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第八二話 音なき叫び声

 足利翔太の奇襲を受け、弥勒と巳代は応戦する。

 足利の奇襲は、弥勒の一瞬の判断により、防がれた。鞘は割れ、体で受け止めていればひとたまりもない威力だったと、弥勒は動揺した。

 足利は尚も剣を振り上げ、弥勒を斬りつけた。しかし、周布との鍛錬をしたばかりの弥勒にとって、足利の動きは、見切れる速さだった。

 周囲は動揺し、悲鳴が轟く。そんな中でも二人は集中し、真剣の斬り合いを演じていた。

 三合の打ち合いの後、巳代が弥勒の助太刀に入った。巳代のその初撃で、足利は巳代の力量を見抜いて防戦に移った。股下を斬ろうと中腰になって、下半身を執拗に狙いながら、跳ねる様に斬りつける巳代の動きに、足利は後退するしかなかった。

 弥勒と足利に距離ができたことを確認するや否や、巳代は跳躍し、壁や天井を足場として活用しながら、素早い動きでピンポン玉の様に跳ね、奇想天外な動きで足利を翻弄した。

 防戦一方となった足利は、部が悪くなったことを感じながら、人混みに紛れた。

「俺には……こういうのが向いてるんだ」

「どこに行く! 足利!」

 足利は姿勢を低くしたまま、逃げ惑う生徒らに紛れた。巳代が目視で位置を特定しようとしていた時、足利は、周囲を警戒している弥勒へ鞘を投げつけた。

 弥勒は難なくそれを弾くも、それはフェイントであった。

「コイツはとろい! !」

 足利は神速で鷲頭目掛けて剣で突撃した。

「鷲頭さん!」

 弥勒の思いは、凄まじい波長として周囲に届いた。それは波動の様に周囲の生徒の体に、斬撃の様な痛みを与えた。

 弥勒の神通力を読み取ることに長けた巳代でさえ、その痛みは感知したことが無いものであり、一瞬動きが止まった。

「なんだ……今の痛みは……! 足利はどこに……?」

 巳代が目視で足利を認識した時、彼は剣を手放し、床に倒れ込んでいた。

 そして弥勒は、まるで蘭陵王の面の様な鬼の形相で、床に疼くまる足利へ剣を向けていた。そして一歩、また一歩と距離を縮め、剣を振り上げた。

「大事な友達に……なにをするんだ……!」

「待って弥勒君! 杏奈は無事だから!」

 五条は、心臓の痛みを堪えながら、必死に叫んだ。しかし弥勒にその声は届かなかった。

 弥勒が今まさに剣を振り下ろそうとした時、巳代が弥勒の手を止めた。

「殺さなくてもいい! もうコイツは戦えない!」

 巳代は弥勒の目を見て、叫んだ。しかしその説得の声は弥勒には聞こえなかった。

 弥勒は、神通力を感知できなくなっていた。

 違和感に気づいた弥勒が周囲を見渡すと、その場にいた全ての生徒が床に倒れ込んでいた。ある者は心臓の位置を抑え、またある者は苦悶の表情を浮かべながら、嗚咽をしていた。

 弥勒は動揺し、剣を床に落とし、絶叫した。しかし自らが発する波長でさえ感知できず、彼は真に音のない世界へ落ちたことに更なる動揺が起こり、幾度も幾度も、音なき叫びを上げた。

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