協力者への説明開始
農場の休憩小屋で、俺とシアは青年団の代表を務めるデュランタや数人のエルフに向けて説明を行っていた。
「なるほど。この魔王城跡地の農場には、作物を急速に成長させるほどの魔力があるのですね」
「ええ。3か月に一度収穫する普通の作物ですと、何倍かの速度で育ちますね」
「それはありがたい話ですね。こちらとしても、食料が早めに確保できるというのは助かる話ですし」
ドーズが倒れて数日の話を聞いてみたが、エルフの畑はいまだ使えないらしい。
……アディプスの診断通りだったわけだね。
見た目は元通りに近づけたものの、雑草がわずかに生えるくらいで、種を植えても芽吹くまではいかないそうだ。ただ、すぐに枯れ亡くなっただけでも進歩らしいし、その辺りは、今後の復旧次第ではある。
それがなされるまでの間、この魔王城跡地でエルフの里の皆が食べ物に困らない程度に、作物を作れればいいらしいが、
「土地はどの程度必要です? 直ぐに必要なら、既に耕したところをお貸ししようと思うのですが」
「いえ。それには及びません。我々が使う場所くらい、我々で耕しますとも。……ですね、皆」
そう言ってデュランタは周りのエルフを見た。彼らは無言で頷いた。
「分かりました。では、この休憩小屋の窓から見える、あちらはいまだ手付かずなので。そちらでどうでしょう?」
「ありがとうございます。――では、さっそく耕作班は向かってください」
「かしこまりました、デュランタ様」
そう言って、話を聞いていた一人のエルフが小屋の外に出ていき、何人かの待機していたエルフと共に耕しに向かった。
「残りの方々は……?」
「アルト様の土地を借りるのですから。アルト様の農場のお手伝いをさせてもらうかと班分けしました」
その言葉を聞いて、俺の隣にいたシアが、小屋につけられたもう一方の窓から見える畑を指さした
「有難いわね、アルト。もう、向こうのキャベツは収穫でしょ」
「そうだね。そこを手伝ってもらえますか?」
「勿論です。では、収穫班」
「はっ。行ってまいります」
そうして、他のエルフたちも出て行って、残るはデュランタだけになったが、そこでふと思い出した。
「あ、一か所だけ、とんでもない速度で育っちゃう場所があって。念のため、説明しておこうと思うんですけど」
「それは……あのエルダーウォルナットが育っている場所のことですよね?」
デュランタの言葉に俺は頷く。やはり彼女も気付いていたらしい。
「あそこであれば、一応、最も早く作物が育ちますが、使いたいですか?」
「……気になりはしますが、今の私たちにそこまでの土地を求める理由はありません。普通の場所を使わせていただくだけで十分でございますとも」
デュランタはそう言った。であれば、
「これで一通りですかね。すみません、休憩小屋なんでごちゃごちゃしている中で説明してしまって」
「いえいえ。問題ありませんよ。しかし、この小屋、アルト様が建てられたのですよね?」
「俺以外にも、召喚したみんなの力を借りてですが」
「割と見様見真似ねで、作ったわよねー」
「あはは、だから、ところどころガタついてはいるんだよね」
そういうと、デュランタは小さく頷いて、
「なるほど……。もしかしたら、その辺りもお力添えできるかもしれません」
「お力添えというと……?」
などと話していた時だ。
「デュランタ代表――!」
そんな声と慌てた表情で、先ほど出て行った耕作班のエルフの女性が一人やってきたのだ。
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