271話 助けろ、センエース!
271話 助けろ、センエース!
ここまでの総力戦で、
リッチを、合計30体ぐらいは殺している。
この功績は、ハッキリ言って、とんでもない数字。
そのほとんどがセンの手柄だが、ヒークルも、
10体ぐらいは殺している。
これは、ヒークルが、これまで努力してきたから成せたこと。
それは間違いない……のだが……
「ぐぁあああああっ!」
リッチの連携攻撃がクリティカルヒットして、
ヒークルの右腕が吹っ飛んだ。
「う、ぐぅうううっ!」
腕を失い、バランスを崩したヒークル。
そのままドテっと転倒したところに、
リッチの追撃が襲い掛かる。
……もし、ヒークルが、配下を大切にしていたら、
ここで、庇ってくれたりもしたかもしれない。
しかし、誰もこない。
誰も、ヒークルを守ろうとしない。
……ヒークルは、『セラフがくるまで』は、多少、配下に便宜を図って、甘い汁を吸わせていたりもしたが、結局のところは、それも、利益をむさぼり合うだけの関係であり、信頼関係ではなかった。
それに加えて、ここ最近は、配下に対してストレス発散の暴力をふるっている。
……となれば、もはや、誰も、ヒークルを本気で守ろうとはしない。
既得権益に取りつかれた豚の最後は悲惨なものになる、と相場が決まっている。
「ぶぇええあああああああああああああっ!!」
どうにか、リッチの追撃をよけようと体をひねったが、間に合わず、
左足が、グシャっとつぶれてしまった。
「ひぃ……ひぃ……」
こうなってしまえば、もう闘えない。
恐怖と激痛で頭がいっぱい。
逃げたいけれど、片足なので、逃げられない。
この段階に至ると、流石のヒークルも、プライドもへったくれもなくなって、
「センエース!! 助けろぉおおおおお! 私を助けるんだぁああああああ!!」
腹の底から叫ぶ。
残っているエネルギーを、全部、声にぶちこんでいく。
「聞こえないのか、センエース! 私だ! 私を助けるんだ! 私さえ生きていれば、この街は、いくらでも復興できる! 私を助けろぉおおお!」
必死になって叫ぶ……が、
しかし、遠くで闘っているセンは、
「はい?! なんか言いました?! すんません、聞こえませんでした! 今、必死に戦っているところなんで、急ぎの用事以外は、あとでお願いしまーす。しゃしゃしゃーす」
と、全力でオトボケていく。
「センエェェェェェェス!! この糞犬がぁああああああ! 助けろと言っているんだぁああああああああああ!」
腹の底から、街中に響き渡るほどの大声を発するヒークル。
だが、センは気づかない!
ヒークルが叫んでから、数秒経ってから、
「ん? 今、なんか言いました?! だから、緊急の要件以外は、こいつらを倒してからにしてくださいって! 分からん人だなぁ!」
と、面倒くさそうにそう叫び、
ヒークルに背中を向けて、リッチと戦い続ける。
先ほどの叫び声で、ヒークルの喉は完全にかれてしまい、
もはや、大声を出すこともままならない。
そんなボロボロのヒークルを見逃すほど、リッチの性根は甘くない。
大量のリッチが、ヒークルにトドメを刺そうと、わらわら集まってくる。
(死ぬ……死……っ。嫌だ……しにたく――)
と、絶望の底に叩き込まれた、
その時だった。
――空から、
魔法の翼を生やした、10人ぐらいの魔人の集団が降ってきた。
それを見たセンが、
「おお! やっと来たか! 待ちくたびれたぞ!!」
と、歓喜の声を叫ぶ。
降ってきた魔人は、
『ビシャ』と、『ジバ』、
そして、クロッカがかき集めてきた、
精鋭の魔人10人。
――合計12人。
センは、
「よし! ここから伝説が始まる!」
と、勢いよく叫んでから、
先ほどのヒークルの大声よりもさらに大きな、街中に響き渡る声で、
「このクロッカ様直属部隊センエース戦闘団が、アンデッドを成敗する!! だから、安心していい!!」
その声を聴くと、皆、心から安心できた。
とてつもない包容力を感じる。




