273話 ヒリつく交渉。
273話 ヒリつく交渉。
「大ありだ、この、くそバカ野郎ぉおおおおおおおおおお!! なに、火事場泥棒みたいなことをしていやがるんだぁああああ!」
今にも頭の血管がちぎれそうなヒークル。
そんなヒークルとは対照的に、
センは、カラカラと笑いながら、
「でも、クロッカ様からも、そうするように言われてしまいましたよ?」
「あ?!」
「今後は、この街の防衛が難しくなるから、守ってやれ……と直々に命令を受けまして。俺的には、面倒なので、お断りしたかったのですが、クロッカ様は、一度言い出すと、俺の話とか聞かないので……まったく、困ったお嬢様ですよ。ヒークル様も、そう思うでしょう?」
「ぐ……ぐぅ……」
クロッカの名前を出されてしまうと、
流石に、そうそうイチャモンはつけられない。
とはいえ、手段がないわけではない。
センがクロッカを出してくるのであれば、
ヒークルはガリオを出して叩き潰すまで。
社会的な地位は、ガリオの方が圧倒的に上なのだから。
ヒークルは、すぐさま、ガリオに連絡を入れて、豪快に泣きついていく。
もはや、自分で解決しようという気はさらさらない。
ヒークルから、話を聞いたガリオは、
『流石に、そのワガママを認めることはできない』
と、余裕で、ぶった切ってきた。
クロッカは、別に、上に話を通していたワケではない。
『この街の安全をセンエース戦闘団で守れ』という命令は、あくまでも、クロッカが勝手に言っているだけのこと。
『クロッカは私の方で叱っておく。流石に無茶が過ぎる、と』
と、そんなことを言ったガリオに、
センは、
「しかし、ガリオ様。それでは、この街の保全は、どうするのですか? 大ケガを負っているヒークル様一人に、全てをお任せするのですか?」
『どうしても必要なのであれば、こちらから人間の部隊を送る。無理に、魔人の部隊を運用する必要などない』
「そうですか。となると、その部隊とやらが、ここに来るまでの間に、あの大量リッチ部隊級の問題が起きたら、この街は終わりということですね」
『……』
「ありえないとも思えないんですよね。『デス』の力は思った以上に強力です。まさか、あれだけの数のリッチをコントロールできる力をもっているとは……もしかしたら、どんどん成長しているのかもしれませんね。だとしたら、相当ヤバそうだ。……『ガリオ様が送ってくる予定の部隊』が、この街に到着するまで、どうにか、なんとか持ちこたえたとしても……到着と同時に殲滅されるかもしれませんね。街も人も……どんどん消えてしまう……その時には、ヒークル様も、当然死んでいることでしょう」
『貴様の部隊なら、守り切れるというのか?』
「というか、普通にクロッカ様の戦闘団以外、無理でしょ? 今のところ、ある程度自由に運用できて、これだけ強い部隊……ほかにあります? マジで、結構強いですよ。クロッカ様直属の戦闘団」
『あくまでも、自分の部隊ではなく、クロッカの部隊だと言い張り続ける……その忠誠心は認めてやってもいい。龍神族への忠義を確かに感じとった』
「当然じゃないっすか。ガリオ様。俺は、どこまでいっても、龍神族の犬ですワン!」
むちゃくちゃ素直に『センの本音』を記述すると、
センは、『自分の部隊』ということで運用して、自分の名前が売れるのが嫌なのである。
あくまでも、目立つのはクロッカで、自分は、影の実力者……というポジションを絶対に死守したい。
そうじゃないと、『面倒事』を『クロッカに全て丸投げ押し付け』できなくなるから。
そういったところが本音なのだが、
そんな心境が理解できるはずもないガリオは、
センの『クロッカに対する忠誠心だけは本物だ』と誤解し、
結果、
『いいだろう。永遠にというわけではないが……しばらくの間、クロッカの部隊を、カラルームの保安の主軸としよう』




