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249話 無限のワガママ。


 249話 無限のワガママ。


「……と言うわけで、ガリオ様、どうか、俺の頼みを聞いてくんなまし。俺の豊かな性生活のためにも!」


『……いいだろう。ただし、これが最後だ。もう二度と、貴様のワガママは聞かない。これが本当に最後の最後――』


「あ、それは、ダメですね。報酬要求の打ち切りとか冗談じゃない。今後も、働いた分の報酬はいただきます」


『貴様、どこまで……』


「普通のことしか言っていないですよ、ガリオ様。誰よりも勤勉に働くので、報酬をください。で、たまにボーナスもください。……俺、何かおかしなこと言ってます?」


『……』


 そこで、ガリオは、少しだけ考えてから、


『……いいだろう。ただし、貴様に対する要求水準が高くなることは覚悟しておけ。今後も、馬車馬のように使い潰してやる』


「あざまーす! 了解でーす!」


 ★


 ――センが通信魔法を切った直後のこと、

 ガリオは自室で大きくため息をついた。

 疲れた顔をしているガリオに、

 彼の側近であるフチアが、


「よろしいのですか?」


 と、静かなトーンで声をかけてきた。

 ガリオは、彼女に、『接続』の魔法を使っていたので、

 センとガリオの対話内容は、すべて把握できている。


 ガリオは、疲れた顔で、天を仰ぎ、


「……よろしくはないな。あいつのワガママを許し続ける事は、もちろんできない」


「このままだと増長し続け、際限がなくなります。いずれは『少数の魔人』だけではなく、『龍神族の持つ利権』をも望み出すやもしれませんよ」


「ソレはないな」


「なぜ言い切れるのですか」


「あいつは、バカじゃないからだ」


「……」


「あいつは賢くないが……狡猾で、周到で、なにより、忍耐力がある。タフで強固な交渉術は、そんなあいつの気質の現れ。『ひたすらに過剰なピエロを演じ続ける理由』に関しては、正直、掴み切れない部分があるが……ある意味で、そこにも、やつの底知れない忍耐性が垣間見える」


「ずいぶんと高く評価しているのですね」


「評価しているのではなく、危険視している。やつは、龍神族の権利までは求めないだろう。狡猾だからこそ、絶対に通らない要求は口にしない。あいつは、いつだって執拗に『ボーダーライン』と向き合い続けている。どこまでの要求なら通るか……というのを、徹底的に考え、常に、ギリギリのラインをついてくる。そんなやつだからこそ、今後も、執拗に、魔人を集めていくだろう。いずれは、魔人だけの国などを作りかねない」


「そして、魔人たちの王に……『魔王』になる、と?」


「そうなる可能性は大いにある」


「近い将来で、やつが『魔王』を求めたとして……ガリオ様は、それをお認めになるので?」


「……」


 そこで、ガリオは、少しだけ思案してから、


「…………最初はありえないと思っていたが……こうなってくると、もはや、許可してやった方がよいのではないかと思いはじめている」


「……な、なぜ、そこまで、寛容に――」


「寛容とは違う。優遇処置ではない。……あいつに『属国の王』の地位を与えた方が、便利に使えそうな気がするのだ。下手に放し飼いするよりも、国という器に閉じ込めておいた方が管理しやすい気がする。あいつが統治する国は、……属国として、財布として、もしもの時の防波堤として……便利に活用できるかもしれない」


「……危険視しているといいながら、国を与えると……矛盾しておられませんか?」


「愚者と刃物は使いようだ。危険性と利便性は、いつだって表裏一体。すべては、使い手のリテラシー次第。私なら……あの犬を、うまく扱える。クロッカには無理だろうがな」


 ガリオは、臆病者で慎重……しかし、だからこそ、

 『それだけではダメだ』という意識が人一倍あったりもする。


 そんなガリオの心境が理解できるフチアは、心の中で、


(……あのバカ犬の扱いは確かに難しい。力ずくで抑えようとしても、苛烈に反発してくる。かといって、安易に力や箱を与えてよいものか……)



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― 新着の感想 ―
「俺の豊かな性生活のためにも!」というフリからの、 報酬打ち切りは冗談じゃないという本質的な交渉術。 ガリオが「狡猾で周到」と評する通り、 ピエロを演じながらも、常に利益を最大限に追求する姿勢が本当に…
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