030 深淵より姫が呼ぶもの
「やあっ!!」
「くっ……!」
私が選んだのは、ステゴロ。
ステゴロとは武器を持たずに己の拳のみで戦闘を行うこと。もちろんただの負け覚悟の特攻じゃない。論理的理由があっての特別攻撃だ!
「な、なに? 小雛お姉さん焦ってる?」
「もちろん! ユナちゃんは強い。後ろに控えている真紀さんもどう動くかわからない。だけど目の前のユナちゃんを倒さないことには、phoenixの勝利はないから!」
「なるほどね!」
ユナちゃんも蹴り返してきた。その蹴りは素人同然。どうやらフルダイブ型の格闘ゲームはやったことないみたいだ。
私が決めた作戦としては、「絶対に距離を取らない」こと。ユナちゃんの攻撃は確実に魔法陣を使った罠だ。つまり、距離を最短まで詰めることで魔法陣を作る暇を与えない。
後は、ゲーム歴が単純に長い私のフィールドに持って来させるだけだ!
「うりやぁ!」
「うっ……かはっ!」
ユナちゃんのパンチをかわし、ユナちゃんの懐に潜り込んだ。頭と肩でユナちゃんの腹部を押せば肺を中心とした内臓を圧迫して、呼吸が苦しくなるはず! ……私が小さいからこそ取れる作戦だ。コンプレックスを武器にするのは癪だけどね!
ユナちゃんは呼吸もままならなくなってその場にうずくまった。ペットにしたいとかドSなこと言ってたから、この立場逆転は相当な屈辱だろう。
気になるのは真紀さんだ。なんでここまで動いてこない? ……今気にしても仕方ない。ユナちゃんにトドメを刺す!
私はサンタクロースの白い袋を持って、ユナちゃんに振り下ろした。
物理ダメージが入る白い袋は凶器となってユナちゃんに襲いかかり、そのHPを全損させる。
「あーあ……負けちゃった」
「もうユナちゃんとは戦いたくないよ。今の作戦だってもう通じないだろうし」
「……絶対にペットにさせるから。犬耳つけさせてそのサンタ服、脱がせてやるから」
「こ、怖っ。できるだけもう私の前に現れないでね」
バイバーイと手を振って、ユナちゃんの退場を見届けた。
見届け人は私だけじゃない。
「お見事です、小雛さん」
「……どうして手を出してこなかったんですか?」
「必要がないから、です」
「どういう……」
「大将戦と行きましょう。『深淵より姫が呼ぶもの』」
真紀さんの目の前に黒いモヤがかかり、その中から3人の兵士が現れた。
「あ……あぁ……」
1人は初老の執事。
武術の達人のように見える。
1人は30代くらいの男性。
私もよく知る、元陸上選手だ。
そして最後の1人は中学生くらいの少女、工藤ユナ。
トラッパーと呼ばれる罠のプロフェッショナル。
「この3人は人格を持たないコンピューターMOBです。ですが、実力は3人の力を反映している。さぁ、どう踊ります?」
私は歯を噛み砕くほどの力が体に入った。




