025 出陣の時
「真紀さま、先鋒隊50名の全滅を確認しました」
執事服を纏い、気品を漂わせる老兵は自らの主人に顛末を報告した。
その主人は、小さなため息を吐く。それだけで場の空気が凍りつくようだった。
時、ギルド戦開始から1時間後。
所、滅びの国保有のエリア35。
ここまでの重々しい空気は、【滅びの国】発足以来初だと、斉藤は冷や汗を背中に蓄えた。
「ふぅ」
姫の、一挙手一投足。
それがこの大々的なゲーム、『マイ・ナンバー・オンライン』の情勢をひっくり返すだけの影響力を持つということを、疑う者は1人もいなかった。
「先鋒隊から得た情報は?」
「ありません。みな即死したものと思われます」
「……3賢者、前へ」
「なっ!?」
真紀の発言により、エリア35にどよめきが生じた。
そんな一般兵士とは裏腹に、3賢者と呼ばれた者達はすまし顔で真紀の御前に現れる。
1人は初老の執事、斉藤。
武術の達人で、ゲーム内でも武を用いて戦う生粋の職人戦士。
1人は30代の男性、山岸。
元陸上選手で、ゲーム内での速さは最速とも言われている。
1人は中学生くらいの少女、工藤ユナ。
トラッパーと呼ばれる罠のプロフェッショナルで、心理戦にも長けている。
これが滅びの国の幹部であった。
「あなた達3人に命じます。エリア1を確保しなさい」
「かしこまりました。して、サポートは誰が……」
斉藤が問うと、その主人はおもむろに立ち上がった。
斉藤の額に、汗が流れる。
「サポートは、私がいきます」
姫の出陣。
それは、滅びの国を揺るがす大事であった。




