#3
まずはメイドを脅すことに成功した。
わたくしはこれで満足しているわけではなく、徐々にバーネット家を地獄のドン底に突き落とすことが今の目的。
「なにがなんでも、わたくしはわたくし。すなおになっちゃだめ。すなおになったじてんでまけ」
たとえ、そのメイドからお父様やお母様の耳に入って怒られたとしても素直に接する気はないため、わたくしは両親に反発することにした。
過去の自分はもういないということを知らしめるため――
「やさしいじぶんはすてる。そのころのことはすべてわすれましょう」
前世のわたくしは上品さと優しさを持ち合わせていないと、この貴族社会では生き残れないと思っていた。
しかし、今は違う。
たとえ、上品さはあったとしても、優しさはお世辞程度でないとやっていけないではないかとようやく思い始めていた。
「セレス! 入るぞ!」
部屋のドアをドンドンと喧しく叩く音がする。
叩き方からするとお父様がわたくしの部屋の前にいるようだ。
彼のことだからおそらく先ほどの例のメイドことだろう。
わたくしは「どうぞ」と冷めた態度でお父様を部屋に入れた。
「セレス! なんだ、さっきのメイドの態度は!」
「なんのことだかしりませんわ」
「惚けるんじゃない! お前はバーネット家の恥だ!」
「はじ? わたくしはメイドにしてきをしただけですわ」
「本当にそうか? 証拠として外で待ってもらっている。入れ」
「失礼いたします」
「ぷっ!」
彼は怒ってわたくしの部屋に乗り込んできて、わざわざメイドまで待たせて呼んだのに、思わず噴き笑いしまった。
なぜならば、粗末な昼食持ってきた時は髪はきっちり結い、化粧もしていた。
わたくしによって汚された今は髪はおろし、顔は綺麗に洗われ、すっぴんになっているのに、服だけはスープで汚れたままになっていたから。
最低でも一着くらいは予備として用意されているでしょう?
それとも、用意されていなかったのかしら?
「おい。何に対して笑っている?」
「ち、ちょっと可笑しくて……」
確実に笑いを堪えきれていなかった。
彼らは怒られているのに、何が可笑しいんだと思われているかもしれない。
それでも、わたくしはわたくし。
他人のことは関係ない。
「お前はこのメイドにスープを浴びせ、食事や食器を投げつけた。さらにはクビにすると脅した」
「はい。旦那様の言う通りです」
「他にはないか?」
「ございません」
お父様の言ったことに対して素直に答えるメイド。
もうわたくしに罪を着せる気満々な表情を浮かべている。
「これが証拠だ。さあ、セレスはその罪を認めろ!」
「あなたが認めないとこの騒動は収まりませんよ? 早急に認められた方がよろしいかと?」
「いい加減に認めろ!」
「みとめませんわ!」
「なんだと!」
お父様やメイドがわたくしのことを覗き込むようにその罪を認めろと言い張ってきた。
わたくしが罪を認める?
そのようなことはしない!
「わたくしはそのつみをみとめることはないとおもいなさい! わたくしはあなたたちのことがきらいです! いますぐにでていきなさい!」
「ああ! 早急に出ていくよ! 私はセレスを悪い子に育ってほしくなかったが、残念だったな!」
「旦那様、行きましょう。セレスお嬢様、失礼いたしました」
二人はわたくしの部屋から出ていった。
お父様には前世のギロチン処刑のこともあり、正直言って姿は見たくなければ、口もききたくなかった。
特に彼の話し方や口調が嫌いなのは事実。
この機会にはっきり嫌いと言うことができたから、彼に対しての後悔することはもうない。
これでお父様やメイドはわたくしに近寄れなくなっただろう。
今は五歳か六歳の容姿だが、遅かれ早かれ反抗期がくるのは仕方ないこと。
前世は聖女で生きてきたが、今は悪女として生きていく――。
2022/09/18 本投稿




