280話 閃光式帝王学。
280話 閃光式帝王学。
『センエースが、わざわざ、お前を使ってヒークルを暗殺しようとするだろうか……この点、いくつか、疑問が残る』
そこで、センが、
「俺がもし、ヒークル様を殺そうとするなら、他者を使っての暗殺ではなく、俺自身が堂々と正面からいきますよ。今のところ、理由がないのでやりませんが」
その発言に対し、
ヒークルが、キっと目を強くして、
「貴様は、これまで、貴様自身の失態で、何度も私から叱責を受けている。逆恨みで私を殺そうとするというのは、ありえない話ではない」
「確かに、可能性はゼロではないでしょうね。ただ、それは、あなたから叱責を受けた者全員が容疑者になりうる……というだけの可能性論でしかなく、俺が犯人であるという根拠にはなりえません」
そこで、センは、ガリオに対し、
「言っておきますが、この場でヒークル様に、一番ナメられているのは、俺じゃなく、ガリオ様ですよ」
『それは、どういう意味だ?』
「ヒークル様は、『この程度のお粗末な計画でも、ゴリ押しすればいける』と甘く考えていて、その甘い考えが、『ガリオ様なら通るはずだ』とナメている。これって大問題だと思いますよ。帝王学的な視点でみると。……帝王は、配下からナメられたら、そこで、試合終了ですよ」
『……』
そこで、ヒークルが、やれやれといった感じで、首を何度か左右に振って、
「ガリオ様、いちいち反論するのもバカらしいですが……言うまでもなく、私は、一片たりとも、ガリオ様をナメてなどおりません。私は、真摯に、自分の身に起こったことを申し開いておるだけでございます」
言ってから、ヒークルは、センを睨みつけ、
「そろそろ、いい加減にしておけ、センエース。貴様の、その、何がなんでも、私を貶めようという、悪意であふれた姿勢……大問題だと言わざるをえないぞ。道化の貴様からすれば、生真面目に職務をこなす私が目障りなのかもしれんが、だからといって、最近の貴様は目にあまる。感情だけで他者を排斥しようとするのは、人として最低の行為だ。魔人には理解できんかもしれんが」
そこで、センは、拍手をして、
「流石、ヒークル様。見事な擦り付け方。流れの中でソっと鮮やかに、俺を暗殺の首謀者に仕立て上げようとする、その手腕。……ヒークル様って、脳筋に見えて、案外、頭がまわりますよね」
「……貴様は……どこまで、私を小ばかにすれば気がすむ? 街がアンデッドの襲撃を受けて大変な時に、全力で、味方の足を引っ張りやがって。よそ者の貴様からすれば、この街に住む者がどうなろうと知ったことではないのかもしれんが、私は、この街の領主として、この街を守る責務がある。貴様の妨害工作にばかり気を回す余裕はないのだ。このまま、私に対する嫌がらせをつづけるつもりなら――」
「ブラボー! 完璧です、ヒークル様。俺が『悪意をもって、あなたに嫌がらせをしている』……という部分を、サラっと、前提のように扱うとは……やはり、天才か」
と、そこで、
それまで、ヒークルとセンのディベートを見守っていたガリオが、
『そこまでだな。証拠がない以上、この論議をつづけても、永遠に水掛け論が続くだけ。ここまでの流れを踏まえて、私が判決を下す。反論は認めない』
と、前を置いてから、
コホンと一度、軽く咳払いをして、
『証拠不十分で、センエースは無罪だ。しかし、センエースが、ヒークルを殺そうとしたかもしれない、という疑念は私の中に残った。もし、仮に、今後、ヒークルが死体で見つかるようなことがあれば、真っ先にセンエースが疑われると心得よ』
「それはそれで理不尽ですが……まあ、別にかまいませんよ」
そう言うと、センは席から立ち上がり、
「じゃあ、俺、帰ってもいいですか? またアンデッド軍団がせめてきたときのために、クロッカ様直属センエース戦闘団のメンバーを鍛えておきたいので」




