#10
翌日、学園にて――
あと少しで授業が始まるところなのにも関わらず廊下は騒がしい。
わたくしは興味がないので、教科書やノート、筆記用具を机の引き出しから取り出して準備していた。
「セレスちゃん、セレスちゃん!」
わたくしの名前を無駄に大きな声で呼んでいるクラスメイトがいる。
その声の主はアリス。
彼女がわたくしを手招きして呼んでいるのだ。
他の女子生徒は黄色い声できゃあきゃあ騒いでいるのに対し、アリスの場合はぎゃあぎゃあと……まるで鳥や動物が鳴くというか暴走している? といった方が妥当かしらね?
もう! あなたのせいでわたくしたちはあっという間にクラスメイトの注目の的になって、すっごく恥ずかしいですわ!
「アリスさん、どうなされたの!?」
わたくしは声を潜めて彼女に問いかける。
「みて! セレスちゃん! ルイスさまよ! ル・イ・ス・さ・まっ!」
「……ふーん……」
「ふーんって……セレスちゃん、リアクションうすくないかしら?」
「わたくしはざんねんながら、きょうみはございませんわ」
噂になっている人物の名前は他のクラスに属するルイス・ミューラー。
前世では初等科で同じクラスになることがなく、名前だけは知っていた。
その当時は挨拶程度のレベルであり、会話はあまりしたことがない。
かつての彼のポジションはわたくしの婚約者。
婚約破棄され、後にアリスによって奪われた記憶しかない。
むしろ、今のわたくしは彼には興味ない。
全くというわけではないけれど――
「やあ、みんな。おはよう!」
「「きゃーっ!!」」
ルイスは挨拶しただけで女子の視線を釘づけにさせますものね。
朝から素晴らしい笑顔で、他の男子がぼやけて見えますわ。
「ひとりだけ、ごきげんななめなおんなのこがいる」
彼は突然、わたくしがいる教室に入ってくる。
一体、何するのかしら?
「おはよう、セレス。きょうはきげんがわるいのかい?」
わざわざわたくしの席まできて何をするのかと思ったら、満面の笑顔でご挨拶だなんて。
前世のわたくしだったら分からなかったけれど、今なら確実に分かりますわ。
その笑顔は仮面なのでしょう。
「お、おはようございます。ルイスさま……」
また恥ずかしい思いをしなければならない運命なのね……
本日二回目の注目の的になってしまいましたわ……
彼女らは全く気づいていないようね。
わたくしはアリスはもちろん、ルイスの本性を前世のうちに知っているのだから!
2026/02/09 本投稿




