266話 アンデッド×アンデッド。
266話 アンデッド×アンデッド。
「この街の兵隊がアンデッドにボコられたのは、隊の訓練を怠ったヒークル様のせいですよね。……あと、言っておきますが、一般民衆には、あまり損害が出ていませんよ。罪人とかゴロツキとか、あと、魔人とか……その辺に死傷者は出たものの、あれだけのアンデッドが暴れたにしては、被害は最小と言っていいレベルです」
『……』
「デスの強さは想像以上だ……と、これまで、何度も言ってきたでしょ。これでも、頑張っている方ですよ」
『努力を求めているのではない。結果だ。どうやら、貴様は理解が足りていないと見える。……死ぬ気で頑張るのは当然。大事なのはその先にある結果。結果を出さないと、全てを失うぞ。私が貴様に与えた恩恵……決して、永遠だと思うな』
と、しっかり脅しつけられた……その時だった。
「ぎゃあああ!」
という悲鳴が遠くの診療室から聞こえてきた。
今、診療室では、今回の件でケガを負った者たちが治療を受けている。
いったい、何があったのか……と、会議室がザワついていると、
若い兵士が、慌てた様子で、会議室に飛び込んできて、
「異常事態です! 治療を受けていた者たちが、次々に、アンデッド化して暴れております!」
その報告を受けたセンが、
頭をぼりぼりとかきながら、
「どうやら、ドラウグルの攻撃を受けた者は、アンデッド化してしまうようですね。これは、大変だ」
『何を呑気にしている! センエース! さっさと、現場に向かえ!』
「いや、あの……俺、デスとの死闘を経て、魔人たちの選別試験を経て、その上で、ドラウグルとの激闘を経ているので、もう、マジで、体力がまったく残っていないんですけど?」
『そんなことは知ったことか! 貴様の役目は、街を守ることだ! 死ぬ気で抗え!!』
「はぁ……やれやれ、しゃーないですねぇ。あーあ、こんな時にヒークル様がいたらなぁ! 一緒に戦ってほしかったなぁ! なんで、いないんだろう! あ、そうか。トイレかぁ! 腹が痛いんじゃ仕方ないなぁ! ドラウグルの討伐に乗り遅れた俺と一緒だもんなぁ!」
『……くっ』
「あー、大変、大変」
と、そう言いながら、しぶしぶといった風に、アンデッド退治に向かうセン。
なんだかんだ、ごちゃごちゃ言いつつも、
アンデッド化した兵士たちをボコボコにして惨殺し、
被害を最小に食い止めてから、
会議室に戻るセン。
……と、そのタイミングで、
やつれた顔のヒークルが会議室に戻ってきた。
まだまだ、腹痛は治り切っていないが、いつまでもトイレにこもっていられないので、痛む腹を押さえて出てきたのである。
そんなヒークルに、センは、満面の笑顔で、両手を大きくふりながら、
「おかえりなさい、ヒークル様! お腹の調子は大丈夫ですか! 今、あなたの部下がアンデッド化して大暴れしておりましたが、俺が、どうにか食い止めたので、ご安心ください! できれば、ヒークル様にも闘っていただきたかったですが、お腹が痛かったんじゃしょうがないですよね! いえ、みなまで言わないでください! 気持ちは分かります! 俺も、ドラウグルとの闘いの前、踏ん張っていたので! 一緒です、一緒! はははっ」
煽りに煽り散らかしていく、怖い者知らずのセン。
そんなセンに、ヒークルは、イライラが止まらなかったが、
しかし、『トイレにこもっていたせいで、問題が起きている現場に出向けなかった』という事実が負い目としてのしかかったので、結局、何も言えず、黙るしかなかった。
ギギギっと奥歯をかみしめているヒークル。
そこで、センが、ガリオに、通信の魔法をつなげて、
「ガリオ様、今回の俺、当初結んだ契約以上に、だいぶ頑張っていますけど……まあ、今回は報酬の上乗せはしないでおきますよ。それで、ドラウグル戦に参加し遅れたのはチャラってことにしませんか?」




