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250話 王という不自由。


 250話 王という不自由。


(国が枷になるという考え方も分からないではないが、強大になりすぎるという懸念もある。独立宣言からの宣戦布告……などという最悪の未来の可能性だって、ゼロではない……)


 不安視しているフチアの向こうで、

 ガリオは、続けて、


「センエースに国と臣民を与えておけば、それを人質にできるような気もするのだ。全てを失いたくなければいうことを聞け……と。王の利権という枷は、想像以上に自由を奪う。権利の専有は、時に最大の重荷となる」


 天帝の一族として生きてきた者ゆえの重い言葉。

 その帝王学に関しては、フチアの理解の範囲外。

 だから、フチアはもう何も言わない。


 心配そうな顔をするばかりのフチアに、

 ガリオは、


「そんな顔をするな。別に、あいつを『絶対に王にしたい』と言っているのではない。将来的に、その可能性も見据えておいた方がよいと思っただけだ。他にも、いくつか、あいつの動向を制御する方法を考えている。……そもそも、あいつの首には、『パルカの首輪』が繋がれているから、もしもの時は、一瞬で殺せる。……もちろん、あの犬がさっき言っていたように、巧妙に立ち回ったら、確かに気づくのが遅れるかもしれないが……あの変態の思惑に、私がずっと気づかないなどということはない」


 それは、絶対の自信……ではなく、単なる、『配下の前ゆえの見栄』。

 過信と呼ぶにはあまりにも脆い、自分自身への期待。

 自分ならセンエースが相手でも互角以上に立ち回れるはずだ……という淡い期待。


 触れる者全員を振り回していく……それがセンエースの妙。

 センエースの狂気という毒がじっくりと蔓延していく。




 ★




 ガリオとの通信を終えたあとで、

 センは、気を失っているリバーディを、『きつけ』の魔法でたたき起こす。


「……ん……」


 意識を取り戻したリバーティは、


「な……何が……」


 フラつきながらも立ち上がり、周囲を確認する。

 そんな彼に、センは、


「ようやくお目覚めですか。いくらなんでも働きすぎですよ、リバーディさん。いつか、死んじゃいますよ」


「おい、バカ犬……何がどうなった? 私はいったい――」


「魔人の選抜試験を始めようとしたら、突然、貧血で倒れたんですよ。まあ、貧血か寝不足か心疾患かしりませんけど、とにかく、あなたが、急にぶっ倒れちゃったので、仕方なく、俺だけで、魔人の選別をやらせていただいて、先ほど、ちょうど終わったところです」


「か、勝手に――」


「それで、俺、ここの魔人どもが、気に入ったので、ガリオ様にお願いして、頂くことにしました。今後、この街の魔人は全員、俺のものですので、勝手に使ったりしないでくださいね」


 あまりにも好き勝手なことをほざくセンに、

 リバーディは、寝起き直後だというのに、

 カーっと顔を真っ赤にして、


「めちゃくちゃなことをほざくな! ガリオ様が、貴様のようなバカ犬に、そこまでの温情を与えるものか! バカな嘘ばかりをほざくのもたいがいにしろ!!」


 バチギレのリバーディに、

 センは、プクゥとふくれっ面で、


「嘘じゃないですよ。そんなに疑うなら、もう一度、ガリオ様に通信して、リバーディさんに繋ぎますんで、ご自身で確認したらどうですか?」


「っ」


 リバーディは、体全体で、一度、尻込みしてから、


「ふ、ふざけるな……そんなばかばかしいことを確認するためだけに、ガリオ様の御時間をとれるかっ」


 こうなってくると、センの話が真実か嘘かはどうでもいい。

 ガリオほどの『上』におうかがいをたてるとなると、

 普通に、色々と問題が起きてくる。


 ある程度の地位についている者は、常に、

 『自分より地位が上の者』への非礼を過敏に恐れている。

 非礼による叱責は、失職と直結しているから。



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― 新着の感想 ―
ガリオがセンエースを「人質(王の座)で縛れる」と考えている傍らで、地の文がそれを「見栄」や「淡い期待」と一蹴する演出にゾクゾクしました。支配しているつもりが、 いつの間にかセンエースの毒に侵食されてい…
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