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第七九話 隠された神父

 目的地である教会を訪れた弥勒ら一行は、そこで神父のドン・アントニオと接触する。

 目的地の教会を訪れた一行は、教会を訪れた。この協会は、御所浦の天草分校の教員に引率されなければ来られない場所だった。

 江戸時代初期、この地ではカトリックの国を作ろうとして、同じ信仰心を持つ農民を率いて反乱を起こした天草四郎あまくさしろうという人物がいた。彼らの魂を鎮撫ちんぶする為の教会は、一般人の立ち入りは禁止であり、惟神庁同様に、その存在さえ秘匿されていた。

 引率の天草分校校長補佐、山崎辰吉やまさきたつよしが、慣れた手つきで扉を開けた。

「ドン・アントニオ、こんにちわ」

「お元気ですかな、山崎殿。そちらの方々がお客人ですか」

「ええ、うちの生徒です」

 ドン・アントニオと呼ばれた男は、いかにも神父といった見た目の服装をしていた。それがなんという服なのか、弥勒達には分からなかった。

 だがそれよりも、弥勒らは驚いたことがあった。ドン・アントニオは、日本人だった。それは八百万を信仰する人という意味ではなく、顔や背丈などの身体的特徴が、平均的な日本人のそれという意味である。

「ヨハネ、あなたも挨拶なさい。後の神秘外交を担う、志豊かな子達ですよ」

「ヨハネと申します。お見知り置きを」

 そういうとヨハネは、生徒の先頭に立っていた弥勒の目を見て微笑み、細い目を更に細めた。しかし少しして、なにかに気付いた様な顔をして、ヨハネはそそくさと下がった。

「新しい子達に慣れていないのでしょうか。まぁ良いでしょう」

 そういうとドン・アントニオは弥勒らの前へと歩を進め、目の前で立ち止まった。

「惟神の、我がグレートフレンドよ」

 そういうと、ドン・アントニオは不敵な笑みを浮かべながら、弥勒へ握手を求めた。

 弥勒が手を握った次の瞬間、尖った波長が、体を突き刺す様に流れ込んできた。強烈な不快感を覚えた弥勒は、その不快感の正体を察した。

「神通力じゃない……! 第六感だ……!」

 弥勒は神通力で心を閉ざす詐術を強化し、弥勒の側に流れる時間から情報を抜き取られない様に警戒した。

 そして手を力づくで振り解いた。

「なにを……!」

「ドン・アントニオ、うちの生徒になにをした!」

 声を荒らげる二人に、ドン・アントニオはおどけた顔をして「なにもしておりませんよ」といってのけた。

 その背後でヨハネもまた、不敵な笑みを浮かべていた。

 巳代は激しい敵意を向けたが、時すでに遅しであった。

 危険を感じた巳代は、縦長のスポーツ用リュックのファスナーを開け、いつでもその中にある刀を抜ける様にしながら、弥勒の横まで進んだ。そして弥勒と共に、ゆっくりと後退した。

「なにをされたんだ」

「わからない。でも……強い力を感じた。記憶を抜かれたかも知れない」

「こいつらただの神父じゃねぇな……黒だ」

 怯える五条らをかばいながら、山崎校長補佐もまた、静かに後退を始めた。

 全員が扉の外へ出た後、山崎は全員を船に乗せ、すぐさま教会を離れていった。

天草四郎(生:1621年〜没:1638年4月12日)……江戸時代初期のキリシタンで、島原の乱の首謀者。本名は益田時貞であるが、中国地方の益田氏との関連はないとされる。

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