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252話 芯がねぇ、なにもかも。


 252話 芯がねぇ、なにもかも。


「どうやら、この呪い……『弱い魔人』じゃないと発動しない呪いっぽいすねぇ。……俺は、強いんで、効果の範囲外っぽいです。どうせなら、俺も、呪いの圏内に入れてくれりゃいいのに、残念」


「く、くそが! ふざけやがってぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


 とバチギレになって、

 またセンをボッコボコに殴る。


「ちょっと、ちょっと、ヒークル様……流石に、そろそろ、勘弁してくださいよ。あのアンデッドを追い返したのと、Ⅾ地区の魔人たちを選別したので、もう、魔力もオーラも使い果たしちゃってんですから……さすがに、もう、余裕のフリはできないっすよ」


「ほう……なるほど……頑丈なのは間違いないものの……流石に、無限のタフネスというわけではないか……くく」


 ニタァと笑ってから、


「ほかの魔人相手ならともかく、貴様が相手なら、何の制限もない……とことん痛めつけてやるぞ」


 そう言って、ヒークルは、センを過剰に、ボコボコにしていく。


 ぶっちゃけ、センからすれば、大した攻撃でもないが、

 センは、あえて、『自身の肉体に対する魔力とオーラの供給』を切って、

 ヒークルの攻撃が、そのまま通るようにする。

 ノーガードの肉体は、ヒークルの暴力によって大いに傷つく。

 血があふれ、骨が折れ、青く、黒くなっていく。


 まっすぐな痛みの中で、センは、


(芯のねぇ攻撃だ。だから、痛いだけで、響かねぇ)


 ノーガードなので、当然、痛みは感じている。

 タンスの角に小指をぶつけたら、当然痛い。

 ……センからすれば、ヒークルの攻撃は、そんなもの。

 野球で言えば、ノビのない棒球。


(マジで、なんの価値もねぇ……よくも、まあ、そんだけ『無価値』でいられるものだ。無価値……じゃねぇか。フラットじゃねぇ。マイナス。シンプルな害悪。純粋な公害。生きているだけで、周囲を不快にさせる腐ったミカン)


 心が静かになっていく。

 むしろ、穏やかになっていく魂。


 センをボコボコにしたヒークルは、

 センの目を見て、


「な、なんだ、その目は……」


 査定を終えた『センの瞳』は、

 ヒークルごときでは理解できない深淵を覗いている。


 深く、重く、遠く、

 ここではないどこか、

 ヒークルの底の果てをのぞいているような強い目。


 センの強すぎる目は、

 ヒークルに、最大級の不快感を与えた。


 理解できない恐怖……なぜか沸き上がる劣等感。

 心がザワつく。

 心を隠すように、怒りが無為に台頭してくる。


「ふざけた目をするなぁあああああああ!!」


 全力でセンを殴ろうとしたヒークル。

 気絶させたい、殺したい、消し炭にしたい……

 とにかくセンを終わらせたくて放った拳。


 その拳を、

 ――ヒークルの配下の魔人である『カイ』が、


「ヒークル様! 死んでしまいます!」

 

 そう言いながら、止めに入った。


 それまでずっと、黙って見ていたカイだったが、

 流石に我慢の限界……という表情だった。


 カイは、この前の闘いで、

 センの実力を『龍神族以上』と認識しているため、

 『ヒークル程度の攻撃で死ぬようなことはないだろう』と思ってはいた。


 しかし、あまりにも、センが、えぐい感じでボッコボコにされているので、

 普通に、『え? 大丈夫? あなた様に死なれたら困るんですが』という気持ちが先行して、

 つい、こうして、飛び出してしまった。


 カスみたいな魔人に邪魔をされて、ヒークルのイライラが有頂天に達する。

 この怒りはしばらくおさまることを知らない。


「邪魔だ、ボケェエエエ!! てめぇも死ね、糞虫ぃいいいいいいいいいいいいい!」


 と叫びながら、カイを殴ろうとするが、

 そこで、もちろん、


「っっ!! うっがぁあああああああああああっっ!」


 頭が割れるように痛くなる。

 学習しないおバカさん。

 いや、学習はできているのだが、しかし、感情が先にきてしまうアホな癇癪持ち。



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― 新着の感想 ―
センさんの格の違いがエグい……!ボコボコにされてるはずなのに、精神的に圧倒してる描写にゾクゾクしました。 「タンスの角に小指」レベルの攻撃でしかないっていう比喩が最高に皮肉が効いてて好きです。
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