251話 ご報告。
251話 ご報告。
ある程度の地位についている者は、常に、『自分より地位が上の者』への非礼を過敏に恐れている。
非礼による叱責は、失職と直結しているから。
だから、『非礼』を働く可能性をなるべく排除するため、
『接触そのもの』を忌避するようになり、
結果として、
「こ、この件は、ヒークル様に相談する。貴様が勝手をしたこと、すべてをな!」
そう言って、リバーディは、ヒークルのもとへと走って向かった。
センは、数秒かけて、どうしようか考えたが、
どうせ、呼び出しを受けるだろうと思ったので、
そのまま、リバーディのあとを追った。
★
リバーディがヒークルのもとに辿り着いたタイミングだと、
まだ、ヒークルはセンの魔法の効果で眠っていたままだった。
眠っているところをたたき起こすと、
ヒークルから叱責される可能性があるので、
リバーディは、頭をばりばりとかきながら、
「くっ……」
と、苦虫をかみつぶしたような顔をするばかり。
あとから追いついたセンは、
サクっと無詠唱で、ヒークルを起こしていく。
「ん……んん……」
先ほどのリバーディ同様、
軽くフラつきながらも起き上がるヒークルに、
リバーディが、
「お目覚めなられましたか! ちょうどよかった! ヒークル様、ご報告があります!」
そのままの流れで、
センの問題点を、そのまま伝えていく。
ちなみに、周囲には、ヒークルの配下であるカイとパーリナンの二人もいる。
この二人は、先の闘い(試験)で、センの力を見たことで、センに絶対の忠誠を誓っているが、
センから、
『しばらくは、普通に、ヒークルの配下として過ごせ』
と命令されているので、これまで通り、ヒークルに仕えている。
――『ヒークル』は、最初、寝起きでボォっとした顔をしていたが、
しかし、報告を受けると、毎秒事に、顔が赤くなっていき、
「バカ犬ぅうう!!」
と叫びながら、
ダっと飛び出して、
センの顔面にガツンと一撃ぶちかましてきた。
別に痛くもかゆくもなかったが、
センは、あえて、
「ぶへぇ!」
と、血を吐いてみせつつ、後方に吹っ飛ぶ。
倒れたセンに馬乗りになって、
ヒークルは、何度も、センを殴り、
「貴様、どれだけ勝手なことをしたら気がすむ! 貴様のような、ただの犬には何の権限もないんだ! いったい、何様のつもりで好き勝手している!! 魔人の選抜テストで、試験官としてかかわることは許したが、それは、リバーディの雑用係をしてもいいという意味でしかない! 私の街において、貴様主導で行っていいことなど何一つとして存在しない! 調子にのるのもいい加減にしろ!!」
権力を『勘違い』した輩は、
『下だと思っている者』の勝手を許さない傾向にある。
『下の者は何をするにも上の許可が必要だが、上の者は何をしてもいい』
……それが、『権力の意味を勘違いしている者』の基本思想。
「もう許さん! 魔人全員に罰をあたえる! 連帯責任だ! 貴様の罪を全員で償ってもらう!!」
と、叫んだ直後の事。
ヒークルの頭が、
「ずぁっ!」
急にギギギギっと締め付けられる。
まるで、孫悟空の『きんこじ』。
「な、なんだ! どうなっている! ぬぉおおお! 頭がぁああああ!!」
と、ピーピーわめく、『連帯責任フリークのヒークル』に、
センが、
「ああ、どうやら、ヒークル様……呪われているようですね。これは……おそらく、あのアンデッドの呪いでしょう。『魔人に悪意を示す』と頭が割れるように痛むっぽいです。気をつけてください」
「なんだとぉ?!」
言われて、ヒークルは、自分の中にある、
『魔人を折檻しよう』という気持ちをムリヤリ抑え込んでみた。
すると、それに比例して、本当に痛みがおさまっていく。
「ふぅ、ふぅ。く、くそ……あの糞アンデッド……厄介な呪いをかけやがって……ん?」
そこで、ヒークルは気づく。
「い、いや、しかし、貴様を殴った時は、何もならなかったぞ! 貴様も魔人だろう!」




