264話 みんな死んじゃう。
264話 みんな死んじゃう。
ガキどもは、『アイ系』のスキルを持っていないので、ドラウグルがどれだけの化物か正式には分からない。
しかし、あの、濃厚な死の気配が、タダゴトじゃないことぐらいは理解できた。
街には十七眷属ヒークルと、その精鋭部隊がいるから、最終的には討伐できるだろうけれど、でも、それまでに、どれだけの犠牲が出るのだろう……
とか、色々、最悪の未来が頭を駆け巡る。
ちなみに、『実質の話』をすると……現状のカラルームの街の戦力では、ドラウグルを処理することは絶対に不可能。
ヒークルが10人いても、ドラウグルは殺せない。
本来であれば、このままセンが放置していると、確実に、カラルームの街は死都と化す。
5人のガキどもより、まだ、気配察知能力に優れているダカは、
ドラウグルのヤバさが、少しは正当に理解できており、
だから、センの足にすがりつき、
「や、やめさせて! みんな、死んじゃう!」
と、魔人の家族や知人が死ぬことを恐れて、そう懇願してきた。
そんなダカに、センは、呑気な顔で、
「ああ、大丈夫、大丈夫。よく分からんけど、あのアンデッドは、たぶん、魔人は攻撃しないから。カモフラで、ちょっとダメージを与えるぐらいはするかもしれんけど、殺しはしない。性根の腐った兵隊とか、街のやばいやつとかは、まあまあ殺すと思うけど。まともなやつは死なないと思うぜ。知らんけど」
「……」
「まったく知らんけどね。あのアンデッドの生態に関して、俺は無知蒙昧なスイートハニーだから。おっと、語感がよかったから、つい、韻を踏んでしまったが、まったく意味がなかったな。これは、ラッパーとしては最低。意味のない韻は、ただのダジャレだ。ま、俺はラッパーじゃないから、別にいいんだけどね。あははん♪」
「……」
そこで、センは、5人組のガキどもを睨みつけ、
「俺はお前らの躾で疲れ切っているから、しばらく出動できない。ここで、じっくりと体力を回復させてから、あのアンデッド討伐に乗り出す。その間に殺された住民や兵隊がいたとしたら、それは、お前らの責任だ。お前らが、魔人のガキに石なんか投げなければ、俺は体力満点、勇気リンリンで、すぐに、アンデッド討伐に出撃できたのに。あーあ、かわいそう。町の人、かわいそー。お前らのせいで苦しむとか、ないわー」
センの言葉で、ガキどもは涙ぐむ。
センの言葉の、どこまでの何が本当か、さっぱり分からなくて混乱。
世知辛いカオスの中、家族や知人の命を心配することしか出来ない。
★
結果だけを言えば、
最終的に、ドラウグルは、センに撃退された。
センに討伐されるまでの間、ドラウグルは散々、街中で暴れ散らかした。
ヒークルの配下の兵隊とか、街のゴロツキとか、幽閉されている罪人とか、
その辺を、ボッコボコのズッタズタにして、何人かぶっ殺して、
討伐にきた魔人たちを、カモフラでケガさせて、
街を棄てて逃げようとするヒークルをとっ捕まえて、
ボッコボコのフルボッコにして、
そうして、街全体が大ダメージを受けたところで、
ようやく、
「呼ばれて、飛び出て、じゃじゃじゃじゃん! 俺がトイレできばっている間に、好き勝手してくれたようだな! もう許さんぞ! 俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ!」
主役の登場。
センは、ヒークルや、生き残っている兵隊たちや、カイやパーリナンたちの前で、
ドラウグルと激闘を演じ、ボロボロになる演技もはさみつつ、
「くらぇええええええ! 異次元砲ぉおおおお!」
存在値150をちょうど殺せるぐらいの異次元砲を放ち、
ドラウグルを完全消滅させてみせた。
――こうして、カラルームの街は救われたのであった。
ありがとう、センエース。
さようなら、センエース。
めでたし、めでたし。




