270話 全部センエースのせい。それはガチでそう。
270話 全部センエースのせい。それはガチでそう。
逃げる算段を固めていたところ、
そこに、パーリナンとカイがなだれ込んできて、
まず、カイが、
「ヒークル様! 御出陣の準備はできましたか!」
続いてパーリナンが、
「配下の兵たちだけで抑えるのは限界です。ヒークル様、はやく!」
追い詰められていくヒークル。
2人だけではなく、ほかの配下たちも、ぞろぞろと集まってきて、
『どうにかしてくれ』と大合唱。
こうなってしまえば、流石に逃げるわけにはいかなくなり、
結果、普通に出陣するはめに。
街を守る気など、正直、もはや、さらさらないが、
体裁を守るためだけの闘いを開始する。
(なんで、こんな目に……あの糞犬センエースがきてからというもの、私の人生は、ずっと下り坂だ……くそ、くそ、くそ……)
正式に言えば、セラフに襲われたことが原因だが、
そんな細かいことは今のヒークルには関係ないこと。
それに、本質的・実質的な事を言えば、
ヒークルの理解に間違いはない。
事実、センエースが存在するから、ヒークルは、今、地獄を見ている。
★
今回の闘いは、ひどく長引いた。
数十体のリッチという未曽有の危機。
大量の魔法を連発してくるリッチを相手に、
ヒークル&配下たちは、必死になって抗った
その結果、何体かは普通に倒すことに成功したのだが、
時間の経過とともに、徐々に、ヒークル側の戦力が削られていく。
(ジリ貧だ……もう、これは勝てない。相手の数が多すぎる。……さっさと逃げないと……)
なんとか逃げ出そうと、
ここまでの闘いの中で、
ヒークルは、何度か、『配下たちの目を盗んでの脱走』を試みたのだが、
しかし、ことごとく、リッチに回り込まれ、
戦線に連れ戻された。
(死ぬ……死んでしまう……この私が……十七眷属の中でも高位の実力者で、勤勉な努力家でもある私が……こんなところで? バカな……なぜだ……なぜ、世界は、そんなにも理不尽なのだ……私が一体、何をしたという……これほどの罰を受けるほどの罪など犯していないぞ。私は、街のために必死に頑張ってきただけだ。それなのに、それなのに――)
街のために頑張った事など少ないが、
しかし、自分を『庇護』する時には、
誰だって、目一杯の言葉を使うもの。
自分自身への評価が、ことごとく、ご都合主義的に甘くなるのも仕方ないだろう。
だって、人間だもの。
「う、うぉおおおお!!」
怒りに身を任せて、リッチを殺害する。
ちゃんと強いので、部隊の中では、確実に、一番活躍している。
ただ、『怒りをぶつける』という衝動は、そうそう長く続かない。
「はぁ……はぁ……」
リッチを2~3体殺したところで、
『初動的な怒り』は静まり、
『疲労』が脳内をうめつくす。
(苦しい……もう、闘えない……辛い……しんどい……苦しい……息が切れる……力が入らない……苦しい……)
ふと、視線をズラしてみると、
遠くの方で、センエースが闘っているのが見えた。
センエースも、連戦につぐ連戦でボロボロになっていて、
かなり苦戦している様子だった。
一瞬だけ、センに救いを求めたい気分になった……が、
すぐに首を横に振る。
(あいつにだけは……頼らんっ)
まだ残っているプライドを総動員して、
どうにか、リッチとの闘いをつづける。
そんな中で、
「ぎゃああっ!」
自慢の精鋭配下たちが、
「うあぁああああ!」
「ぎゃああああ!」
「た、たすけ――ぎゃああ!」
次々と、リッチの魔法で死んでいく。
――『セラフが襲ってくる前』は、
普通に100人を超えていた精鋭部隊の面々。
しかし、現状、もう両手で数えられるほどしか残っていない。
パーリナンとカイが生き残っているので、まだなんとか闘えているが、
この二人も、だいぶ消耗してきている。
さすがに、『数十体のリッチ』というのは相手が悪すぎた。




