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10 スパイ作戦、それとハンニャルモ

 部屋を後にしてから、柄池はフェストスのいる部屋を探していた。

 アジト自体はそう広くはないのだが、慎重な行動であるため一つ一つの行動に時間はかかってしまう。

 柄池達は薄暗い通路を慎重に歩いていく。


「こういう潜入捜査って慣れないからな……元の世界でもあんまりやってないし」


「私も。スパイなんてやったこともないもん」


「まあ、こういう経験が豊富な人なんてめったにいないからね」


 愛川もスパイなんて経験がないと小声で話すと、柄池もまた小声で返した。

 そちらの経験豊富な人はあまりにもかけ離れた環境であるので、めったにいないだろう。

 当然、柄池も元の世界で潜入はやったことはない。


 すると、後ろから声がかかる。


「お困りのようだね」


 腰に布を巻いた緑の髪の男性から声がかかる。

 柄池なりに警戒はしていたが、それでも後ろをとられていた。


 只者ではない男だと分かる。

 すぐさま、柄池は男性との距離を離して、男性からの反応が出る。


「おっとおっと。敵じゃないよ俺っちは」


「じゃあ、何者なんだ?」


「俺っちはドルトスって名があるんだ。さらわれたオークがいるんで、俺も救いに行こうってことでね」


「ってことは、俺達と目的は同じか。俺達も実は攫われたオークを救いに来たんだよ」


 男性の名、ドルトスは名乗りつつ目的を話して、柄池もまた目的は同じと言葉に出す。

 愛川は遅れて、柄池の元へと寄ってきていた。


 また、ドルトスの容姿はナイフや小さいポーチなどの軽装備の上に目立たない色の服装でもあった。

 そのことから、気になることが思い浮かぶ。


「やっぱりね。こそこそやっていたから、大体俺っちと同じ目的とは思ったよ」


「見た感じ、潜入捜査は得意と見てもいいのかい?」


「そういうわけさ。潜入はかなり慣れているからよ、なんなら、俺っちがオークを探すまで先頭を任せられてもいいんだが」


 気になったことに対して柄池は質問すると、ドルトスは肯定するとともに潜入捜査を助けると話す。

 ドルトスを潜入に慣れている人物と考えていて、助けてくれないかと考えていたが、理想的な展開になってくれて嬉しいことである。


「じゃあ、ドルトスさん。お願いします」


「ほいほいよ。俺っちに同行ということね、任せなよ」


 柄池は手を伸ばして協力を依頼すると、快くドルトスは握手をする。

 これにて一時的だが、仲間が加入したことになった。

 続けてドルトスは話す。


「あと、俺っちは鼻が利くからよ。オークを探すのは任せな」


「え? 本当ですか? それなら早く見つけられそうだ」


 ドルトスからの思わぬ力の話に柄池はありがたみをかみしめた。

 柄池と愛川だけではそう簡単には見つからない可能性もあって、ドルトスの加入は大いに助かる。




 それから、ドルトスを先頭に潜入捜査をしていく。


「……でよ。お前はいつまで起きてんだー! って走ってくる人型植物もいるんだよ」


「ほうほう」


「そいつがすごすごでよ。高い建物であっても壁を走ってくるんだよ。話だけだと笑えるけど、夜でもどこまでも追いかけてくるから実際にはかなり怖いってよ」


「そんなモンスターもいるんだー」


 ドルトスは戦闘を歩きながらハンニャルモとの名前のモンスターについて話をしていて、愛川は関心を言葉にする。

 潜入という割にはかなり気の緩んだ空気であった。


「いや、本当はいないよ」


「嘘!? いないんだ!」


「わるわるでごめんよ。知らない救済者をちょっとだますのも面白くてよ、ついな?」


 愛川は嘘に驚き、ドルトスは笑いながら謝る。

 空気を和ますことは嫌ではなかったが、ただ柄池は潜入中に会話をのんきにすることに疑問があった。


 見張りがうろついているかもしれないのに会話をすれば察知されてしまう。

 そこは不味いであろう。


「ドルトスさん。一応潜入しているんですけど、こんなことで大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。このアジトには見回りが二人一組しかいないから、これくらいの会話問題ないのよ」


「そうみたいですけど……それでばれては」


「そう心配はいらんよ。なんせ、この部屋に捕まっているからね、オークは」


 柄池の心配の言葉を受けて、もう見つかったとドルトスは話す。

 まさかの展開に驚きがあった。


「え? もう見つかったんですか?」


「おうよ、本当の本本よ。オークの匂いがあの部屋からするんだ。ちょっと待ってなよ」


 柄池の疑問に、匂いという証拠を言葉に出してドルトスは肯定する。

 更に彼は部屋のドアへと向かって、そっと開けてから覗き込む。


「間違いない。オークが捕まっている。しかも、そのオーク以外は誰もいない」


「助けるなら、今ですね」


「おうよ、バリバリのいいタイミングさよ」


 柄池の確認にドルトスは笑顔で肯定する。

 その言葉を聞いて、すぐさま部屋へと入った。


 そこには縛られた上に口もふさがれたオークが座っている。

 間違いなくフェストスだ。


「今縛りをほどくから」


 そう言って柄池は近づく。

 愛川もまたこちらの後に続いてきた。

 縛りに手を伸ばすと同時に、柄池は声も出そうとする。


「さあ、ここから逃げますよ」


 柄池の指示。

 フェストスは安堵どころか不安そうな眼をしていた。

 さっきも見たような眼である。


 そう考えていると、柄池の後ろから誰かが走って急接近をしてきた。

 フェストスは目を大きく見開いていた。

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