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帰還勇者の内事六課異能録  作者: 大正


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45/120

45:詰問

 再び訪れた会議室の上座に相変わらず久我警部が座ると、フィリスは一番下座の俺の隣に座り込んだ。相変わらず山本巡査部長はノートパソコンを開いたまま、議事録の記録役に徹している。袴を直して髪形をそろえ、キチッと椅子に座る様はお奉行様のようである。


 相変わらずきちっとそろえられたオールバックの髪と眉間の皺が風格を思わせる。この人いくつなんだろう。内村課長が俺の横で咳払いし、フィリスが内村課長の反対側。フィリスの青い目は緊張で揺れ、ちょっとおぼつかない様子だ。


「フィリスさん、でよろしかったですな。将門塚の封印を施したのはあんたさんやと聞きました。現地を確認したんやけども、瘴気の欠片もない。あれだけの観光客が集まる場所で、なぜそんな清廉さが保てるんです? どんな封印を使ったんですか? 」


 京都弁の柔らかな響きに、鋭い探りが潜む。山本さんがノートパソコンから目を上げ、フィリスをじっと見つめる。俺の背中に冷や汗が滲む。フィリスの封印は、異世界の聖女の技術だ。バレたら、カルミナの魔王の過去まで掘り返されるかもしれない。


 フィリスは資料を握りしめ、深呼吸する。


「私は…イギリスの教会で、父から祈祷と自然の調和を学びました。瘴気は心の穢れに似ていて、聖なる光で癒すことで清めます。将門塚では浄化魔方陣を展開し瘴気を完全に祓いました。浄化と共に結界みたいなものが張られているのは浄化魔方陣を展開した際に、補助効果としてしばらく瘴気が寄り付かないように予防措置を行うのがこちらのやり方でして……そのおかげだと思います。」


 声は震えつつも聖女らしい穏やかさが漂う。内村課長が練った悪魔祓い設定、ちゃんと活きてる。俺は内心で「ナイス、フィリス! 」と叫ぶが、久我警部の目が細まる。


「祈祷と光、ですか。日本の言霊や結界とはずいぶん違うんやねえ。だが瘴気がゼロとは異常や。まるで……異世界のもののような匂いがする」

「データでも、将門塚の瘴気濃度は短期間で急上昇し、封印後に急落。自然の暴走にしては不自然です。外部の魔力、たとえば、強大な存在の干渉はなかったですか? 」


 山本巡査部長の言葉に、会議室の空気が凍る。フィリスがテーブルの下で俺の手をぎゅっと握ってくる。彼女の指先が冷たい。俺は軽く握り返し、小声で「大丈夫、フィリスならいける」と囁く。


「久我警部、山本さん、もし…私の封印を直接見ていただければ、納得いただけるかもしれません。魔方陣を、今ここで展開します」


 え、マジで? 俺と内村課長が目を合わせる。フィリスは立ち上がり、両手を胸の前で合わせ、目を閉じる。会議室に静寂が広がり、彼女の周りに淡い青白い光が揺らめく。光が床に円形の紋様を描き複雑な幾何学模様が浮かぶ。浄化魔方陣だ。空気が澄み、俺の肩の重さが少し和らぐ。久我警部が息を呑み、山本巡査部長のタイピングが一瞬止まる。


「これが…私の封印の基盤です。将門塚では、この魔方陣で瘴気を清め結界を強化しました。観光客の穢れも、外からの瘴気も、すべて祓います」


 フィリスの声は落ち着きを取り戻し、聖女の威厳が漂う。久我警部がゆっくり頷く。


「確かに……京都の結界に通じるところもあるがどこか異質やな。この光、まるで魂を洗うようや」


 だが、久我警部が続ける。


「フィリスさん、立派な魔方陣や。だが、将門塚の瘴気が漏れ出した原因はまだ解明されておらしまへん。ただの時間経過による封印劣化による穢れの発生ではではない可能性がある。たとえば外部の魔力、意図的な流入があったとしたら、どう思う? 」


 フィリスが一瞬目を泳がせる。俺も少しドキッとした。久我警部はそのスキを見逃さず、言葉を続ける。


「もし外部からの干渉があって封印が解けかかっていたとしたら、どうやろうか? それでもあんたさんの浄化魔方陣とやらで抑え込むことが出来たと言えますか? 」


 フィリスが目を閉じ、再び口を開く。


「久我警部様、瘴気の流入……確かに、将門塚で感じた力は異常でした。でも私の魔方陣は、どんな魔力も清めます。もし外部の干渉があったならそれは私の光で消えたはずです。なので今からその原因が何処にあったのか、というのを感じ取るのは難しいかもしれません」


 フィリスナイスカバー。ついでにあれやこれや根掘り葉掘り聞かれる可能性もある程度線を消していけたことになる。その調子でいってくれ。


 俺がすかさずフォロー。できるだけわかりやすいように思考誘導をしていこう。


「フィリスの技術は、イギリスでも特異な方の力らしいんです。観光客の瘴気も防ぐし外部の魔力もシャットアウト。現地で確認した通り、現状としての将門塚に対しての問題はないですよね? 」


 内村課長も「うちの課は毎日瘴気と戦ってるんで、フィリス君の力は貴重なんです。外部協力者として大いに助けになっております」と助け舟。久我警部は「ふむ」と唸り、山本さんがノートパソコンに何か打ち込む。なんとか、質問を逸らせたか?


 だが、山本さんが静かに言う。


「内村課長、進藤さん、フィリスさん。奈良のデータでは、将門塚の瘴気は孤立した事件ではない可能性があります。全国で、似た急上昇が観測されている。連鎖の一部なら、背後に何か…大きな力が動いているかもしれません」


 その言葉に、会議室が静まり返る。カルミナの魔王の過去、異世界の敵……? 俺たちの秘密が、こんな形で絡んでくるなんて。フィリスの手が、俺の手をさらに強く握る。


 久我警部が立ち上がり、袴を直す。


「今日はここまでや。フィリス君の魔方陣、確かに見事やった。だが、瘴気の連鎖は見逃せん。警視庁とも協力し、監視を続ける必要があるな」


 山本さんがノートパソコンを閉じ、「本日の議事録は後でネットで送りますのでデータ共有をお願いします」と一礼。内村課長が「もちろんです」と笑顔で返す。


 部屋を出ると、聞き耳を立てていた同じ課の連中の中にカルミナも居た。


「こんな小さい子も手伝いしてはるんですか。警視庁は人材豊富でよろしいですなあ」


 久我警部がチクリと針を刺しに来る。その言い方は人手がそんなに足りないのか? という意味の京都弁だと思われる。


「あたし、これでも成人してるのよ! レディに失礼よ」

「それは申し訳ない。失礼な言い方をしてえろうすんません」


 久我警部がカルミナの頭を撫でて、更にカルミナのボルテージを上げていく。上がったボルテージを下げるべく、近藤さんがカルミナの口に一枚ポテチを咥えこませると、ぱりぱりと食べているうちに大人しくなった。成人してる女性がポテチ一枚で大人しくなるのはどうなんだろうな。


「それでは失礼します。今回は大事にもならんかったということで上にも報告を上げておきますので、どうぞよろしゅうに」

「失礼します」


 二人は警視庁から去っていった。終わったー! という空気に包まれる内事六課。


「カルミナが大人しくしてくれていた分だけ素直に終わったな、という気がする。ありがとうなカルミナ、そして余計な設定はあまり要らなかったな。念のためとはいえ用意したものが十全に活用されなかったのは惜しいが、今後のためにもその設定は引き続き使っていくことにしよう」

「えー、まだやるのこれ? 」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
袴警部、ちみっこだと思うなら事案ですよそれ 懲戒免職になれ
取り敢えずセクハラで人事管理に訴えましょう。
とりあえず面倒事は帰りましたか カルミナにちょっかいかけ始めた時はヒヤッとしましたわ
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