235話 犬の試験官さん。
235話 犬の試験官さん。
現状は、『魔人たちの特質に関する聞き取り調査』が、あらかた終わったところ。
それぞれ、存在値がどのぐらいで、どんな魔法が使えて、どんなスキルがあって、戦場ではどのポジションで動けるか。
最低限の情報は出そろったので、そろそろ、実技試験で、それぞれの実際の動きを見ていこう……と思った矢先、
「やってますね、リバーディさん。お疲れ様でーす」
「……貴様は……ガリオ様のところの……」
「はい。龍神族に可愛がられているペット、センエースです!」
「……話は聞いている。噂のアンデッドを撃退するのに役立ったらしいな。そこに関してはよくやったと褒めておく」
リバーディは、いわゆる、一般的な人間。
魔人のことを『下等生物』だと認識しているが、だからといって、極端な差別行為を取ることはない。
魔人に対する嫌悪感等は、ヒークルやオンドリューと大差ないが、
『ものにあたる暴力的な性格』ではないので、
イラついたからといって、すぐに魔人を殴るようなマネはしない。
「……それで、ガリオ様の犬が、何のようだ? 私は魔人の選別で忙しいのだが?」
「その役目を、ヒークル様に任されたのです。おそらく、魔人のことは、魔人が見た方が色々、はやいし、確実だし、都合がいいと思ったんでしょうね。というわけで、リバーディさんは、どうぞ、お帰りになって、ごゆるりとお休みください」
「……」
「どうしました? なんですか、その目は。まさか、俺が嘘をついているとでも? ヒークル様の御膝元である、このカラルームの街で、魔人である俺が、好き勝手なことをしているとでも?」
「ありえない話だな……」
「その通りです。というわけで――」
「しかし、私はヒークル様から、直接、魔人の選別をするように命令をされている。貴様の言葉と、ヒークル様の言葉、どちらを重視するかと言えば、当然、後者だ」
「じゃあ、一緒にやります? 俺は別にそれでもいいですよ。こんな魔人相手の雑務なんて、便所掃除みたいなもの。ダルいだけの雑務は、俺がパパっと片付けてさしあげようと思っていましたが、一緒にやりたいなら、お好きになさってください。俺は別に困りません」
「……」
「ほかに何か?」
「いや、特にない」
「じゃあ、さっそく始めましょうか。えっと、そちらにある資料が、こいつらのデータですね。ちょっと拝見」
そう言いながら、リバーディが『先ほどの聞き取り調査でまとめた資料』を、パラパラとめくっていくセン。
その途中で、センは、
「リバーディさん、優秀ですねぇ。大事な情報だけを的確に記入して、どうでもいい情報はしっかりと排除している。いいですね。いいですね」
これは、おべっかではなく、ただのガチの感心だった。
センは、資料をまとめるとか、そういう細かい仕事は、それほど得意ではない。
というか、実際のところ『得意なこと』が少ない。
センは、アホほど鍛錬を積んできたので、存在値だけはバカみたいに高いが、所詮はそれだけの魔人。
『バカみたいに鍛えたから強い』というだけで、それ以外には何もない凡人。
パラパラと、データを確認していく中、
センは、心の中で、
(存在値は、だいたい30前後……ヒークルの精鋭部隊の連中とだいたい同じぐらい。……で、『40台前半』が5人ぐらい……こいつらは、『ヒークルの精鋭より上』だが、魔人だから重要なポジションにはついていない……性能は高いから、時折、力仕事や汚れ仕事で駆り出されることはあったっぽいが、基本的には奴隷としての雑務がメイン。どいつもこいつも、まともに訓練を受けていないから、鍛えたら鍛えた分だけ伸びそうだな。とりあえず、ここにいる連中を全員、ヒークルと同等かそれ以上にはしたいところ……)




