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過疎ゲーが現実化して萎えてます。  作者: ペリ一
本編

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60/339

駆ける盗賊


 ソリコミくんが来た道を戻っていってから数十分後。

 弛緩しきっていた空気が、突如としてピリついたモノに変わる。


「……お前、どうなってもしらねぇからな」


 俺に捕まったままのガキが生意気な口を叩く。

 異世界遠征初日にして特大のトラブルに巻き込まれイライラしている俺は、腹いせでそいつの二の腕をぐに、とつねった。


「いででで!おま、前!前見ろ!」


「はあ?……あ、えぇと……こんにちは」


 気が付けば、眼前に……いや違う。

 あまりの圧迫感に眼前に立たれていると錯覚した程の、獅子の如き雄雄しさを持った大男。


 そんな男が、ソリコミくんを連れて立っていた。


「……」


「キプロスの兄貴、到着しましたぜ」


「……」


 大男が屈み、ソリコミくんに何やら耳打ちをする。


「なるほど。おいお前、名前はなんという」


「……ガッテン、だ」


 一瞬言うまいか悩んだ結果、名前を勝手に借りる事にした。


「……」


「ふむふむ」


 さっきからそのソリコミくんを一旦経由して話すシステムなんなの?


「ガッテン、お前の友人を連れてきた。現物を見せてやるからそのガキを解放しろ」


 そう言うなり、路地から、鎖でガチガチに固められたモータルがチンピラ共に引きずられるようにして現れた。

 モータルの左右はガチガチに武装した屈強な男達が囲んでおり、物々しい雰囲気が漂っている。


 警戒レベル高すぎるだろ。どんだけ暴れたんだお前。


 口を塞いでいた猿轡さるぐつわが外され、モータルがこちらに声をかけてくる。


「タカ、悪ぃ」


「ん?ああ。まあ、一週間もありゃこのぐらいの揉め事は起こると思ってたよ」


 俺とモータルが言葉を交わすのを待った後、ソリコミくんが声を掛けてくる。


「そら、お望みどおり見せてやったぞ。そこのガキを解放しろ」


「……先にそっちから解放ってのは」


「無い。正直に言おうか。俺達にとってそのガキはそこまで重要な案件ではない。よってこれ以上の譲歩は、ない」


「ちょっと待てよ。荷物はどうした?」


「迷惑料として徴収した。主に怪我をした仲間の治療費にあてられる」


 クソっ、なんかごもっともな感じがしてきたが、あの金は領域内の食料事情を改善する為の重要な資金だ。モータルに持たせた分は心持ち少なくしてたとはいえ、四割近くがもってかれるのは痛い。


「……嫌だ、と言ったら」


「そこの男を殺すさ。無論、お前も」


 っかー。こっちはまだ人を殺す心の準備なんて出来てないってのに。


「……仕方ない」


 俺は歩み寄ってきたソリコミくんにガキを引き渡した。


「よし。解放してやれ」


 ソリコミくんの指示により、モータルにつけられていた拘束具の一部をガキに取りつけつつ、モータルを解放した。


 というか大男、居るだけかよ。

 もしや、実権はソリコミくんが握ってんのか?


 と、なるとやはりあのガキは重要な案件だったのだろうか。


 そんな事を考えている間に、解放されたモータルが腕やら首やらをゴキゴキ鳴らしつつ俺の下へ戻ってきた。


「じゃあ、この件はなるべく早めに忘れる事をオススメする」


 そう捨て台詞を残し、ソリコミくん達は去っていった。



「タカ」


「ん?」


「アジトと、俺の荷物のある部屋の位置、だいたい分かるから取り返しに行こうぜ」


 解放された瞬間暴れなかった辺り、そんな事だろうとは思ってたが……


「コンディション整えてからの方が良くないか?あと六日あるんだぞ」


「今なら、俺達の方が先にアジトに着ける」


「……!なるほどな。ただ完全に警備が死んでる訳じゃないだろ?」


「うん。でも結構潰したからかなり手薄なはず」


 だからどんだけ暴れたんだよお前。

 ちょっと目離しただけじゃんか。こんなの絶対おかしいよ……


「そこそこの距離だし、俺らが全力で走れば五分くらいは余裕が出来る」


「分かった。行こう」


 その言葉と同時にモータルと俺は走り始めた。


 可能ならば食料庫とかから色々ちょろまかせると嬉しい。










 息を殺して、ただひたすらに速く、速く。


 全ては――


「よし!見るからに立派な建物じゃねぇか。アレだろ?」


「おう」


 完全に盗賊の会話であるが、先に賊行為をしてきたのはあちらなのだから仕方ない。


 モータルに導かれるままに屋敷に侵入する。


「さっさと回収して出て行くぞ……ッ!?」


 出会い頭に、モータルが角から姿を現した見張りらしき男の首根と目の辺りを引っつかみ、そのまま絞め落とした。


 ……絞め落としたんだよな?死んでないよな?


「危なかったな、タカ。流石に姿見られるとまずいっしょ?」


「あ、ああ……そうだな」


 動揺する俺にお構いなくずんずんと屋敷の中を進んで行く。


 しっかし手薄だな。

 よほど重要な案件だったのか、それともコイツが暴れまくったせいなのか……


 屋敷内を探索する事一分。

 物置部屋のような所に、見覚えのある鞄が置かれていた。


「おー、あった」


「中身は?」


「普通に入ってるー。ボロっちいからちゃんと見なかったのかな」


 そりゃあ良かった。


 俺達は大金を持ち歩くに当たって、多少細工のある鞄を持たされた。

 まあ細工と言っても、しっかり調べれば普通にバレてしまうレベルの隠しスペースが付いてるってだけだが。


「何にせよ、結果オーライだな。他は何か無いか?」


「え?」


「ばっか、お前。せっかくこんな機会に恵まれたんだから――」


「ああ、そういえば剣が無い。そういえば値打ち物っぽいからボスの部屋に持ってくって」


「あー、あのギラギラした剣か」


 待てよ?

 値打ち物だったらボスの部屋に持って行く……

 って事は、だ。


 ボスの部屋に行けば良いモン盗れるんじゃねぇか?


「ボスの部屋はどこか分かるか」


「さあ?でも番犬がおっかないだの何だの言ってたし、犬が居る部屋なんじゃない?」


 チッ。猶予は……あと三分くらいか。


「一応、最上階まで上って廊下を覗くだけ覗こう」


「了解」


 俺達は足音を殺しつつ物置部屋から出る。


 そしてそのまま廊下端の階段を上っていった。




「犬……ってか狼だな」


赫狼スカーレットウルフじゃん。雑魚だしやっちゃおうぜ」


「魔石でも手に入ればほっぴーが喜ぶかもしれん。やろう」


 だが如何せん距離がある。


 だが俺が「どうする?」と聞くよりも先にモータルが飛び出した。

 そういや融通のきかないタイプだったな!やろう、って言ったもんね!ごめんね!


 モータルが掴みかかるよりも先に赫狼がモータルに気付き、一瞬身構えた後に……引っくり返って腹を見せた。


「はいストップ!流石にそれを殺すのは俺でも心が痛むなぁ!?」


 俺の言葉で、モータルが斬りかかる直前の姿勢でフリーズした。


「そうか?」


 いやだって完全降伏じゃんか、その姿勢。

 人ならともかく、獣だぜ?


「……えーっと、じゃあモータルはそこで見張り頼むわ。俺、中漁ってくる」


「分かった」


 両開きの重厚な扉を開け、中へと侵入する。


 中には、様々な宝石が置かれた棚、武器、防具の飾られたスペース、高そうな絵画。

 あらゆる金目の物が転がっていた。


「……ひゅー」


 その中には勿論、モータルの剣もあった。


 俺はそれを拾い上げると、窓から外をチラチラと確認しつつ、部屋の中の物色を始めた。



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