97話 プライド。
97話 プライド。
「秒で根絶やしにできる。あの俺が言っているんだから間違いない。俺は詳しいんだ。多分。知らんけど」
「……」
そこでケイルスが、
「そこまで啖呵を切ったんだ。敗北した際には、もちろん、頭をさげるんだな? 誠心誠意、己の過ちを恥じ、全力で頭をさげてもらう。その覚悟が、貴様には――」
と、煽られている途中で、
センが、その場で、
「勝てませんでした! すいませんでした!」
と、綺麗に土下座をして叫んだ。
何事かわからず、その場にいる誰もが固まる。
センは数秒ほど、土下座をしてから、
すっと、何事もなかったかのように立ち上がり、ラスに、
「負けた時の条件はすでに果たした。『この勝負を提案したケイルス』と、『それを受けた俺』の間で交わされた『契約』に、お前らは関係ない。さあ、これで何も気負う必要はないだろ。負けてもなんもねぇ。全力で立ち向かえ。『相手の方が、存在値が高いんだから、負ける可能性の方が高い』のは百も承知。知っているさ、ちゃんと、全部。だが、それがどうした。知っているからなんだってんだ。……敗色濃い難敵にこそ全力をもって挑むこと。それができたなら、テメェは今日を置き去りにできる。輝く明日をつかめるチャンスを得る」
「……」
「死ぬ気で頑張ってみろ。そして、できることなら、あのケイルスとか言う不愉快なバカの鼻っ面に一発ぐらいかましてみせろ。もし、それができたら、本気で褒めてやるよ。俺に本気で褒められるなんて、そうそう賜われない至極の栄誉だぜ、掴んでみろよ」
「………………はい……っ」
覚悟を決めた顔で、そう返事をするラス。
そこでケイルスが、
「……さ、流石は魔人。当たり前のように土下座をするとは、プライドのかけらもない模様」
と、とことんセンを見下した顔で、煽ってくるケイルスに、
センは、まっすぐな視線を向けて、
どこまでも堂々と、
「俺はどっちかと言えばプライドが高い方だぜ。もっと言えばプライドだけは高いって感じかな」
「多少でも誇りを胸に抱くものは、簡単に頭を下げたりしない!」
「俺が言うプライドってのは、『大事なモノのためならなんでもできる覚悟』のことを指す。『テメェの体裁や保身のせいで頭の一つも下げられない』……そんな縛りは、俺からすれば、安っぽい見栄でしかねぇ」
「口だけはよく回る。無能の特長だ」
「ずっと黙ってりゃ、有能に見えんの? 寡黙な口下手は、営業の世界じゃ、一番のゴミだぜ。俺は詳しいんだ。知らんけど」
ファントムトークを連打するセンに、本気でイラついた顔をするケイルス。
魔力を煮詰めて、
「下劣な魔人が……どこまでも調子に乗りやがって。……もう許せん。……決闘を申し込む!」
先ほど、ラスからの決闘申請をあしらっておきながら、
自分は、声高らかに申請していくという節操のなさを魅せつけるケイルス。
もちろん、
『ラスVSケイルス』と、
『センVSケイルス』では、
前提があまりに違うので、同じ土俵に並べて話すべきではないのだが。
「沸点低い女だな。『レスバで不利になると秒でキレる煽り厨』とか、史上最悪クラスの当たり屋だぜ」
そう言いながら、センは、ケイルスの決闘申込を受け入れた。
ケイルスには、ラスの申請を受け入れる理由も意味もないが、
センには、ケイルスの申請を受け入れる理由も意味もたくさんある。
センは、その場で、翼のように、両手を広げて、
「来いよ、ケイルス。可愛がってやるよ。かわいがると言っても頭をよしよしとなでたり、高い高いとかをするんじゃないぞ。痛めつけてやるということだ」
止まらないファントムトークに、
「……どこまでも人をなめた魔人だ……私の高みを教えてやる」




