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エルディアス・ロード ~女神にもらった『絶対死なない』究極スキルで七つのダンジョンを攻略する~  作者: すみもりさい


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ルーム・ギミック


「んだあ? ありゃ」


 ノーラとミレイに置いてけぼりを食らい、彼女らの意図を察したガルフは全速力で追いかけてきた。

 ようやくフロアボスの部屋の入口へやってきたら、すでにリオとミレイが戦っている。

 ガルフは空飛ぶ見慣れぬ魔物に眉をひそめた。


「あらガルフさん、もう追いついてきたのですわね」


「ノーラ、テメエ先走りやがって。まあそりゃあいい、つーかありゃなんだよ?」


「新種のようですわね。先ほどミレイちゃんが一体撃破しました」


 ノーラは簡潔に状況と新種の特性を説明する。


「また厄介なこったな。デカブツ一体ならそうでもねえのに、新種が入ったとなりゃ難易度が跳ね上がるぜ。けど、いきなりすぎねえか?」


「女神の思惑などわたくしどもに理解できようはずはありませんけれど……。団長がおっしゃっていましたわね。『最近のダンジョンはどこかおかしい』と」


「団長の『勘』レベルを超えてなかったけどよ、『変化』を目の当たりにしちまったら、笑って済ませられねえな」


 むろん一例をもって断ずるのは早計だ。考えたところで結論に至るはずもない。


「で、新種は一体倒したってのに、こりゃどういう状況だ?」


「楽になったと思ったのですけれど……また苦戦していますわね」


 ノーラの言葉どおり、状況は進展するどころか逆に押されていた。


 原因は明らか。

 リオがまったく動けずにいるからだ。

 浮遊する成人女性型の新種が二人目掛けて同時に魔法攻撃を仕掛けている。リオは水弾の嵐を捌くのがやっとだった。


 ゆえにミレイは巨躯のギガ・トロールとの対峙を余儀なくされ、しかも上からの魔法攻撃のせいで巨体に近寄れない。何倍も違うリーチの差で近寄るのは容易ではなかった。


「よく一体倒したもんだぜ」


「魔物だって学習はしますからね。リオ様が注意を引こうにも、相手にされなくなっていますわ。すこし時間をかけすぎてしまったようですわね」


 もっとも、時間をかけることで有利に働くこともある。


「あのふわふわ浮いてる奴のMPは、まだなくなんねえのか?」


「上位の魔法を連発していますものねえ。そろそろだとは思うのですけれど……」


 実際どうなのかは、リオがすでに把握していた。


(もうすこしだ。もうすこしで、敵のMPが尽きる)


 ギガ・トロールを相手にするつもりが、向こうの戦術変更で叶わなくなった。

 しかしリオたちも『時間をかけて浮遊する一体のMPを枯渇させる』作戦に切り替えたのだ。


 特に告げたわけではないが、ミレイはリオの考えを汲み取ったらしく、無理せず防戦に徹している。

 ただこれだって綱渡りには違いない。

 なにせ時間をかければ、こちらも不利になる事態が予想されるのだから。


(ミレイの疲労がかなり溜まっている……)


 死から復活して全快するリオとは異なり、ミレイは傷の回復しか行えない。疲労は蓄積され、ステータス値の減少に伴い動きが鈍ってくる。


 ここは一度下がらせ、疲労を回復させる必要があった。

 指示しようとしたその前に。


「どっかん!」


 ミレイは光の砲弾を新種へ放つ。ほんのわずかに生まれた隙をつく攻撃だ。


「一刀、七閃!」


 続けざまギガ・トロールへ斬りかかった。

 完全に不意をつけたので、攻撃は巨躯を直撃する。しかし――。


『ゥゥゥゥ……』


 さすがにHPがべらぼうに高い魔物だ。

 かなり削れはしたものの、一撃では仕留められなかった。


 そうなると、当然。


 ぽわっとギガ・トロールの巨躯が光を帯びる。新種が回復魔法をかけたのだ。継続回復の効果も加わり、削ったHPのほとんどが回復してしまった。


 ミレイはリオの側に着地すると、再び襲いくる水弾の嵐を弾きまくる。


「僕には構うなと言ったよ?」


「あともうちょっとですよね? だったら一緒に耐え忍んだほうがいいかなと思いまして」


「それよりも、君はまず疲労を回復すべきだよ」


 魔法攻撃を素早く受け流しつつ、ん? とミレイは小首を傾げる。


「わっ、ホントですね。ぜんぜん気づきませんでした……」


 ステータスを確認して、ようやく彼女は理解する。


「ともかく一度下がって回復してほしい。君がこっちへ戻ってくるころには、あいつのMPも無くなって――?」


 突然、敵の攻撃が止まった。ギガ・トロールも動きを止める。直後だった。


 広い部屋全体が、ぶわっと光を増したかと思うと。


「なっ!? 新種のMPが回復している!?」


 フロアボスやダンジョンボスがいる部屋は、何らかの仕掛け(ギミック)が施されている場合がある。それがルーム・ギミックだ。


 けれどこの部屋には、こんなギミックは今までなかった。

 リオは直接確認していないが、これまでこの部屋に来た【鑑識眼】を持つ冒険者が、『ルーム・ギミックはない』と報告していたのだ。


(僕のミスだ。新種が追加されていたのに、部屋の確認を怠ったから……)


 しかしこれは明らかに、挑戦者が不利になる難易度調整だとリオは歯噛みした、のだが。


「リオさん大変です!」


「まだ何か?」


「なんとわたしのMPも回復しちゃいました!」


「えぇ……」


 敵にだけMP回復効果がもたらされるのでないなら、一方が不利とは言い切れない。

 たった今確認したところ、ギミックの発動条件は『戦闘参加者の誰かのMPが10%を切ること』とあった。対象は『全員』だ。

 ならば大魔法を連発して攻略できる。とはいえ、今のリオたちにそれは不可能だが。


「とにかくミレイは一度下がって」


「ぇっ、…………はい!」


 飛び出したミレイを援護すべく、リオはギガ・トロールへ突っこむ。

 棍棒に叩きつぶされたものの、ミレイは遠くへ逃げおおせた。


「また振り出しに戻っちまったなあ」


 お気楽な調子で迎えたガルフを、ミレイはキッとにらみつけた。目に涙を浮かべている。


「な、なんだよ……」


 たじろぐガルフに何も言わず、荷物の中から小瓶を取り出しごくごく中身を飲み干した。疲労回復薬だ。しかし一本では足りず、もう一本を取り出そうとして。


「あっ」


 危うく落としそうになった。


「ミレイちゃん、慌てないことですわ」


「で、でも……」


 悔しいがガルフの言うとおり、状況は振り出しに戻った。

 早く自分が戻らなければ、リオは二体を相手に傷つき、また何度も殺されかけるのだ。


「貴女のお気持ちは痛いほどわかりますわ。焦り、逸るのも致し方ありませんわね。けれどあれを見れば、すこしは落ち着くのではなくて?」


 ノーラが指差した先。

 振り返ったミレイが、見たものは。


 レベルで圧倒する二体の魔物を相手に、避け、弾き、躱し続けるリオの姿。戦闘不能に陥ることもなく――。




反撃してない! ごめんなさい。(次回予告詐欺、すみませぬ……)

次回、おや? リオ君の様子が……? 今度こそ反撃です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 女神様というか冒険島の意思ですかねぇ? 何はともあれもうちょっと! がんばれ~(作者さんもw
[一言] ミレイがいることがハンデに(笑) 死んでも死んでも甦り、全回復して経験値を稼ぎ、レベルが上がる。 リオだけなら、時間かかった方がいいギミック。 本人は嫌だろうけど。
[一言] では恒例のアレを 「こ、こいつ  戦いの中で成長しているというのか・・・!!」
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