238話 基本、全部足りない。
238話 基本、全部足りない。
20人の魔人たちの中には、かなり高品質なアタッカーもいた……が、
(なかなか、いいセンスだ。相当な火力を出せているじゃねぇか。……けど、その溜め時間の長さと、吐くほど遅い発射速度だと……同格以上の相手に当てるのは無理だって……)
一瞬、『いっそ当たってやろうかなぁ』とも思ったが、
『それは、こいつのためにはならない気がする』という判断から、
ヒョイっと軽く回避するセン。
自慢の一撃を回避された魔人――『オリ』は、
「く、くそぉ! 避けられた! ちくしょぉおお!」
本気で悔しがっている様子を見て、
センは、
「なぜ当てられなかったか、優しい俺が教えてやろうか! 足りなかったからだ! お前に足りないもの! それは、情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりも! 速さが足りない!!」
と、ファントムに乗せつつ、ゴリゴリのアドバイスを伝えていく。
そんなセンの『影』から、
「……鬼毒ランク4!!!」
一人の魔人が飛び出してきた。
5~6歳ぐらいの、かなり幼い少女。
だが、存在値は40を超えている。
センの死角をつき、密かに、影へと潜み、機会をうかがっていた彼女。
名前は、ツカ。
完全な奇襲だったので、ツカの鬼毒は、ガッツリとセンに通った……
と、ここにいる魔人たちは思っている……が、
もちろん、センは気づいていた。
戦闘中のセンエースの集中力と視界の広さをナメてはいけない。
ツカが影に潜ったことも、
奇襲を狙っていたことも、全て、完璧に把握していた。
だから、避けようと思えば、鼻歌混じりに避けることも出来たが、
しかし、なかなか見事な奇襲だったので、褒美として、
――あえて受けてやった。
オリの鬼爆砲は、色々と粗かったから避けたが、
ツカの鬼毒は、全体的に精度が高かったから受けた。
この辺の線引きがシッカリしているのが、センエースの特徴の一つ。
センエースは、テキトーやっているように見えて、
案外、自分の中での『基準』『ルール』『線引き』は、かなり大事にしている。
ツカの毒を受けたセンは、
その毒を、しっかりと味わいながら、心の中で、
(……いいタイミングの奇襲だった。毒の威力も申し分ない。クロッカの毒と比べたら薄味だが、それは、流石に比べる相手が悪すぎる。年齢的にも、こいつの方が、クロッカより、かなり幼いしな。将来的には、相当な毒使いになるだろう)
と、ざっくりと総評を並べていると、
そこで、
魔人たちのリーダーポジについている『ソス』が、
「ツカの鬼毒が完全に入った! 時間さえ稼げれば、毒殺できる!! もう攻撃はしなくていい! 徹底した持久戦に持ち込む! 全員で耐えるんだ!」
全員に号令を出し、耐久作戦を指示する。
魔人たちは、それぞれ、センから一定の距離を取り、
サポーターは、回復系や防御系の魔法を駆使して、
生き残ることだけを考える。
ちなみに、その間も、ずっと、雷鳥弾は、その辺を飛び回っており、
魔人たちは、しっかりと、回避しつつ、センの動向に睨みをきかせている。
それら、一連のムーブを目の当りにしたセンは、
(……個々の練度は低いが、連携に関しては、なかなかうまい事、取れているな……ヒークルが管理する街で魔人として生きるのは、相当困難な道だったはず。その過酷な生活の中で、『助け合い』の精神を磨いてきた感じか……)
地獄の底で生きてきたからこそ磨かれる力……というのもある。
Ⅾ地区の魔人たちは、カイやソスを中心として、
これまで、どうにか、協力しあって、
ヒークルや、その配下たちからの理不尽に耐えて生活してきた。
苦しい人生だったが、そのおかげで、忍耐力や連携力に関しては磨かれた。
――だから、『センエースを相手に命がけで戦わなければいけない』という、この過酷な環境でも、20人全員が、歯を食いしばって、前を向くことができる。




