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雪妖精の姫は破滅の未来をまるく、まぁるく収めたい。 ~努力はしますが、どうしても駄目なら出奔(逃げだ)します~  作者: ありの みえ
第03章 雪だるまの自己改革新生活

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悲しい話をしよう

 悲しい話をしよう。

 

 幼竜の体重を量る巨大な秤で私の体重を量った。

 そこまではいい。

 それが目的で竜舎まで行ったのだから。

 

 そのあと、ほとんど強引に竜舎へと連れて行ったローズの体重も量った。

 というよりも、ローズを竜舎に連れて行った目的がこれだ。

 なんというのか、ローズは侍女三人の中で、一番プロポーションがいい。

 ボンと出るべきところが出ていて、キュッと凹むべきところが凹み、ボーンとまた女性としての魅力が爆発している。

 私の目指すべきものは『美しさ』よりもまず『健康』だったが、最終的な目標としてローズのプロポーションを設定した。

 平均的十四歳の体重など判らないので、あくまで最終目標だ。

 いつかローズのようなボン、キュッ、ボーンなプロポーションになりたい。

 

 話が逸れた。

 

 問題は、この後だ。

 目標体重としてローズの57キロという数字を頭に叩き込み、私が竜舎を訪れた目標は達成された。

 それでは、と秤を片付ける流れになったのだが、マタイが実に男児らしい遊びを思いついたのだ。

 自分マタイと私は、どのぐらい体重に差があるのか、と。

 

 ……マタイとほぼ同じ体重だとは、思わなかったよ。

 

 嘘である。

 見栄を張った。

 

 秤は誤差のような角度で私の方がほんの少しだけ深く沈んでいた。

 つまりは、私の方がマタイよりも重いのだ。

 

 ……しかも、マタイは鎧まで着ているのにね!

 

 飛竜騎士の鎧は、空を飛ぶ飛竜に乗るため、そこまで重くない。

 イスラからそう聞いたことがある。

 聞いたことはあるのだが、だからといって軽いものではないはずだし、マタイの体格はどう見ても大柄だ。

 大柄で、高身長で、筋肉も盛り盛りと付いている。

 

 そんなマタイよりも、鎧を着けていない、なんだったら普段より衣が短いぶんだけ軽いはずの私が、重いのだ。

 

 ……ダイエット頑張りますっ!







 竜舎で判明した衝撃の事実に、やはりというか、焦ってしまった。

 減量ダイエットに無理や焦りは禁物だと判っていても、運動するためにも、まずある程度体重を落さなくてはならないという現状に、理性だけでは踏みとどまれなかったのだ。

 

 このぐらいなら大丈夫だろう。

 前世では老齢に近い女優もやっていたはずだ、とスクワットに挑戦したら、見事に腰と膝を痛めた。

 本当に、少しやってみただけなのだ。

 いきなり何十回もやってみたわけではない。

 深く腰を落として負荷をかけたわけでもない。

 うろ覚えで、ほんの数回スクワット『らしきこと』をしてみただけなのだ。

 それなのに、膝はピキンッと悲鳴をあげ、腰は少し姿勢を変えただけで痛むようになってしまった。

 

 ……最初の判断が的確すぎた。無理。本当に、甘えとかじゃなくて、まずある程度体重落さないと、運動するの無理っ!!

 

 少し運動に挑戦してみただけで、この結果だ。

 今は明らかに食べ過ぎの食事量を減らし、関節に負担をかけない程度の運動として散歩を続けていくしかないだろう。

 

 ……ストレッチぐらいなら、さすがに大丈夫だよね?

 

 ダイエットか何かの話で、リンパの流れがうんぬんかんぬんと聞いたことがある。

 記憶が曖昧なのは、前世では情報が溢れすぎていたからだ。

 偏見もあるが、ダイエットは日本人女性の最大の関心事である。

 つまりは、ダイエットの情報にはいくらでもお金を出す女性がいて、商売になると判断されれば際限なく新しい言葉や眉唾のダイエット方法が作成される。

 リンパという言葉も、いつの頃からか当たり前のように目に付くようになったが、白雪 姫子の母が若い頃には聞かなかった概念だ。

 何が本当に効果のあるダイエットなのか、次々に生み出される方法を追いかけるよりも、正攻法の運動を増やしたい。

 

 ……まあ、その運動すら、今の私にはできないんだけど。

 

 ベッドに座って足首を持ち上げる。

 就寝時はチュニック姿になるので、昼間よりは体が動かしやすい。

 ついでに言えば、人払いもされているので、多少無様な姿を晒しても大丈夫だ。

 丸々と出っ張った腹が邪魔で足首を掴むことはできなかったが、親指を掴むことはできた。

 そのままグルグルと足首を回して、頭の中で数をかぞえる。

 リンパうんぬんは知識が曖昧なので信じられないが、少なくとも血流は多少よくなるはずだ。

 

 左右の足首を回して、ベッドの上に足を伸ばす。

 運動と考えるから、まだできないと考えてしまっていることに気がついた。

 ストレッチなら、今の私にもできる。

 

 足を真っ直ぐに伸ばし、閉じた膝――脂肪のせいで膝と膝を合わせることはまだできないが――を左右に開く。

 これが動かないデブには難しい。

 筋肉が固まっているのか、筋が固まっているのか、膝を伸ばしたまま足を開こうとすると、筋が痛いのだ。

 それでも足を開こうとすると、傷みを避けた足が自然に曲がる。

 膝を伸ばしたまま足を開くという柔軟体操は、今の私には難しすぎた。

 伸ばした足先を手で掴む、なんて当分は先の目標だ。

 そもそもとして、腹が邪魔で体を前に倒すことができない。

 

 ……柔軟体操は続けていこう。

 

 今はまだ、柔軟体操と聞いて想像する柔軟体操の形にすらなっていないが。

 体の柔軟性を取り戻し、血流をよくすることは、必ずこの後のダイエットの助けになってくれるはずだ。

 

 ……あと、明日からはイスラの勉強会が終わってからにする。

 

 少し体を解しただけのつもりなのだが、これまでほとんど動かなかったカーネリアの体には変化があった。

 気のせいか、動かした箇所の血流がよくなってポカポカしている気がするのだ。

 

 ポカポカとする程度ならいいのだが、汗をかくのはマズイ。

 デブの汗は臭い。

 なんだか酸っぱいような、粘つくような、嫌な臭いだ。

 せっかくイスラが自身の睡眠時間を削って勉強を教えてくれるというのに、デブ臭さで気まずい思いなどさせたくはなかった。

 イスラなら私に対して「臭い」なんてはっきりは言わないだろうが、「臭い」と思われること自体が嫌だ。

 人としても嫌だが、乙女として。

 なけなしの乙女心が、汗臭い私をイスラの前に晒すことを拒否していた。

 ひとによっては侍女の体重設定を「重い」って言いそうなので、補足。

 たぶん、体のつくりが日本人じゃない。筋力も現代人より標準的に強い。でも食生活的に太るはずもなし……と考えた結果の57キロ設定です。

 条件的に、作中での評価は「痩せている」になるかもしれません。

 現代日本人のやたら小さな数字を崇拝するのとは逆ベクトルで。


 マタイ? マタイは普通に筋肉が重い。

 数字設定的に、イスラはマタイを姫抱っこできる計算に……?

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