第九五話 情報の共有
巳代から、弥勒ら一行が転校してきた事の真相を教わった五条と鷲頭。鷲頭は現状の打開の為、巳代へ問う。
五条と鷲頭はその日の内に、巳代に事情の説明を求めた。五条は弥勒という友人を助ける為という純粋な気持ちが強かったが、鷲頭は、自分達の身を危険に晒しておきながら涼しい顔をして過ごしている有馬らに対する怒りが、その原動力であった。
巳代は、五条を信用していた。周布という、弥勒が開眼者だと評する人物と引き合わせ、その後も各地へ連れて行ってくれた功労者だと認識していたからだ。
鷲頭の信憑性はイマイチ計り知れずに居たが、鷲頭が五条命という姿勢を貫いていることから、彼女が五条に危害が及んだ原因が自分や弥勒にあると認識したのなら、ここまで激昂してもおかしくはないと思った。
だからこそ、五条に同調して、今後も情報を漏らすことは無いだろうと判断した。
「昨日の東屋に続いて、今日も今日とて……だが分かった。全てを話そう。他言無用願うぞ」
そして巳代は、二人へ共有した。大友修造という人物を追って各地を巡っていること、その目的は九州独立であると考えられ、それに向け八百万や自衛団といった武力の掌握を図っていること、そして彼には藤原氏やドン・フランシスコという惟神の存在を知っている社会的影響力が強い人々が与していることなど、知りうる情報の全てをである。
話を聞き終えて、鷲頭は頭を抱えていた。九州独立など、嘘だと思いたかったのだ。どれだけ信憑性があると推理できても、心の底では、そんな話は空想であると信じたかった。
「聞いてくれ二人とも、教会にて記憶を抜かれたことで、今話た様なことを俺達が行っているといることがバレた可能性が高い。弥勒は俺達の中心人物であり、安全を喫して常に護衛に囲まれた状況で自宅にいる。弥勒がいなければ……周布さんの知識も、皇長官の情報も得られないんだ」
「私も力になりたいよ、有馬君。弥勒君と周布さんを引き合わせたのは私だし……九州独立なんて……バカげてる」
「気持ちは嬉しいが……今はなにもできそうにない」
辟易しながらそう答える有馬に、鷲頭はいつにもまして鋭い目つきを向けていた。そして腕を組み、尋ねた。
「それで今はなにをしてるの? なにを待っているの?」
「今は……周布さんや日向分校の陰陽部にいる弥勒の友人が、神通力の痕跡を辿る形で、ドン・フランシスコを探っている」
「なにもしてない訳じゃないのね、でもどうして今ドン・フランシスコを探るの?」
「ドン・フランシスコが大友修造である可能性があるんだ」
鷲頭はややこしさに、更に不機嫌そうな顔になった。五条は、遠くを見ながら、一生懸命理解しようとしていた。
「有馬あんた、さっき神通力を使った痕跡が山内組ら暴力団の周辺にあって、それが大友であると思われるって話してたわよね。そいつがドン・フランシスコだったということ?」
「その可能性がある。神通力の痕跡を辿っていると、長崎で神秘外交を行い、またドン・アントニオらと天草で八百万を意のままに操っている姿が見えたんだ。痕跡に残っていた八百万が見た記憶ということだ。ドン・フランシスコが西洋人などの異民族なら、神通力は使えない。その名が通名であり本名が別だと考えれば、日本人である可能性がある。そしてその人物は今、大分にいる」
「星の屑財団の事務所がある場所……ということね。だったらなぜ事務所へ行かないの?」
「無策で飛び込む訳にはいかない。それに大友を捕まえるなり殺すなりをすれば、騒乱が終わるという訳では無い」
「あらどうして? 大友がいなくなれば、事は沈静化すると私は思うわよ。話を聞く限り、暴力団にしろ自衛団の掌握にしろ、神童と呼ばれた天才である大友の力を恐れているあるいは、その力に魅了されているから従っている様に思うわ」
「そうともいい切れん」
巳代がそういうと五条は、また話が複雑になりそうだと考え、目の前が白くなった。




