問題篇
「違う、僕はやってない!」「私だって違うわよ」
白昼に繰り広げられる男女の諍いに、道行く人が眉をひそめる。実は、彼らには万引きの容疑がかかっていた。2人が出入りしたアパレルショップから、小物入れとアクセサリーが盗まれたのだ。
「落ち着いてください。店員は、小物入れとアクセサリーが盗まれたのは白いTシャツが陳列棚からなくなった後だと証言しています。この1時間で白いシャツを購入したのは貴方たちだけなのですよ」
捜査三課の古館警部が状況を説明するが、容疑者2人は不満そうに顔をしかめている。
「犯人と思われる人物が購入したのは、XLサイズのシャツでしたね」
そっと耳打ちした私に、警部は小さく頷く。
「正面から攻めても言い逃れをするでしょうから、遠回りに探りを入れたいのですが」
私は容疑者たちを見比べる。XLサイズなら、Lサイズよりさらに大きいはずだ。男性のほうが女性よりやや背丈があるが、彼が盗人なのだろうか。そんな単純な話ではない気もする。
容疑者の女性が腕時計をちらと覗き込む。文字盤がローマ数字の洒落たデザインだ。私の頭に何かが引っかかった。
「警部。ちょっと確認したいことがあるので盗難被害に遭った店に行ってきます」
3人を道端に残し、駆け足で店に向かう。店員にあることを訊ねた私は、警部らの待つ場所に舞い戻ると断言した。
「犯人の目星がつきましたよ」
Q:男女のどちらが盗人でしょうか?




