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雪妖精の姫は破滅の未来をまるく、まぁるく収めたい。 ~努力はしますが、どうしても駄目なら出奔(逃げだ)します~  作者: ありの みえ
第04章 雪だるまは『雪妖精』にクラスチェンジしたい

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男神の夢と白雪 姫子の死因 2

「……また割れない?」


「今回はアコモが原因のようなので……」


 アコモの分も預かって来た、と言いながらイスラはテーブルの上に黒い石を二つ並べる。

 一つは以前の魔よけの石と同じような大きさの丸い石で、もう一つは石そのものの形をしていて、ゴツゴツと角があるかわりに大きい。

 大きい方が効力があるのかと聞いてみたら、大きな石から作った小さな丸い石が一番効力がある、とイスラは教えてくれた。

 なんでも、大きな石に祈りを込めながら磨き、丸くなったものにより強い魔よけの効果が宿るのだとか。


「それで言うと……この間の割れた石って……?」


 とんでもなく高価なものだったのではなかろうか。

 そう気が付いてしまった私に、イスラは値段ではなく、誰が何年磨き続けた石なのかを教えてくれた。


 ……何代か前の祭司長が、四十年磨き続けて作った石だったのか。


 こう聞いてしまえば、あとは解説など不要だった。

 身分ある祭司長が、四十年も磨き続けたということは、つまり生涯を掛けて作り上げたものだということだ。


「アコモが原因なら、アコモの方に小さい石を置いた方がいいような……?」


「赤子の入っている籠に、口へ入れられる大きさのものを入れるのは、やめておいた方がよろしいかと」


 アコモが石を飲み込みますよ、と指摘されて気が付いた。

 小さな赤ん坊は、口に入れていいものと悪いものの区別がつかない。

 そのため、なんでも口へ入れてしまうのだ。


「でも……」


 それは理解できるのだが。

 それでも、より効果の高いものをアコモに持たせることはできないものか。

 そう言い募ろうとしたら、イスラに先手を打たれてしまった。


「それに、私としてはカーネリア姫にこそ、効果の高い魔よけを持っていていただきたい」


「……はい」


 イスラは時々ずるいな、と思う。

 自分がそう言えば、私が嫌だと言えなくなることを解っていて、こういう言い方をするのだ。


「……そういえば、アコモが原因だって、なにか特定できるような要素があったんですか?」


「カーネリア姫は、夢の中でアコモを守ろうとして、魔よけの石が割れた、と」


 他にも、妙な夢はアコモを部屋に移してから見るようになったのではないか、と指摘されて考える。

 たしかに、男神が現れる夢を見るようになったのは、アコモを私の部屋へと移してからだ。

 アコモを自室へと迎えた、その日のうちから夢を見るようになった。


「アコモを大部屋へ戻してはいかがですか?」


 アコモは今のところ怪しまれている原因の一つだ。

 確定ではないが、試してみる価値はある。


 指摘されれば私もそうは思うのだが。


「私の部屋へ置くようになったら、少し元気になったんです」


 目に見えてアコモの体調にいい変化があったため、私が変な夢を見るからと言って、大部屋には戻したくない。

 おかしな夢を見るか、弟が無事に夜を越えられたかと朝怯えながらアコモの入った籠を覗きこむことの二択なら、変な夢を見る方がいい。

 今のところ、夢を見るだけなら実害はないのだ。


「……カーネリア姫は、お優しいですね」


 腕輪へと丸い魔よけの石を編みこむイスラの手元を覗いていると、『優しい』と言いながらもどこか不満気な声音が聞こえる。

 不思議に思って顔を上げると、イスラは少し拗ねたような顔をして「自分としては面白くない」と青い目を逸らした。


「どのあたりが『面白くない』なの?」


「考えてもみてください。……憎からず思っている女性の部屋に、弟とはいえ『男』がいる」


 これを愉快に思える男はいない、と続いたイスラの言葉に、意表をつかれすぎて瞬く。

 まさか、弟相手に、それも赤子相手にイスラが妬くとは思わなかった。


「アコモはまだ赤ちゃんで、弟ですよ?」


「赤ん坊で、弟でも、です」


 届け物という大義名分いいわけを得て、夜中だというのに姫君の部屋へと忍び込んできてしまうぐらいには、自分の心は狭いのだ、とうそぶいているうちに腕輪の修復は完了する。

 網状になっている革紐部分へと魔よけの石を入れるだけなので、飾りとして入れた銀や南京玉ビーズの位置を調整していたらすぐだ。


「どうぞ、カーネリア姫」


「ありがとう」


 黒い魔よけの石が嵌められた腕輪を、改めて自分の腕へと通す。

 ここしばらくは石のない状態で付けていたので、なんとなく久しぶりの重さだ。


 何気なく腕輪を弄んでいると、その間に大きい方の魔よけの石をイスラがアコモの籠の中へと入れる。

 石の数が増えたことで、あの夢を避けられたらいいのだが――と考えて、視線を腕輪からイスラへと移した。


 魔よけの石よりも、私にとって効果のありそうなモノがそこに居た。


「……イスラ、お姫様らしく、一つ我がままを言ってもいい?」


「なんなりと」


 以前、似たようなやり取りをした時、反射で「なんでも叶える」と答えた私に、イスラは「もう少し考えて答えてくれ」と言ったような気がするのだが。

 イスラも、大概イスラである。

 カーネリアからのおねだりに、内容も確認せずに承諾してしまった。


「わたしが寝付くまで、側にいて」

カーネリア視点『南京玉ビーズ

イスラ視点『宝石』

というすれ違い。

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