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276話 暗殺。


 276話 暗殺。


 パッサは、短絡的なバカ……というわけでもない。

 意外と腹黒で計算高く、現実が、まあまあ見えている。



 ――寝ているヒークルに接近するパッサ。

 気配と足音を殺し、慎重に距離を縮めていく。


 握ったナイフが届く距離まで近づくと、

 オーラと魔力をしっかりと込めていく。

 さらには、毒術ランク1や麻痺術ランク1の魔法を使い、ナイフにデバフ効果もぶちこめて、


(死ね……ヒークル)


 心の中でアディオスを告げつつ、

 ヒークルの心臓めがけて、一直線に振り下ろす。




 ガギィイッ!!




 鋼鉄のようなヒークルの肉体が、ナイフを弾く。

 少しだけ傷は入ったが、心臓までは届いていない。


「ぐっ」


 想像以上に強固なヒークルの肉体を前に焦るパッサ。

 ここまで、だいぶ無様な姿をさらしているので、忘れられがちだが、

 ヒークルは、とんでもなく高い存在値を誇る前衛タイプの超肉体派。

 性根は糞でも、鍛練は怠ったことがない求道者タイプ。

 例え『寝こみ奇襲』だろうと、パッサ程度では、ヒークルを殺すことはできない。


(くそ、この筋肉ダルマが!)


 一撃では届かないと理解すると同時、

 何度でもやってやる、という精神でナイフを振り下ろそうとするが、

 流石に、


「……何をしている……パッサ……」


 当たり前のように、お目覚めのヒークル様。

 刺し起こされたヒークルは、もちろん、怒り心頭。


 ナイフで刺された箇所がずきずきと痛む。

 心臓には届いていないとはいえ、刃物で傷つけられているので、当然、激しい痛みを感じている。

 感覚としては『だいぶ痛い注射』。

 あるいは、『画鋲を踏んでしまった時』の痛み。


 ただでさえ、寝起きが悪いヒークル。

 だいぶ痛い機械的刺激という、最悪な叩き起こされ方をして、不機嫌も頂点に達する。


「どういう……つもりだ……パッサ……」


 あまりにムカつきすぎて怒鳴る気にすらならないという境地。

 ヒークルはベッドから起き上がり、

 パッサに詰め寄る。


「おい……パッサ……貴様……」


 ギリギリと奥歯をかみしめながら、

 寝込みを襲ってきた逆賊パッサに、


「覚悟は……できているんだろうな……」


 と、ヒークルが、パッサをブチ殺そうとしたところで、


 パッサは、


「お、お待ちください、ヒークル様! 誤解です!」


 と、反射的に、そんな言葉が出た。

 まるで、『浮気がばれた時の旦那』みたいな反応。


 何も誤解ではないが、しかし、とりあえず、一旦は、『誤解だ』と叫んでしまう。

 この辺は、男も女も差異はない。

 だいたい、みんな、同じような反応をしめす。

 極限状態に陥った人間というのは基本的に、脆くて愚かで終わっている。


 そんな、パニック状態のパッサに、

 ヒークルは、


「誤解か。何がだ? この状況の何が誤解だという。言ってみろ」


 精神的にも相手を追い詰めたくなったヒークル。

 『みっともなくあがくところを見てから殺した方が気は晴れる』……などと、そんなことを思う性悪ぶり。


 動揺したパッサは、とっさに、


「これは、私の意志ではありません! せ、センエースに……あの犬に命じられたのです!」


 そんな、とんでもない事を言い出す。

 言うまでもなく、パッサは、センに命令されたわけではない。

 自分の意志で、衝動的な自分の怒りをヒークルにぶつけただけ。


 だが、パッサの頭の中で、急速にストーリーが出来上がっていく。

 極限状態に陥った時の性悪ストーリーテラーの脳内は豪速。

 頭の中で『保身』を軸にした物語を、超速で完成させるや否や、


「あの犬は、その高い武力を背景に、私を脅してきたのです! ヒークル様を暗殺しないと殺す、と!」


「……仮に、その話が事実だったとしても……断ればよかっただけだろう。お前は殺されるかもしれんが、私が傷を負うことはなかった。貴様は、保身のために、私を殺そうとした。十分、万死に値する」



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― 新着の感想 ―
パッサの「誤解です!」からの一流の責任転嫁、 もはや芸術的ですらありましたね(笑)
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