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昔滅びた魔王城で拾った犬は、実は伝説の魔獣でした~隠れ最強職《羊飼い》な貴族の三男坊、いずれ、百魔獣の王となる~  作者: あまうい白一
第二章 田舎貴族の羊飼い、街とギルドへ赴く

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アルトにとっての日常

汗をかきながら休憩小屋にやってきたエルフは、青年団の副代表を務める者だ。


「どうしました?」


「いえ、その、ここの土、硬くてなかなか掘り返せないんです! ですから、身体強化ポーションの使用許可がいるかと思いまして」


「え……? どういうことですか?」


 強化ポーションは身体能力を引き上げるが、その用途はもっぱら、魔物に襲われたとき対抗したり逃げたりするためのものだ。

 

 畑作業に使うということはあり得ないことだ。しかし、


「あっちを見てください」


 そう言われ、デュランタはエルフの青年団が鍬を振っている場所を見る。

 

 休憩小屋から少し離れたそこは、耕される前の、ただの平地だ。だが、

 

 ――ガギン!!

 

 と、重たい音を立てて、鍬が弾かれているのだ。

 

 力が入っていないわけではない。振るう勢いは早いし、弾かれた後、青年団の面々は、手をしびれさせている。

 

「岩に突き立てようとしているみたいですよ、これ」

 

 デュランタも近くにいって地面を軽く拳で小突く。

 感触は土だが、拳は全くめり込まない。


「……確かに、これは……硬いですね。アルト様、どうやって耕したのですか?」


 問うと、アルトは、意外そうな顔をして、


「どうやって……と言われても。どうにか力業で」


 休憩小屋の傍らにたてられた鍬を握って、


「このように」


 ――ドゴッ!


 振るった瞬間、鈍い音がした。

 まるで、重たい岩が落下するかのようなそんな衝撃が、アルトの振るった鍬の先から走ったのだ。

 

 とんでもない力が振るわれたのが分かる。竜と渡り合っていたのだから凄まじい膂力であることは分かっていたが、逆に言えばそれほどの力がなければこの地は耕せないのだろう。

 

 身体強化ポーションを飲めば少しは手伝えるかもしれないが、そうだとしてもポーションの量は足りないだろう。なので、

 

「……すみません。アルト様。我々の今の装備では土をほぐす作業ができなさそうなので、種植えなどをやらせてもらえますか?」


「あ、了解です。向こうは、俺が一度耕しているので、すぐ作物を植えられそうな場所になっているので。そっちに案内します」


「ありがとうございます。お世話になりっぱなしで」


「いえいえ」


 と、話していると、


「代表――!」


 向こうの畑で収穫作業を手伝っていたエルフたちから声がした。


「今度はなんです?」


 と、そちらを見ると、


「ここの雑草、モンスター化しててやばいです! 気を抜いたら、普通に攻撃食らいます!」

 自分たちと同じような背丈の草から、触手の鞭をふるわれている者たちがいた。


 畑を魔物が襲いに来るのは時折あるが、この地は、雑草がモンスターになっているとは。


「……これが、この地の日常なのですか、アルト様。良くご無事でいられますね」


「あはは……。まあ、慣れと、仲間たちの協力あってこそです。ともあれ、口頭説明以外にも、実際に触れてみながら、色々お伝えできればと思います」


「何から何までお手数おかけします……!」


 デュランタは、この日、この地に対して理解を深めることに専念することを決めた。

【お読み頂いた御礼とお願い】


 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。

「面白かった」

「この先が気になる」

「羊飼いが、最強になるの?!続きが読みたい!」


 少しでもそう思って頂けましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のポイント評価、そしてブックマークの登録をして頂けますと、作者のモチベーションになります!


 また、お陰様で、書籍化が決定しました! 

 レーベルは講談社ラノベブックス様になります。

 本当にありがとうございます!


 今後ともどうぞよろしくお願いします!


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