274話 絶対的上下関係。
274話 絶対的上下関係。
ガリオの電撃決定に、ヒークルが目を丸くして、
「えぇえええ?! いや、あの、ガリオ様ぁああ?! それはおかしいでしょう! なぜ、こいつに、そんな特権を! 認められない! そんなこと! 絶対にありえなああああい!」
不満を全身で表現するヒークルに、
ガリオは、
『ヒークル。文句があるなら、お前ひとりで、カラルームの街を守ってもらうぞ。誰の手も借りず、お前単騎で』
「え、いや、それは……ふ、不可能です」
『ならば、なぜ、文句を口にする? 私の決定に異議を挟んだ理由はなんだ? どういうつもりだ? 貴様、いったい、何様のつもりだ? 誰に口をきいている?』
声の圧力が増えていく。
シャレにならない威圧感を前に、
ヒークルは、一気に肝を冷やし、
ブルブルと震えながら、
その場で土下座の姿勢を取り、
額を地面にこすりつけながら、
「も、申し訳ございません……つい、熱くなってしまい……とんでもない非礼を……」
『二度と、同じ注意はしない。次は殺す。わかったな』
「ははぁーっ!!」
そこで、話は終わり、
ガリオとの通信は終わった。
ガリオの監視がなくなると同時、
また、いつものように、
ヒークルがセンに暴力を開始した。
「このくそぼけぇええ!」
と癇癪大爆発で、何度もセンを殴る。
しかし、途中で、ヒークルは気づく。
(……力が……入らない……)
冷や汗を浮かべているヒークルに、
センは、ニコっと微笑んで、
「おやおや、どうしました、ヒークル様。この前までは、多少痛かったのに……今日の拳には、まったく力が入っていないので、全然、痛くありませんよ。まるで、小さな女の子の拳みたい。あはは」
「き、貴様……ふざけるなぁ!」
どうにか、魔力とオーラをひねりあげて、
拳に込めようとするが、
(な、なんで……)
なかなか力が入らない。
力を入れようとすると、頭痛とか吐き気がする。
「ぐっ、なんで、頭が……まさか、貴様相手でも、呪いが発動するように……」
「いやぁ、違うと思いますよ。だったら、もっと、のたうち回っていると思いますので。これまで見た感じの経験則からして」
「で、では、なぜ――」
「単純に、体が疲弊しきっているんだとおもいますよ。回復魔法で傷は癒せても、心やオーラや魔力や体力の消耗は回復できない。まあ、全部回復可能な魔法とかもあるらしいですけど、今、この場には使い手がいないんで、一緒ですよね」
センの言葉を聞いて、ヒークルはストンと腑に落ちた。
確かに、今、自分は疲れ切っている。
休む間もなく連戦につぐ連戦。
相手は常に強大で、常に劣勢。
ギリギリの死闘を繰り返し、
合間、合間で、センというキチ〇イに怒り狂い、暴れ回った。
体力には相当の自信がある方……とはいえ、流石に限界はある。
すべてが疲弊しきった今、ヒークルの身体は、スカスカのスポンジみたい。
「しばらく休んだ方がいいですね。心配しなくとも、その間の街の安全は俺が守りますよ。じゃ、そういうことで」
「ま、待て。話は、まだ――」
止めようとするヒークルをシカトして、
センは、会議室を後にした。
残されたヒークルは、怒り心頭……
だが、疲労感で、怒りを爆発させることもできず、
その場でフラッと、糸が切れた人形のようにへたりこむ。
その瞬間、情けなさと惨めさがこみあげてきて、
ヒークルの目から涙がこぼれた。
「く、くそがぁあああああ……っ」
地面を何度か殴ってみるが、
その拳にも力が入らない。
みっともなく泣きじゃくるヒークル。
と、そこに、
「失礼します」
と、配下の一人が入ってきた。
わずかに生き残っている精鋭部隊の一人。
名前はパッサ。
これまでの死闘を生きのこってきただけあって、
精鋭の中でも指折りの実力者。
存在値は大台の40に到達している逸材。




