹だ、って…!」
伝説!
百合姉妹!
誰だそんな事言ったの!
ホントにありがとうございます!
…うん、“ただの”はちょっと語弊があるかな?普通と比べたらかなり仲は良いと思う。でも、所謂恋愛的な感情を相手に示した事はなかったんだよ。
だからね、デートスポットとか調べた事も無いんだ。ごめんね?
「そうなんだ…知らなかった…。」
ま、さっきも言ったけれど2人でゆっくり決めようよ。決める過程だって楽しいに決まってるんだからさ。
「…だね。ありがとう!」
どうやら無事ご納得頂けた様で一安心です。
んじゃ、皆さんのところに戻りましょうか。
まぁボク達はそのまま帰宅するつもりなのだけれど。
満さんは、遥お姉さまの元へ嬉嬉と戻ってゆく。実に微笑ましい。
ボクは当然、なづなのところへ。
ちゃんと助言してきたよ~。
「ちゃんと出来たみたいだね。」
なんとかね。
ま、大した事は言ってないんだけれど。
満さんが落ち着いて言葉を聞いてくれただけ、だよ。
それで充分だったって事さ。
「そっか。それじゃあ私達もそろそろ…。」
そうだね、お暇しようか。思えば随分と長居してしまった。
帰って新歓祭のアイデア出しとかもしないとだし、今日ボクが寝てた間の事も共有しておかないといけないしね。
あ~…あと、ちょっと体動かしておきたいなぁ…ひょっとすると精神が不安定なのは、運動不足なのも有るんじゃないかなぁなんて思ったりするんでね。少し疲れるくらい体動かして、汗をかけばスッキリするんじゃなかろうか、と。
…なんとなく、そう思っただけなのだけれど。
よし!そうしよう!久しぶりに道着、引っ張り出すかぁ!
「では、お姉さま方。」
「私達はこれで失礼致します。」
「あら、もうお帰り?」
「はい、少々やらなければならない事も御座いますし、あまり居座ってもご迷惑かと。」
「そう、またいつでも遊びにいらっしゃいな。」
「そこは『またのご利用をお待ちしております』、じゃないの?」
「あぁ…図書室的には、それが正しいわね。」
確かに。図書室は試験勉強や何やらで、ちょくちょく利用させてもらう事になりますしね。以降もよろしくお願いします。
それでは改めまして、お先に失礼致します。
お約束のカーテシーでお暇の御挨拶。
さて。帰るのはいいのだけれど、バスの時間見てないんだよね…直ぐにあると良いなぁ…。
「大丈夫でしょ。時間が空くようなら坂の下のバス停まで歩いたって良いし。タイミングだ悪かったら、そのまま歩いて行っちゃえば。その方が早いかもよ?」
ふむ。それはその通りだね。
図書室のある文化棟からミルクホールのある生徒館へ、二階に上がり渡り廊下を通って中等部棟へ、と。実はこれがなかなかに遠回りなんだよなぁ。
文化棟か生徒館の一階出入口から出ればロータリーは目の前なのに…下駄箱まで行かないと靴が無い…と。
こればかりはねぇ、構造上致し方なし。
昇降口まで来てしまえば、あとはロータリーでバスが来るのを待つばかり、と。
「そうだ、なづな。後で久しぶりにさ、ちょっと組手付き合ってよ。」
「ん、いいよ。無限?インターバルあり?」
「あり、で。」
「お。後悔してもしらないぞ?」
なづなは瞬発型だから短期決戦型。ボクは持久型なので、長期戦型。
インターバルありルールだとほとんど適わない。でも汗を流すのが目的なので勝ち負けはどうでもいいんだ。
なづなとの組手はとても気持ちいいし。
…むぅ、なんか早く体動かしたくなってきた。
やっぱり運動不足だったのかな?
ボク達がロータリーのバス停に着く頃、ちょうど正門に滑り込んでくるスクールバスが見えた。
ナイスタイミング。
いつもの様にバスに乗り込み、定期券をピッとかざして。
いつもの席へ。
…校舎に宿る精霊さん。
また、明日。




