257話 さて、どうしたものかな。
257話 さて、どうしたものかな。
ディックは、手ごろな石を拾うと、
手の中で、二度ほど、ポンポンと遊んでから、
「投擲ってのは、こうやるんだ」
そう言いつつ、それなりに洗練されたフォームで、
グっと腰を回転させ、ヒュンッ!
と、勢いよく石を投げる。
「ぎゃっ!」
スキル的に、そこまでコントロールがいいわけでもないが、
たまたま、いい感じに、ダカの足に、石が命中。
もちろん、大ケガを負ったダカは、
その場でうずくまり、血が出ている足をおさえながら涙を流す。
その悲惨な様子を指さしながら、
ディックは、嬉し気に笑い、
5人のガキどもに、
「どうだ。なかなかの腕前だろう。昔から、モノを投げるのは得意なんだ。ま、今回はたまたまだけどな。連続で当てろって言われたら、ちょっと厳しいが……」
などと言いつつ、また石を拾って、
ヒュンっと、ダカに向かって投げつける。
今度は普通に外れてしまい、
「あー、まあ、こんな感じだ。……あの魔人が、大げさにうずくまらず、立っていてくれたら、当たったんだけどなぁ」
などと、楽しそうに、そういう。
石をぶつけられたダカは、今もずっと、大ケガした足をおさえてのたうちまわっているが、そんなダカを心配することなどサラサラなく、
ディックは、5人の子供たちにも、
「ほらほら、お前らも、俺の真似をして、やってみろよ」
と、うながしていく。
「しっかりと、腰を回して、腕を強くふる。できるだけ、頭を狙うのがいいぞ」
「え、でも……頭だと……死んじゃうんじゃない?」
「いいんだよ。放っておいたら、どんどん増えるからな。たまに、間引いた方がいいんだよ」
5人の子供たちは、ディックと違い、さすがに、
のたうちまわっているダカに引いていたが、
時間の経過とともに、
『苦しんでいるダカ』という現象にも慣れたので、
「よーし、やってみるかぁ」
と、ガキ大将が、唇をなめながら石をひろって、
ディックの真似をしながら石をヒュっと投げた。
一回や二回見ただけで、フォームが安定することなどなく、
先ほど同様、ダカに届くことすらない。
だが、腰の回転を意識したことで、さっきよりは遠くに投げることができた。
それを見て、ディックが、
「お、いいぞ。次は、もっと、腕をこうして――」
と、はたから見る分には、
ピッチングコーチと野球少年なのだが、
その視線の先には、のたうちまわっている魔人の子供が一人。
そんなカオスな現場に、
『こういう胸糞が大っ嫌いな男』が登場。
「……さて……どうしたもんかな……」
登場した男――センエースは、
頭をぼりぼりとかきつつ、
ダカの近くまで移動して、
とりあえず、ダカに回復魔法をかける。
一瞬で痛みがなくなったダカは、
現状の諸々に、酷く怯えながらも、
「あ……あり、がとう……」
と、お礼を言った。
「あ、あの、あなたは――」
そんなダカに、センは、
「お前は、ちょっと、しばらく黙ってろ。あっちを先に処理する」
そう言いながら、首をゴキゴキっと鳴らしつつ、
ディックと、五人のガキどもをにらみつける。
そこで、ディックが、
「てめぇ……確か、センエースだったか? 魔人どもの監督者になったから、魔人をかばおうって? はっ……言っておくが、別に、こちとら、悪いことはなんもしてねぇぞ」
「俺の後ろにいるガキ……もう治したけど、さっきまで、めちゃくちゃ血が出ていましたけれど?」
「ちょっとした遊びでケガしただけだろ。それとも、お前は、あれか? 魔人の子供が遊びで、ちょいとケガするたびに、上に泣きついて、一緒に遊んでいたガキを処罰しようって? ふざけんなよ。そこまでやりだしたら、人間社会を殺そうとしているとしか思えないぜ」




