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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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94/120

94:後は風邪をひいても安心して休める社会を。

 一通り回った後、部署に戻ると内村課長が痛い全身を我慢しながら内勤仕事に励んでいた。どうやら俺が一番遅かったらしく、他のみんなは帰ってきて報告書作りに入っている。


 とりあえず市中で風邪が流行っている様子はないこと。競艇場、競馬場、その他賭け事に関する場所を数ヶ所回ってきたが、普段通りの様子だったこと。そして特記事項として、異能力者を集めているとされる竜円寺竜彦と多摩川競艇で出会ったこと。あっちも風邪を引いていて、どうやら向こうの組織も風邪っぴきが多くて困っているらしかったこと。


 言われた通りに賭けて当たったことは書かなくていいだろうな。これはお互いの組織の利益誘導や供与関係に問われる可能性がある。黙っておこう。


 日報を書き上げて提出。ついでにちゃんと見ておいてほしいことがあることを付け加えて内村課長にデータを送る。


 内村課長は俺の一言ですぐに報告書を見、すぐさま動ける全員を集めた。緊急会議のお時間だ。流石に動ける人数は少ないとはいえ、早いうちに共有しておくべき情報でもある。


「競艇場で出会ったのは確かなんだな、進藤」

「風邪ひいてたのも確かですね。あれが演技じゃないなら」


 内村課長はふうむ……といった感じで報告書を眺めると、俺に向かって確認を始める。


「今回は……信用していい情報だと言えるんじゃないですかね。本人がマスク姿で咳き込み、仲間も不具合が出ていたがそういう理由だったのか……と会話を交わしましたから」

「なるほど。こっちの手の内を晒したわけか」


 少し内村課長の語気が強まる。敵対するかもしれない勢力にわざわざこちらが半壊している実情を知らせるのはどうなんだ? ということだろう。


「そこまではいいませんでしたよ。ただ、異能力者に風邪が流行っている、とだけ伝えただけですから」

「ふむ、こっちもほぼ全滅状態である、とは伝えてないわけだな」

「そこまで教える義理はありませんからね。ただ、風邪には気をつけろお大事にな、ぐらいの挨拶で済んだと思っています」


 実際相手が風邪ひいてるからといって捕まえる理由もないし、今何かをすることはできない。そこを踏まえても、情報だけでも手に入れられたのはまだ良い方向性だったと思っている。


「まあ、ばれてるかどうかはともかくとして、向こうも動き回れる状況じゃないことなのはわかった。もしこれが向こうの異能力者の仕業なら向こうは伸び伸びと勧誘作業を始められるんだろうが、肝心要らしいの竜円寺がその有様だということは、向こうの組織でも大変なことになってるのは目に見えてくるな」

「風邪の流行が一段落するまではあっちも動けない、ということはわかりましたからしばらくは幸運か不運か、事件のようなものは起きないと考えてもいいかもしれませんね」

「なるほど。で、今日はいくら儲けたんだ? 」

「今回は電車賃ぐらいでしたね……あ」


 仕事中に競艇してたのうっかり話してしまった。まあ、浄化ついでに入場料を払う意味でもちゃんと賭けていることも仕事の一環ということで納得してもらおう。


「そうか。まあ、お土産がなかったのが減点だな。もしくはそこまでは儲からなかったというところかな? 」

「薬師如来のお使い様にもお話を聞いてみたりはしたんですが、未知の風邪、ということらしいですし抗体が出来て風邪が効かなくなるようになるまで時間が解決するのを待つしかないかと思いますね」

「いてて……まあ、重篤化している職員がいない辺りを考えるとインフルエンザよりはマシ、ということだろうな」


 まだ腰の痛そうな内村課長にフィリスが回復魔法をかけている。あれ、症状緩和以外に何か効果あるのかな。流石に治癒魔法で一瞬で治るような風邪ならそもそもこれだけの大事にはなっていない。


 そもそも、風邪というのは症状があってこその風邪である。鼻喉器官に何らかのウィルスなんかが感染して起こる症状を風邪といってるだけであって、特定のウィルスが起こす症状なら風邪ではなくなんとかウィルス感染症、と名前が付く形になっているはずだ。


 世の中にはよくわからないけど症状がそうだから風邪、という所見を出されることは少なくない。今回も、もしかしたら異能力者だけが受け付けるウィルスのようなものが発生して、それを受信してしまって風邪をひいた、とみるべきなんだろうな。しかし、厄介な風邪もあったもんだな。


 毎年流行ってるようなら今年も風邪が流行っているから異能力者は注意な、と事前に判別をつけることができるだろうから、今年初めてこういう現象が観測された、ということでいいんだろう。確認しておくか。


「念のため聞くんですが、同じような風邪が流行したってケースはないんですかね? 」

「聞いたことはないな。今年から流行りだしたのか、それとも……そういう能力者が出たのか」

「そういえば、他の都道府県に対して聞き取りをしたはずですが、そっちのほうはどうだったんですかね。日本全国の異能力者の間で流行ってるとしたら日本の異能力者に対するテロって可能性も出てくるはずですが」


 そういえば他の都道府県にも問い合わせて確認を取るという作業を昨日したはずだ。その結果をまだ俺は聞いてない。そっちの路線はどうなんだろう?


「その話だが、どうやら東京周辺だけでだけ流行っているらしい。隣の神奈川や山梨、千葉、埼玉、茨城なんかにも問い合わせてみたが、そっちでは少し流行ってるらしいが、京都や奈良、福岡のほうではまだ流行っていないらしい。どうやら地方性のある病気であることは間違いないらしいが、電車や車での移動で人通りの多いところで異能力者同士が出会った場合、感染の可能性はあるだろう。一応注意喚起ということで各所には連絡を入れた。もし被害が出ても特効薬みたいなものはないから市販の風邪薬と医者で対応してもらうように伝えてある。このままいつまで感染拡大が続くかは依然不明だが……まあ、今は対症療法で挑むしかないってところだな」


 うーん。こういう時に治癒スキルが効果的ならいいんだろうが、今回の件はフィリスの手にも余るようだからな。フィリスの治癒魔法でどうにもならないなら異能力ではなく、自己免疫力や医薬品に頼るしかない、というところなんだろうな。


「とりあえず、来れるものは来る、という形で課を回していくしかないな。熱と関節痛が続くものは無理せず出勤させないようにして、咳だけならば出勤してきてもらうことになる。この間全員に身体強化について教えてもらったのが裏目に出てしまった形になるが、こんな理由で弊害が出るとはだれも予想はできないだろうからその件については一切追求しない。むしろこれで職員のほとんどがきちんと異能力者として認められている、という証拠にもなった。一般人にうつらないらしいというところも含めて……ん、じゃあなんで鈴木は平気そうにしてるんだ? 」


 そういうと、鈴木さんに視線が集まる。加護がある俺とフィリスは置いといて、鈴木さんは唯一症状が出ていない異能力者ということになる。いったいなぜ彼女だけは無事なんだろう。


「そういえばそうね。なんでかしら? もしかしたらだけど、私の体にそもそも細菌が付着していてそれが周りに感染して、それが拡大したっていう可能性は考えられるわね。最初の一人が私で、私から感染したから私自身は保菌者でも何ら問題ない結果になっているとか。まだまだ研究が必要な話なんだろうけど、とにかく私だけ感染してないってのには何らかの理由があるはずよね。そこに活路を見いだせないかしらね」


 例えば血清とかそういう方向性かな。とりあえず重篤者対策の一つとして考えておくことにしておけばいいだろう。


「まあ、とにかく時間が経つのを待つしかないな。しばらく続くってことで今回は納得しておくしかないだろう。引き続き少人数で回していく分、今無事で動いてる奴らには後で年休取りやすくなるように調整するからしばらくはちょっとブラックになるかもしれないがよろしく頼む」

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
一度かかれば免疫が付くタイプだってんなら今後の心配はなくなるんですが原因はなんなんでしょうねえホント
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