253話 鬼査定。
253話 鬼査定。
ヒークルは頭を抱えて、のたうちまわり、
「くそ、くそ、くそぉおおおお! あのクソアンデッドがぁあああああ!! 絶対に殺してやるぞぉおお! あああああ!! 痛ぇえええええ!! くっそぉおおおおおおおお!」
だいぶ、ぶっ飛んだ状況。
カイへの不快感と怒りが、なかなか消えないため、
今回の痛みは、持続時間が長く、
どったんばったんと、しばらく、のたうちまわっているヒークル。
そんな混沌の中、ヒークルの配下『パーリナン』が、センに近づいてきて、
センに、
「治癒ランク3」
回復魔法をかけながら、
ヒークルに聞こえないよう、センの耳元でボソっと、
「どうして、わざわざダメージをお受けになるのですか。あなた様なら、ヒークルごときの攻撃で、傷を負ったりしないでしょうに」
その言葉に対し、センは、
ニっと笑い、
「こいつは、ただの査定だ。気にすんな」
ボソっとそう言うと、
ゆっくり立ち上がり、
「いやぁ、ヒークル様は強いなぁ。死にかけましたよぉ」
などと、そう言いつつ、
いまだ頭が締め付けられて苦しんでいるヒークルに近づいて、
「頭、大丈夫ですかぁ? なんだったら、撫でましょうかぁ? いたいのいたいの飛んでけーみたいな感じで」
そこで、ヒークルの中で、
カイに対する怒りが、
センに対する怒りへと上書きされて、
頭の痛みが、かなり緩和された。
と、同時、ヒークルは目をカッとかっぴらいて、
「この、くそがぁああああ! ナメんなぁああ!」
またセンを殴る。
愚かしさだけが止まらない、不毛な時間が積み重なっていく。
★
しばらくセンをボコボコにしたことで、
多少は気が晴れたのか、
ヒークルは、
「私は、ガリオ様に連絡をいれ、そのクソ犬の件が事実かどうか確かめる。リバーディ以外は部屋を出ていろ!」
と、命じられ、セン、カイ、パーリナンの三人は、ヒークルの執務室から出た。
部屋を出て、扉をあけると、
カイが、
「だ、大丈夫でしたか、セン様……そ、相当なケガでしたが……」
と、心配そうに声をかけてきたので、
「平気、平気、僕の頭は親方のゲンコツよりかたいんだ」
「……?」
「そのアホを見る目。いいねぇ」
「あ、アホを見る目などしておりませんっ」
「いいんだよ、気にするな。実際、俺なんて、だいぶアホなんだから。全力で見下していけ。それでちょうどいい」
と、そこで、センの影から、
ヌっと、バチギレ顔のセラフが、
『不可視化状態』で飛び出してきて、
センに対し、勢いよく、
「セン様! どうして、あのようなカスに、好き放題攻撃させたのですか! 攻撃させただけならまだしも、わざわざ、肉体のガードを解いて、ダメージを受けすい状態にして!」
「いや、だって……そういう査定だったから……あいつの拳の重さをはかるためには、俺自身の肌感で受け止める必要があったわけで……」
セラフの凄まじい勢いにタジタジになるセン。
セラフは、センの言い訳を一切考慮することなく、
自身のお気持ちだけを、全力でぶつけていく。
「ご自身の価値を、どうして、そうまでも、ご理解いただけないのか! あなた様は人類の……世界の宝! あなた様が無意味に傷つくことなど、あってはならぬのに――」
「うるせぇ、うるせぇ……お前も、ビシャも……どうして、そう、鬱陶しいんだ……」
と、心底鬱陶しそうに耳をふさぎつつ、
センは、比較的マジメな顔で、
「いいか、俺は基本的に、やられた分を返す。たまに、『やられてなくてもやり返す。100倍返しだ』という暴挙に出ることもあるが、基本は『右の頬を殴られたら、相手の右頬にクロスカウンターをいれる』。……あのアホから受けた痛みは、いずれ全部返すぜ、灼熱に変えて。……あと、カラルームの魔人が受けてきた暴力の分も返す。因果に対する応報。『てめぇがこれまでに何をしてきたのか』を必ず、痛みで理解させる。そのための儀式みたいなもんだ。『俺の道理』を通すために必要なプロセスなんだよ、この一連は。わかるだろ?」
「まったく分かりません。あなた様が傷つく必要など、どの角度から考えても、存在しえない」




