024 烏合の衆
ふわふわ食パンはかなりの高級感を漂わせている。
おそらく昔流行った高級食パンってやつだろう。でも今はそんなことどうでもよかった。
「由鶴! そっちは削れそう?」
『50全部は無理だよ。スタンバイしておいてよ?』
「了解……」
50人も全部狙撃で倒せなんて無茶は言えない。
「翼さん聴こえますか? 由鶴の狙撃音と同時に敵はまっすぐここを攻めてくると思います。その時は宝石魔法でお願いします!」
『わかりました。小雛さんは?』
「とりあえず、食パンを食べます」
もちゃっとかぶりついた。口の中の水分が奪われ、ジャムか牛乳が欲しくなる。
なんとか勢いで食パンを食べ切った瞬間、体に異変が生じた。
「何これ……」
うっすらだけど、体が光っている。もしかしてあの食パンの効果なの?
『こちら由鶴。敵が射程圏内に入った。撃つよ』
「うん、お願い!」
パン、パンと、トランシーバーから狙撃音が聞こえてきた。
でもしばらくすると、威勢のいい狙撃音が鳴りを潜める。
『くっ……ダメだー! いったん回復挟むね』
「わかった! 翼さん!」
『お任せください』
長い黒髪を風に靡かせた翼さんは、ビルの屋上からパラパラと宝石の雨を降らせた。
あのスキルは私も見たことがない。でも何かをやってくれる。そんな期待感があった。
『ジュエル・レイン』
突如、私より300メートルほど先で炎・水・風・雷が蠢いて敵を持ち上げていた。
属性ごちゃ混ぜの竜巻は、目視できる限りでは20人ほどをぐちゃぐちゃに引き裂いていた。
あんなに美しい顔をしていて、冷酷なスキルを躊躇いなく使う……翼さん、恐ろしい方!
由鶴・翼さんの二重構造による防衛ラインも、人海戦術の前には100%の成果は得られなかった。
運か実力か。数人だけこちらに向かって走ってきていた。
「うおおお、滅びの国ばんざーい!」
「真紀さまに勝利を!」
「プレゼント・フォー・ミー!」
白い袋に手を突っ込んだ瞬間、違和感に気がついた。
私を包む淡い光が、袋の入り口に集結してる!?
掴んだものを引き抜いたら、大きく、荘厳で、いかつい剣が出てきた。
聖剣……なんて言葉で表現するのが正しいだろうか。
少なくとも他のゲームだったらSSR武器に認定される武器の見た目をしていた。
そうか……あの食パンは、次のアイテムを激レアにするためのものだったんだね。
「聖剣、いってこーい!」
剣の名前も技の名前も知らないので、とりあえず剣を重く縦に振ってみた。
次の瞬間、
もはやそれは天変地異。
第二層の都会の床、コンクリートすらもすべてを巻き込んだ大災害が目の前に起きた。
「うわわわわっ!」
『ちょっと小雛!? なにやってんの?』
「私にもわかんないよー!」
チートとかそういうレベルじゃないって!
天変地異が鎮まると、それでもまだ1人生き残っていた。といっても虫の息。しばらくしたらHPは全損するはずだ。
「申し訳ありません斉藤さん……先鋒隊、全滅です」
しまった! 敵もトランシーバーを!
情報が筒抜けちゃったか。
第二回ギルド戦、開始から1時間。
残り、1時間。




