243話 約束。
243話 約束。
続けて、ツカは、思う。
(私が絶死を使えば、この男を殺すことはできないが……ダメージを与えることはできる。この男は、そのダメージにビビって、ここまで、絶死を嫌っているのか? だとしたら、小さい。吐き気がするほど小さい。……どうして、そこまで小さくなれる。それだけの……達人の領域に到っていながら……どうして……)
色々と悲しくなってくるツカ。
己の身に降りかかり続ける不条理。
この世の地獄。
すべてに対して、強い怒りと憤りを感じる。
……そんな全てを飲み込んだ上で、
ツカは、キっと、センを睨みつけ、
「約束は……絶対に守ってもらう」
そう言ってから、
センに突撃を決めこんだ。
全身全霊。
一点集中。
とにかく、センに一撃いれることだけを考えて、
ツカは闘い続けた。
センは、そんなツカの攻撃を回避しつつ、
(……すごいな、このガキ……覚悟の決まり方が、摩訶不思議アドベンチャーの次元に達している……)
めちゃくちゃ、普通に感心していた。
(クロッカに匹敵する器の持ち主……こいつを発見できたのが、今回の最大の収穫だな)
ツカは、加速していく。
どんどん動きが切れていく。
それを見たセンは、
さらに、大きく感心し、
(……追い込まれて、才能が開花する……ってのは、よくある話。こいつの現状はそれ。この極限状態で、ビビって身をすくませるのではなく、大輪の花を咲かせた……見事だ)
命の鉄火場でこそ、魂の本当の価値が分かる。
それが、センの哲学。
正しいかどうかは、この際、どうでもいい。
とにかく、センは、その哲学を軸にモノを考える。
そんな哲学の方程式にあてはめると、
ツカは、間違いなく最高位。
――だからこそ、センは、
「良い動きをしている! 感動的だな! だが、無意味だ!」
そう言いながら、
芸術的な動きで、ツカの足を払う。
「うおっ!」
グルンと宙で半回転するツカの頭を掴み、
地面にたたきつけようとして……地面にぶちあたる直前で寸止め。
ツカは理解する。
もし、センが手を止めなかったら、
自分の頭は、地面にたたきつけられて、つぶれたトマトみたいになっていただろう、と。
その上で、先ほどの、センの動きが頭の中でリフレイン。
あまりにも強すぎる。
自分ごときでは、どれだけあがいても勝てない。
一撃を入れる事など不可能。
それを理解したツカは、
ボロボロと涙を流しながら、
「お願い……します。……何でもしますから……もう……みんなを……イジメないで……」
必死に、そう懇願する彼女に、
センは、
「……俺の採点は死ぬほど厳しいから、なかなか出ないんだがな……」
「……ぇ……」
「誇れ、ツカ。お前に、花丸満点をくれてやる」
「……」
意味が分からず、ただ涙だけが止まらない……
そんな彼女を、
センは、そっと抱きしめて、
「お前の望みを全て叶えてやる」
ハッキリと、ごまかすことなく、濁すことなく、そう言い切った。
「腐ったゴミ貴族どもは全て排除する。魔人を差別するこの世界の支配構造を一掃する。まともに生きているやつが、まっとうに幸せになれる世界をくれてやる」
「……」
「だから、もう泣かなくていい」
言葉が、
ツカの中に、しみわたる。
先ほどまでのセンと、今のセン……あまりにも発言の内容が違い過ぎて困惑が止まらない。
意味が分からず、頭がぐるぐるとまわる。
結果、涙が止まらない。
もっと加速する。
混乱して、言葉が出ない。
何がなんだか分からない。
そんな彼女を優しく抱きしめたまま、
センは、周囲にいる魔人たちに、
「お前らのことも、しっかりと査定しようと思ったんだが……この『ツカ』が、あまりにも優秀すぎて、こいつの査定だけに集中してしまった。その点は、謝っておこう。あとで、また、お前らの査定もしっかりやっておく。一次試験での動きを見た感じ……幹部候補生は、他にもいそうだが……とりあえず、現時点での二次試験合格者は、ツカ一人だな。ツカが基準だと誤解するなよ。こんなもんをラインにすると、他のやつ誰も合格できねぇから」




